肝心な時にいつも覚えていない
一生忘れたく無いような、夢みたいな出来事が起こるときは、いつも記憶が曖昧。
小学校のプールに忍び込んで一緒に泳いだのに、やっと手を繋いでくれたのに、せっかくおんなじ部屋で朝まで飲めたのに、そんなことは今となっては骨の髄に染み付いた血の塊みたいだった。
理由は明白。
私が酔っ払っていたから。
シラフの時にはそんな展開はありえないのだから、酔っ払っていて当然だとも言える。
でもなんだか勿体無いなあと思う。
もっと五感まで集中して体に刻み込めばよかったのにと思う。
それ以外にも、たくさん抜け落ちている。
飲みの席で聞く相手の最新情報は、聞くだけ聞いて、翌朝には何にも残っていなかった。
新しい職場がどこだとか、引っ越した先がどこだとか、子供の名前とか、彼氏とか旦那の名前とか、驚くくらい綺麗に消え去っていた。
再度聞くのが気まずくなって、しばらく知ったかぶりをしたりもした。
興味が無いのかなあと思う。
悪気も無いけど。
お酒のせいではないから、やっぱり興味が無いんだと思う。
私の世界に不必要な情報だったってことだ。
でもいつも酔っ払って思い出すのはそんな曖昧な記憶ばかりで、決してゴールにたどり着けるわけも無いのに、うんうんと思い返したりする。
知りたくなかった、と言ってしまえば話が終わってしまうけど、それに似た諦めを携えながら、ある程度、努力してみる。
好きだったら絶対忘れないのに、と思いながら。
そんな血の塊を、私は金輪際愛でる。
誰にも奪われないように目を光らせながら。
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