見出し画像

証言1:黒澤うに 「Twitterでヒーヒー言ってたら、600km先の正社員枠をもらえた」

これは、「町医者 松嶋大」のアンオフィシャルブログです。第一回目は、書き手・黒澤うにが、「町医者 松嶋大」について語ります。


今年はずっとTwitterでヒーヒー言ってました、私

漫画1

そして、そんな中、私は40代に突入してしまったのです。

出産後すぐに入園希望を出すも、ここは待機児童がワンサカの東京。

シングルマザーで食い扶持を稼がなくちゃいけないのに、職がなければ保育園に入れず、入れなければ職にもつけず、私の就職活動は難航を極めます。


両親の介護は伝える以前の問題で、
ただの「1歳児の母親。保育園には何とか入れます!」と言って応募をしても

「入ってすぐに時短は…」
「子持ちだと…」
「Excel使えないのはちょっと…」
惨敗につぐ惨敗。

ええ、わかってますよ、
Excel使えないのは私が圧倒的に悪い。


つぶしの効かない映像クリエイターだった過去を悔やみ、
iPhoneで撮影が簡単になり、誰でもYouTuberになった世の中を恨みむばかり。

両親の介護を始めてからは、なんちゃって物書きフリーターを気軽にしていたものの、出産期間中に仕事はなくなっています。気持ちばかりは焦るのに、なんの成果も挙げられず、さらには子どもの夜泣きも酷くなっていく…


「ねむい」
「介護つらい」
「また子供が風邪ひいた」
「貯金だけが減っていくぅ」
「腹減った」(←ごはんを作る気になれないだけ)

量産されるネガティブなツイートに、「いいね」はほとんどつきません。

どすぐろい感情を垂れ流すだけとなった、そんな私のアカウントに、ある日、DMが来たのです。


「黒澤さん、
働くとこがなければ、雇ってあげましょうか?」


それが、「町医者 松嶋大 @daimatsushima」。
Twitterの相互フォロワーだったのです。

スクリーンショット 2020-11-26 17.06.19


「こちらは岩手なので、お給料も岩手価格ですが…まぁ、東京の1/20というのは冗談ですけど、でも低め。それでもよければどうぞ。正社員で良いですよ」


と言われた時、思わず

「は?」

と返してしまいました。

「え、いや、正気?」

だって、
おかしくないですか。意味わからないですもん。

そりゃ、私は私だから否定的なことは言いたくないのですが、私ってば、シングルマザーで、さらに両親の介護もやってるんですよ?人のツイート、今まできちんと読んできました?理解してますか?私は戦力として頼りないこと、この上ない人間ですよ?むしろ、爆弾背負い込んでますよ、複数。

子どもが風邪を引けば
アルツハイマーの母親が道に迷ったら(まだ滅多にないけど)
要介護4の父が転倒して骨折でもしたら(今年折ったけど)
世話できるのは私だけだから、どうやっても仕事を休まなくちゃいけない。

しかも、そんなことが起きる可能性が結構ある。そんな人間、私が雇用主だったらいやだ。私が雇用主だったら、私みたいな人間は雇いたくありませんけど…大丈夫ですか?

それを知らない転職サイトの向こう側の人ならいざ知らず(※)、全部とはいわなくても多くのツイートを読んでいる(はずの)人間が…!

しかも単発か、定期的なプロジェクトで雇ってくれるならまだしも「正社員」…!?

ありがたい話ですが、逆に心配になりました。この人は、本当に経営者としてやっているのか。なんなのだ、この人は。


「町医者 松嶋大」との出会い

スクリーンショット 2020-12-04 15.31.21


この「町医者 松嶋大」をTwitterでフォローしたのは、3年くらい前のことでした。

そもそものきっかけは、アルツハイマー型認知症にかかった母と私の闘病をつづった赤裸々なブログ記事をリツイートしてくれた方がいて、その方のお母様がこの「町医者 松嶋大」を主治医としていたことからでした。私の母は医者嫌いなので、「どんなお医者さんにかかっているのかな」とちょっとした好奇心からこのアカウントを追うようになったのですが、まぁ変わってる。「医者」っていうけど、私の知っている周りの医者とはまったく違う!


例えばこんなところ。

患者の高齢者と「どうやって死ぬか」を語り合う
語り合いすぎて、たまに喧嘩になる

既婚者であるらしいのに、深夜まで診療してる

診療所で待ってても患者は来るだろうに、在宅医療に奔走し、
通常は「老化でしょう」で済ますことを調べ尽くして、
薬を少しでも減らした方がいいと観察を怠らない

さらに、

「個人」でサ高住を持っている!
利益をウハウハするためではないようで、入り浸って野菜まで育てている!


「変な医者がいるなぁ」とTLに上ってくる彼のツイートを読むたびに、その思いは強くなっていったのです。

ここ数年、私は両親の診療で東京都内でたくさんのお医者さんに会ってきました。中には違うお医者さんもいるでしょうが、私が出会ったのは、できるだけ1人の患者に時間を割かず、「とりあえずお薬出しておきますね」で済ませてしまうスタイルがほとんどでした。東京で心の汚れた私は、この「町医者 松嶋大」の熱すぎるツイートを眺めては、ちょっとほくそ笑みつつツッコミを入れるようになりました。ちょっかいを出してみたくなったのです。その度に、「町医者 松嶋大」は熱くリプライし、私のネガティブなツイートにも、ポジティブなツッコミを時折入れるようになってくるようになり、我々は陰陽のツッコミ合いをする仲になったのです。

「こんな先生がもしも現実にいたなら、どんなにか良いだろう」と思いつつも、さもしい心の持ち主である私は、「でも、これはただの綺麗事なんじゃないか」と疑っていました。「自分に酔っているだけなんじゃないか、この人は」と。

実際、そういうお医師さんのアカウント、Twitterに結構少なくないと思うんです(私のみる限りの話で、知らんけど※2)。だいたい、綺麗事やポエミーなことを言いつつ、嫌味にならない程度に(人によってはとても嫌味になる頻度で)、良い持ち物やリッチな生活をちらつかせる。で、「いいね」もらってひっそりとほくそ笑んでいる(ようだと、勝手に想像しているだけですけども)。


ケッ…

だから、私も
「ま、現実はお医者さんも商売だし、お金はお金。両親は結局必要だから医者にすがりつかなきゃいけない弱者で、私も弱者だもんね。お医者さんは職業で、ただの人」
と、冷めた目でそういうアカウントは見るようにし、だってそうしないと貧相な自分が悲しくなっちゃうんだから自己防衛みたいなもんですよ、ええ、同じ感覚を持って「町医者 松嶋大」を客観視をしていたのです。


町医者 松嶋大」が、関わってくる!

それから1年ほど経った頃、父の容体に変化がありました。なんとなく、調子が悪そうで、周りから見ても辛そうでした。

一向に良くならず、父の訪問医はいつも通りの短時間の診察をしては、全てを加齢のせいにし、薬をごっそりと処方しました。それでも変化はなく、「お父さんも80近いですからね」と、大量の薬はそのままに「特になにも病気ではないし、加齢ですから、できることはありません」と言われておしまいでした。「加齢なら、なんで薬を増やして出して、しかもそのままなのよ?」という言葉が喉元まで出ましたが、そこまで率直に言えるはずもなく(そっと訴えたけど)、本人も家族も「なにかが、おかしい」と思っても訪問医は聞く耳を持たず、ケアマネは冷たいままで私は窮してしまいました。

不安と苛立ちから私がいつものように悲観的なツイートをした時に、「町医者 松嶋大」から初めてのDMが届いたのです。


「黒澤さん、東京のどちらにお住まいですか?」

その時も私は「は?」と思ったのでした。

「僕の信頼する医師が関東に数人います。もしかしたら、近くにいるかもしれないので聞いてみました。」

と言う「町医者 松嶋大」に、「は?東京は広いのだよ」と私は思い、実際に松嶋さんの信頼するお医者さんは1人を除いて、東京都の外にいらしたのでした。そして東京にいるその1人も、私たちの住む町からだいぶ遠くで開業していらっしゃるようでした。ね?東京は広いのだよ。

それでも「町医者 松嶋大」はこう言ったのです。

「黒澤さんのお父さんとオンラインで短時間でいいので、僕が通話してみましょうか。もちろん診察はできないので、ただの会話です。自然な老化現象かそうでないかだけ、オンラインですので完全とはいきませんが見てみて、僕の感覚で『そうではないかもしれない』と思ったら、セカンドオピニオンを聞いてみるのも手かもしれません。いかがでしょう。」

ハァ…じゃあ、お願いします。


こうして、Twitter友達「町医者 松嶋大」との初めての対面は、ZOOMで、親同伴のもと行われました。診療が終わった午後9時ごろ、家のリビングのテーブルにiPadを置き、父を前に座らせました。

「こんにちは、黒澤さんの友人の松嶋です。」

そう笑顔で言い切ると、「岩手で医者をしてるんですが、黒澤さんがあまりに心配してるから、どんなものかお話だけ聞いてみようと思って」と父に話しかけ、人生初のオンラインミーティングで緊張する80歳近い老人に対し、明るくカジュアルに対応しつつも、敬意を持って応対してくれたのでした。


でも、なんで?

「自分の得にもならないのに、どうして?」
私はこの問いを、この時にも聞きそびれ
正社員のオファーをもらった時も聞きそびれ
そして今もまだ聞けていないままです。

「え、いや、正気?」
とは、聞いてしまったんですけどね。つい呟いてしまったなので…

「ええ、正気です。よくスタッフに心配されますけど。」

「子どもが風邪をひいたら保育園に預けられないし、仕事を休まなくてはならなくなってしまいますが…」
「子どもはそういうもんですよ。」

「親に何かあったら…」
「ケアマネさんや、シッターさんを頼りつつ、
でも仕方のない時は仕方ない。黒澤さんがいないと困るでしょう?」

「岩手の仕事でも東京からできるんですか?」
「このご時世だし大丈夫。」

「そんな私に社会保障まで?」
「要らないんですか?」
「…いえ、欲しいです……よろしくお願いします。」


ということで、
ただのTwitter友達を
雇用主にすることにしました。

でも、変な奴だなぁ…という気持ちは、そのままです。
気持ちには嘘をつけないよねッ、うん。



父は、というと結局、
それまでの訪問医から、新しい訪問医に替えることになりました。その後新しい訪問医の元、父はそれなりに元気になり(要介護4ですから、それで十分)、今では医者不審だった母もその先生にかかるようになりました。

その先生は、遠くて諦めかけていた松嶋さんの東京の知り合いのお医者さんです。ダメ元で電話をしてみると、「だいぶ遠いけど、いいですよー」と松嶋さんのような軽い感じで請け負ってくれ、毎月1時間近くかけて渋滞に揉まれながら来てくれるようになりました。

その先生もそうですが、松嶋さんの周りはなんか不思議な人が多いみたいです。


岩手から600km。10月末に「同僚に顔を見せに来てください」ということで一回行ったきりで、あとは東京からTwitterのDMと、Facebookのメッセンジャーを使って交信をとりつつ仕事をしています。少しずつですが知れば知るほど、この「変な医者」は、自分に酔ってるんじゃなくて、ただ本気なんじゃ、と思うようになりました。

綺麗事じゃなく、本気で生と死を患者と共に相談して目指していこうとして、実際にそうしているんじゃ(10月に行った時に立ち会ったのは1回きりだけど)。困った人に純粋に見捨てられないで、手を差し伸べて何かを本気で変えようとしているんじゃ、と。

実際に、ここで私は仕事をもらって、生活の目処が立ち始めているわけですしね(都心住まいで岩手価格だから、ちょっとだけつらみ有りですけど)。

東京で、介護生活で、さらにはシングルマザー生活で辛酸を舐め、すっかり荒れてしまった私ですが、町医者 松嶋大の場合、ちょっとなにか違うんじゃないか、と。


そんな気持ちになってきたわけです。
よく知らんけどw

でも、知らんけど気になるし、


8月から仕事をし、2ヶ月半の後に、3泊4日で岩手に顔を出しに行って、実際に会うと、まぁ、なんかエネルギッシュで、さらに不思議な人な印象を受けました。よくあるワンマン社長の片鱗はありつつも、違う?感じ?

仕事内容は「あれこれ仕事をお願いすると思います。基本は適当でOKですが、せっかく雇ったので何かしら書いてくれると嬉しいなぁ。黒澤さん、ブログ書いてたし、書くのは嫌いじゃないんでしょ?お題はなんでもいいですよ。僕ら、いろいろやってますから、診療所もカフェも高齢者向け賃貸住宅とか、なんでもいいですよ、適当に書いてくださいよ」だそうで、今まで漠然とデザインと事務(経理さんは別にいるのでExcelは使わない事務)をやってきました。

「何でもいい」っていうのが一番面倒なんじゃい、と思いつつ、何も思いつかないのでそのままにしてきましたが、何も書かないまま今年を終わらせるのもアレなので、どうせなら、「町医者 松嶋大」について書いてやろうって思い至りました。「何でもいい」はずですし、YouTubeやTwitterを持っているのだから問題はないはず。仕事を覚えるにあたって、どんな活動をしているのかを知るのもいいと思うし。今まで結構1人で仕事を完結してきたので、これを理由に、周りの人にもどんなことをしているのか教えてもらおうと思います。たまに連載する感じで証言者を募ろうかな、って考えています。

私はあくまで客観的に、
冷めた目で見つめるよう努めますけどね。
それが生まれも育ちも東京砂漠の私の役目だと思ってます。

暇な時に、不定期にアップしますね。
Twitterで「町医者 松嶋大」をフォローしているあなたも、ぜひ購読してね!

画像4


ということで、総括いたしましょう。


町医者 松嶋大の場合。

まだまだ未知数ですが、

画像5



※ 第2面接でこちらからきちんと説明して、納得してもらって就職するのが今までのスタイルです。その上で雇ってくれていたところも多々ありますが、産後は、そもそもその段階にもたどり着けませんでした。産後、難しいですね。

※2 そういったアカウトはフォローしていないので、Twitter友達でお医者さんの方、あなたはそういった方じゃないです。酔ってないです。好きです。


以上、第一証言者、黒澤うにでした。


<書いた人>
黒澤うに
東京に住む40代シングルマザー 。絵本を集めることと、おいしいものが好き。老後はキーウェストかセドナに住むのが夢。

いいなと思ったら応援しよう!