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見たことがないシリアとその家族を思いながら。シリア内戦を描く「人間の土地へ」

異世界ファンタジーでも読んでいるかのようでした。

宗教、内戦、難民、文化、秘密警察、賄賂、脱走兵・・・

何もかもが違う価値観とルール、世界に触れ続ける中、国際結婚をして日本にやってきたラドワンとの日々で、突然八王子、電気代、履歴書などの見知った単語が出てきて、これは現実に起きていることなのだと実感します。

シリア内戦。どうしようもない大きな力にねじ伏せられていく人々の暮らし。それでも、脱走兵になっても、政府軍であっても、難民キャンプに入っても・・・何とか生きていくシリアの人たちの強さを感じました。

それが大まかな感想なんですが。

知らない国の文化を読むのが大好きな人間としては、シリアのある家族の生活を通して、イスラム文化を体感できるのが面白かったです。

学校に自分から行かないといって遊ぶ子どもたち。

コーヒーを淹れるまでに三時間かかるお茶会。

財産であるラクダ。そして沙漠。

生活圏が家の半径50mの女性たち。

彼らからは、日本は多神教で石や木を拝むのは理解できないと言われたり、女性たちが外で働いているのは可哀そうだと思われたりしています。

お互いに理解できない文化。

理解できないものは、理解できないままでいいと思うのです。でも、知るのは大事。その点でも、この本は良かった。

でも、理解できないシリアの生活と文化は、理解できない「内戦」によって、無くなってしまいました。

日本にいる以上、シリア内戦はとても遠くて。恥ずかしながら、いつ起こったのかだったり、今も続いているということだったりを知りませんでした。

イスラム国とか、自爆テロとか、たまにニュースになって単語としては入っていたけれど、家族を通してその内側を体感することができたような気がします。

でもあまりにも今の生活とは遠すぎることだから、異世界ファンタジー感があるんですけれど、ノンフィクションなんですよね…

賄賂は一般的に悪いことだと言われていますが、賄賂がなければラドワンは軍の上官から自由時間をもらって逃げることはできなかった。

イスラム国は単なる過激派の悪い集団というわけでもなかった。

内戦、イスラムのイメージが日本から見た一面から多角的なものになっていきました。

内側を知って何がどうなるわけではないけれど。

知ったことで新しい見方が生まれてくる。

内戦によって離れ離れになっても、立場が変わっても、故郷と文化が同じで、そこに生きた人々を信じるというラドワン。シリアの家族と宗教を大事にする生活。

日本にいるとなかなか気づかないけれど、シリアの人々を通して自分が確かに「日本人」であり、日本の文化が息づいていることを、読み終わって思いました。








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おなつ
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