布引観音の滝が凍った日 / 長野県小諸市
わたしの長野生活は4年前の冬の初めから始まりました。
最高気温が氷点下ってどんな感じなの?というレベルで寒冷地を知らなかったわたしは、その年の冬はこたつから出られずに、夫にhermit crab(ヤドカリ)と呼ばれていました。
−5℃、−6℃、−7℃と日に日に下がっていく週間天気予報の最低気温を見ては、その寒さを想像することすらできず、恐れおののいてうろたえるばかりでいたら、地元の人にあっさり今年はあったかいね!と言われて心が折れかたあの冬……(遠い目)。
でも今となればあの年が暖冬だったとわかります。
だって今年は寒いよ。寒かったね。よく耐えました。まだ終わってませんが。
さすがのわたしも最低気温が−10℃くらいじゃ驚かなくなりました。
1月のある日。
「布引観音の滝が凍ってるよ」と夫が教えてくれました。
布引観音、正式名称は釈尊寺。
長野県小諸市の千曲川沿いの崖の中にある、京都の清水寺のような懸崖造り(けんがいづくり)の観音堂です。
そこの小さな滝が寒さで凍っているとのこと。
凍っている滝、つまり氷瀑は写真では見たことがありますが、まさか自分が住んでいるエリアで見られるなんて。
写真で見たものは全部自分の目で見てみたいという好奇心と、滝が凍るような場所に住んでるんかという言われのない落ち込みとのせめぎ合い。
……をした結果、行ってみると、滝よりも何よりも地面がつるつるに凍っているという大問題が。滑って転んで後頭部を打ち付けないように慎重に歩きます。まるで国会の牛歩戦術。ひとりで。
夫はもう小さくなるくらい先に行っています。待ってよー。
細心の注意を払いながら階段を登り、目的の滝の前まで来てみると……
ガッチガチに凍っていました。
ドドドドという水の音も、飛沫や水の勢いも全部まるっと閉じ込めてしまったかのような光景。そこだけ時が止まったような不思議な感覚になります。
水の跳ね返りや、上から落ちた水のせいでぶくぶく膨らんだ水面がそのままの形で凍っています。
止まっているのに動きを感じる。これぞ自然の造形美。
氷瀑と言えるほどダイナミックな大きさの滝ではないけれど、このコンパクトさもローカルの名所っぽくていいです。周りに人がいないのもいいし、静かだし。
もう少し登るとまた別の小さな滝が現れます。
水の勢いが弱いのと、高低差があまりないからでしょうか。透明な氷です。
かたくてつるつるしているのにぷるぷるしているように見えるややこしい氷。
なんでこんな丸い形になるんだろう?
長野で暮らし始めて4回目の冬ですが、まだまだはじめて見るものがたくさんあります。
日々姿形を変えながらそこにあり続けるものを面白がれる人でありたいです。
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