読書記録『あなたがひとりで生きていく時に知っておいてほしいこと ひとり暮らしの智恵と技術』
こんにちは、神崎翼です。
本日の読書はこちら。
『あなたがひとりで生きていく時に知っておいてほしいこと ひとり暮らしの智恵と技術』
(2019.1/辰巳渚著/文藝春秋)
事前情報なし、表紙だけで手に取り、よくあるハウツー本、アイデア帳の類だと思って読み始めました。実際、そこまで印象と相違ありません。タイトル通り、ひとりで生きていくときに必要な智恵を、ひとりになってから3週間、3か月、6か月、1年と期間ごとに区切って記載してくれています。
ただ、この本は、よくあるハウツー本として紹介にするにはいささか難があります。それがわかるのが、最後の『最終章 1年経ったら』の終わり。これまでの生活で培ってきたものがどういったものだったのか、それはこれから生きるためにどんな力になってくれるのかを語った後、
あなたは、この1年のひとり暮らしで成長したはずです。「自立する力」、「家事の力」を得たあなたは、たとえ、この先どんなことがあっても、大丈夫だと私は信じています。
最後に「ひとり暮らしを始めたあなた」が、これからもずっと幸せに生きていけることを、私はいつまでも願っています。 2018年春 辰巳渚
そう締めくくった最終章の終わりの、次のページ。
辰巳渚さんは本書の原稿をほぼ完成させた後、2018年6月26日、不慮の事故のため、逝去されました。
思わず、固まりました。よくある読み物だと思って読んでいたものが実は遺作だったと、ここでようやく私は知ったのです。
「これからもずっと幸せに生きていけることを、私はいつまでも願っています」すでに死んでいる人からのこの言葉は、重みが違います。あとがきは、著者の息子さんが書いたもの。ひとりで生きていくこと、人間いつどうなるかわからないこと、人間の自立の意義を、机上の空論ではなく実際の経験の上の言葉として、私たちに伝えてくれています。
最後の衝撃でちょっと内容飛んでしまったので軽く内容を見返しましたが、実際ひとり暮らしをするときに一冊備えておけば何を気を付けていいかわかって便利な本だと思います。衣食住やお金のこと、最初に揃えるべきものやその量などなど。具体的なものがわかりやすいイラスト付きで紹介されています。個人的に特に勉強になったのが「肌付きの金」という言葉。
「肌付きのお金」……昔の人が旅に出る時、何かあった時のため衣服に縫い付けておいたお金のこと。
そういえば昔、学生手帳に「何かあったらとき用に」と500円玉を仕込んでいたような思い出があります。うっかりお弁当を忘れてしまったり、電車を乗り違えて電車賃が足らなくなったときなど、そっとそのお金を出して、ピンチを脱出したものです。
ひとりで暮らす、ということはつまり、助けてくれた親兄弟がそばにいないということ。そしてピンチの何割かは、お金があればひとまず脱出できます。今は手持ちのお金をお財布に一点集中してしまっていることに気付いたので、そっとどこかに「肌付きのお金」を仕込んでおこうと思います。防災用品をまとめたところに入れておくのもいいかもしれませんね。実際役立つかはわかりませんが、お金があるというだけで、ひとまず安心することもあるでしょう。
思いがけずドラマティックな展開を目の当たりにして放心しましたが、実用性ばっちりの良本でした。ひとり暮らしを始める人へのプレゼントとしてもいいかもしれませんね。素敵な本を、ありがとうございました。
それでは今日はこの辺で。
次の読書記録で会いましょう。
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