詩 「蝶が咲く」
蝶が咲く
誰もいない荒野の中心で
黒い雲の天井と
涸れた川底に挟まれて
ただ一点
その蝶はダイヤよりも煌いていた
そのはばたきは
この雲のたった一欠片さえ
晴らすことは出来ないけれど
その美しい蒼を持ってしても
二度とこの地に水は湧き出ないけど
その蝶はもう
同胞を見つける事は出来ないけれど
誰もいない果ての地に
その蝶は可憐に健気に飛ぶのだ
無意味であると知っていて
無価値であると知っていて
生まれた場所を間違えたのは
最低な神の悪戯だけど
蝶はその地に咲いている
蝶は生きた証を残す
そのか弱い生涯で
大きな魂を運んでいる
この地に蝶は咲いている
希望の鱗粉を撒きながら
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