石巻へ記憶に眠っていたヘドロの悪臭を消すために行ってきた。
数日前、YouTubeを見ていた。
画面の横に表示される関連動画のところに、東日本震災の津波の動画が表示されていた。
何気なく見てしまった。
津波に飲み込まれていく街。
見た瞬間、ヘドロの臭いがわたしの記憶の中から湧き上がってきた。
記憶から湧き上がってきたヘドロの臭い。
この記憶を書き換えるために、宮城県の石巻へ行ってきました。
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宮城県石巻市。
前回この場所に来たのは、2011年のこと。
そう、あの東日本大震災が起きた年である。
わたしはボランティアに参加するために、この石巻に来たのである。
当時のボランティアでのいちばんの思い出。
それは、ヘドロの臭いだ。
津波に飲み込まれたあとの街は、悪臭を放つヘドロにまみれていた。
そのヘドロを、シャベルで延々と袋に詰めるボランティアをした。
臭くて重いヘドロ。
テレビニュースや動画の映像では、あの悪臭は伝わらない。
現場に入ってみて、いちばん驚いたのが悪臭だった。
マスクなんてしていても意味がない。
あの時の強烈な悪臭。
それが、「石巻」という地名とともに今も鼻と記憶にこびりついている。
今回の旅は、2011年から記憶の底にこびりついていた悪臭を取り除く旅。
「石巻=悪臭」という記憶をアップデートする。
石巻を再訪し、今の石巻の空気を吸う。
そうすることでしか、記憶をアップデートできない。
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2019年2月26日。
石巻駅。
石巻のシンボルともいえる場所。
石ノ森章太郎氏ゆかりの地であるので、彼の作ったキャラクターが駅や街を彩っている。
ボランティア当時のことはほぼ記憶に残っていないが、この駅だけは鮮明におぼえている。
当時もサイボーグ002は、駅の屋根の上にいた。
壊滅的にやられた街の駅と、屋根の上から空へ飛び立とうとするサイボーグ002。
絶望と希望のコントラストが、とても鮮烈に記憶に焼き付いている。
この独創的な丸い建築物は、石ノ森萬画館。
震災のとき、この建物や展示物も大きな被害が出たそうである。
旧北上川沿岸部は、今も工事が続く。
街を飲み込んだ津波は、大人の身長を軽く超える高さだった。
石巻の避難場所であり、いちばん高台にある日和山公園へ。
少し登るだけで息があがってしまう急こう配を登る。
当時津波から逃げるために、雪が降りしきる中この道を駆け上った人はどんな気持ちだったのか。
高台から、町や海が一望できる。
この日の街はおだやかで静かだった。
聞こえてくる音は、作業している重機の音だけである。
震災からもう8年が経つ。
東京に住んでいると、ほとんど思い出すこともない。
でも、石巻といった甚大な被害を負った街は、今もその後遺症を引きずっている。
石ノ森章太郎が生み出したヒーローたちが、街を力づける。
仮面ライダーやサイボーグ009、ロボコン・・・
彼らは、改造人間やサイボーグにされるといった運命や宿命を背負い、孤独と葛藤を抱えながらも前向きに未来を生きていく。
まさに、石巻とシンクロする。
すばらしいな。
石巻市役所の前はV3。
サイボーグ005と001は、何かとても象徴的に見える。
仮面ライダーはやっぱりこのポーズじゃないと。
隠れた名作「佐武と市捕物控」も!
ロボコンからは「満点」いただきました♪
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わたしは今回、偶然YouTubeで津波の動画を見たから石巻へまた行こうと思った。
もし動画を見なかったら、石巻へは行かなかっただろう。
そうやって、記憶はこぼれ落ち、忘れ去られ、奥底へ埋もれていくのだろう。
石巻へ行き、自分の足で歩き、目で見て、ご飯を食べ、今の空気を吸うことができた。
その空気には、もうヘドロの悪臭は混じっていない。
悪臭の記憶は消えることはない。
いや、記憶に残すべき臭いなのだ。
そして、未来へ向け前進している石巻の新しい空気が記憶がそこに追加された。
過去の出来事は変えられないが、その出来事に対してアップデートはできる。
石巻とは、また違ったスタンスで向き合えると思う。
なんか、傷を修復するような旅だった。
記憶を消すために行った旅は、記憶を残す旅になった。
また石巻へ行こう。
今度は、もうすこし時間をかけて。
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しかし、あの東日本震災ってなんだったのだろうか?
本当にあった出来事なのだろうか?
あれはなんだったんだろう。
そんなことをふと感じる。
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