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ペンローズさん、ノーベル物理学賞おめでとう



御歳89歳!
もうそんなお歳なのねえ、と驚きました。
同時に、「えっ、まだ取ってなかったのか」とも。
なんか勝手にもう取ってるもんだと思い込んでました。


トップ写真の右は『皇帝の新しい心』(みすず書房)。

二十数年前に、京都古本まつりにて萩書房さんで買いました。
何年だったかは忘れてしまったけど、夏、下鴨納涼古本まつりだったような記憶がおぼろげに。
ちなみに京都の古本まつりや萩書房さんについてはこちらの記事もご参照ください。


第二刷。

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本の情報を載せる為に、みすず書房さんのサイトを探して驚いた。


定価 8,140円……!

発行当時の価格、5,974円です。

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発行日から26年で、こんなにも価格が上がるなんて……!
昔より賃金上がったとか何とか言っても、物価の上昇率がこんなに急で、税金も増えて、そりゃ一般消費者が昔に比べ景気が良くなってる、なんて思う訳がないわなあ、とつくづく実感しました。

自分がいくらで買ったのかは忘れてしまいましたけど、当時の定価でも高いと思ったのに。
とは言え、高くなってもそりゃ仕方がないぜ、と思うボリュームですが。



左は『心は量子で語れるか』(講談社ブルーバックス)。

これは普通に新刊が出た時、本屋で買いました。
第一刷。

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ノーベル物理学賞、ホーキング氏との共同研究で取ってる訳ですが、これが1965年。
上の本は80年代とか90年代のものですが、こちらの方の主張はホーキング氏とは真っ二つ。

『心は量子で語れるか』、ペンローズの主張の後にホーキング含む3人の学者さんが「それどうなのかな」的文章を載せてるんですが、そのホーキング氏の文がもう辛辣に過ぎて笑えてくるレベル。
「イヤもうアンタ何言うてんの?」てあの機械のボイスで聞こえてきそうです。
(念の為言い添えておくと、ホーキング氏の文章には好悪感的問題は一切なく、真に優れた学者さん同士の真摯な斬り合いであり、知性と知性がぶつかりあう眺めが最高に良い)
それをふわっと包み込むように、のほほんと回答するペンローズのぬけぬけとした文も好き。


三作目、『真夜中のすべての光』(講談社タイガ)にて、シーニユ、という名を持つ人工知能の少女を書きました。
こちらから冒頭の72ページまで試し読みできます。


彼女は人工知能としてバーチャル世界で自分の仕事を勤める内に、少しずつ「こころ」とは何か、ということを学んでいきます。
その様子を見ながら、主人公は「ヒトと人工知能の『こころ』は明らかに違う、だがそれも間違いなくある種の『こころ』と呼べるものではなかろうか」と考えます。


もともと、映画でも小説でもゲームでも、「感情をもった人工知能」という存在が大変不思議でした。
大抵は「最初っから感情がある」か、「物語の進行に伴い感情を獲得する」のですが、特に前者がとっても不思議で。
人工知能の「感情」って一体何なんだ、と。


「AIとヒトの『知能』の間には決して越えられない深い深い谷がある」と思っていて。
自分のそういう見解は、ペンローズの影響が大きいです。
たとえAIがどれだけ大量の犬の写真やイラストを学習して、出されたものを瞬時に「これは犬です」と判断できるようになっても、ヒトが脳内で「犬だな」と決めるプロセスとはやはり異なるのではないかと。
つまりは俗に言う「中国語の部屋」です。

「中国語の部屋」とは

中国語が判らない人を部屋に閉じ込め、扉の隙間から中国語の書かれた紙を渡す。
その人にはマニュアル本が渡されていて、中には「紙にこの記号が書かれていたらこの記号を書き加えて返せ」という指示が記されている。
この室内の状況を知らない、中国語が判る人に、「紙に中国語で質問を書いて部屋の中に入れてください」と頼む。
例えば「今日は何年何月ですか」と書いて入れた紙に、「今日は○年○月です」と書かれたものが返ってくる。
すると質問者は、「部屋の中には中国語が判る人がいる」=「中の人は自分の質問を理解して回答してくれたのだ」と思うことになる。


けれども実際のところ、中の人は謎の記号に、自分には意味の判らないプロトコルに従った謎の記号を付けて返しただけで、内容なんてちっとも理解しちゃいないのです。
この、「その意味が判る」か否かが、ヒトと人工知能の違いだと。

けれども同時に、「質問者は『中の人と自分は中国語で通じ合った』と思っているのだから、それが質問者にとっての真実、つまりは世界の真実で良いのではないか」という考え方もあるのですね。
果たしてそれはどうなんだろう、と個人的には思うのですけども。


だからこそ、「物語」において「人工知能」が「感情」を獲得する過程が描かれるところが自分にはとってもエモーショナル。「その深い谷を越えていく」過程がたまらなく面白い。
また、「通じ合った」という感覚が「中国語の部屋」のように一方的なものでなければそこにはもしかしたら、と思う、それもすごく面白い。

なので、「最初っから感情がある」だと、「なら別に人工知能でなくてもいいんじゃ」と思ってしまったりするのですよね。
自分にとっては「越えていく」「通じ合う」ところがすごく醍醐味なので、そこを厚く読みたいのでした。
タニス・リーの『銀色の恋人』(ハヤカワ文庫SF)なんか最高です。

表紙は昔の川原由美子さんの方が自分は好き。
シルバーに人間離れした雰囲気があって(そもそもロボットだから人間離れしてて当たり前なんですが(笑))、ジェーンにはヒトのやわらかな肉体感があって。



それにしても『皇帝』も『心は量子で』も、読んだのが昔過ぎてどっちも殆ど覚えていないな。
読み直しをしないと、イヤでもその前に未読の『心の影』を読むべきか……。

  

   


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