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竜田揚げと言ってはいけない 〜少しだけ、苦い話〜

もはや残業してヘロヘロだ。
真っ直ぐ歩こうと思いながら
フラダンスを踊っている。

あぁ。肉が食いたい。米が食いたい。

帰宅すると、揚げ物の音がする。
肉であれ!肉であれ!

(ちらっ)

肉キター!やっほい!

父は変化を嫌う男だったため
我が家の定番料理は多くない。

揚げ物+肉=?

答えは2択。
トンカツか、唐揚げだ。

そして、トンカツは先週食べたから、
もはや1択。はい正解。
本日のおかずは鳥の唐揚げ。
僕の大好物だ!

鶏もも肉に、醤油、みりん、生姜などにつけ込み臭味を取り、片栗粉をまぶして揚げたもの。
小麦粉のない唐揚げ。


…そう。竜田揚げだ。 ( ̄▽ ̄;)


僕がこの事実に気づいたのは10歳の頃。
給食に出てきた竜田揚げは、
僕にとって紛れもなく唐揚げだった。

母さん、これは事件です。
帰宅し、真実を訴えなければ!

だがしかし。
家庭裁判所は開廷しなかった。
門前払い。弁論不要。
罰せられたのは僕だった。

罪名は、
『父が唐揚げと呼ぶ物にケチをつけた罪』

父の機嫌を損ねたら、それは罪だった。
望まれない真実の密輸は御法度であり
罪人はゲンコツを頂く決まりだった。

「大黒柱が黒と言ったら、
 てめぇは白でも黒と言え」

昭和の家庭…というより明治あたりか?
大日本帝国なる君主国家の様相だ。

そんな治外法権の中にあっては、
こんなもの特別なエピソードではない。
何百何千とあった理不尽のひとつ。
いちいち悲しむことじゃない。


 と、自分に言い聞かせる。


まるで刺青だ

大好物の鳥の唐揚げ

毎回、絶対、同じ味なんだから

苦いわけ ないのにな



はっ と我に返り
イライラして このヤロー!と
白飯をかっこむ。
…オカズとしては能力高し! ꉂ🤣𐤔

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