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悪の凡庸さ

 今晩、ツナ缶パスタを作った。貧相なご飯だ、なんて思った人がいるならば大声を出して反論したい、うるせぇ、と。そんな貧乏飯をルンルンになりながら作っていた際に事件は起きた。熱したオリーブオイルにツナ缶を入れた瞬間、私のビューティフルなお顔に熱々のツナが猛烈なキスをしたのである。それはもう熱々で熱々で、熱々だったのだ。私は急いでその口紅を落として、鏡を覗き込んだ。デコが真っ赤っかだった。  自分の顔を見ながら、なぜか三島由紀夫の言葉が頭によぎった。「道を歩いてて、ちょっと石につ

    • グレープフルーツ・ジュース

       世界情勢と評論、人間関係と浮世話、人の夢と熱弁。そういったあらゆる人間を惹きつける物質が宙に舞う世の中で、幸いにも、私はそれらのことに全く興味がない。正直、他人の人生の話を聞かされてもどう思えばいいのかわからないし、友達が人の噂話をしてくるのを聞いて、よくそんな他人に興味をもてるもんだ、とずっと感心しながら学校生活を送ってきた。  ただ、文字を読むのが好きという理由だけで、新聞をつらつらと読んでいる。新聞を読んでるなんて意識高い系の学生じゃないか、なんて馬鹿なこと言わないで

      • 打倒思考探偵

         私は今日から、少し書き物をしようと思い立った22歳、大学生である。書き物といっても、日記から書評、自分が気ままに書いた掌小説なんかをあげてみようかなという程度である。これに思い立ったのは、私が数年前からよく言われる、悍しく、無責任な言葉を今日も言われたからである。それは、  「普段何考えてんの?」 である。私はこの手の質問をしてくる「思考探偵」が大嫌いである。まず第一に、私の考えを知ったとて何になるのか。どうせ、変なヤツ。だとか、面白いね。だとか、はたまた、すごいね。なんて

      悪の凡庸さ