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コーヒーバッグ

「ウチ金玉がコーヒーバッグやねん!」

いつものハツラツとした抑揚のない発声(これが僕が彼女に惚れた部分ではあるのだが)で情報量の多いことを言われた。

まず第一として一緒にお風呂に入ろうというありえない誘いをゼミの飲み会おわりにされて、いやそんな願ったり叶ったりなことないのだが、酒を一滴も飲まないはずの彼女がなぜそんなにも積極的に僕を誘うのか、大胆にも程がある、もしや有名なヤリマンなのではないか僕が知らないだけで、いやでもそれでも僕はいい関係ないそれも含めて受け入れてやると決意して彼女のボロアパート2階にお邪魔して一息つく間もなく手を引っ張られて上も下も脱がされておいおいおいおいなんだこれは夢か幻かと思ったが矢先に彼女はどこも洗わずにいつから張ってあるのかわからないそれはちゃんと温いのか疑わしい湯船にボチャーンと飛び込んだのである。

狭い脱衣所で呆然としたままの僕は湯船がじわじわと茶色くなっていくのを見つめていた。

目まぐるしい展開すぎてちょっと動けなくなっている僕に彼女は冒頭のセリフを言い伝えたのである。

「…金玉?コーヒーバッグ?」

「そう!ウチってコーヒー好きやんかー?やから金玉をコーヒーバッグにしてん!なんと今朝やで!」

「…金玉?」

そうである。

まだ問題は2分の1しか解決…いや解決もしてなくて、コーヒーが好きだから金玉をコーヒーバッグにしたという動機はわかったが、その動機に続く結果に含まれている「金玉」が宙に浮いている状態である。

「…あー、ウチな、金玉はあるねん!いわゆるどっちもあるっていう、ほら、アレやん!なんか名前は忘れたけどそういう人!もともと金玉はあって、つまりもともと金玉はあってー、高校卒業してすぐ付けてー、でな、今朝!なんと今朝やで!コーヒーバッグをじゃなくて、じゃなくて!逆逆!金玉をぉコーヒーバッグにしてん!念願の!コーヒーバッグを金玉にしてどうすんねん!ハハハ!温度も最適温度の93度!コーヒーが美味しくなるなら我慢やねん!」

ちょっと全てを通り過ぎて情報量がオーバーヒートして彼女の全てが全てが愛おしくてたまらんくて大好きすぎてもうなんか気が付いたら裸のまま外を走ってた!

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