見出し画像

400字で分かる落語「江島屋」

「え」の11:江島屋(えじまや)
【粗筋】 道に迷った旅人が一人暮らしの老婆の小屋に泊めてもらうが、夜中に布を火にくべて何やら祈っている。話を聞くと、娘が庄屋に見初められて嫁入りの支度金ももらった。江戸の呉服屋に花嫁衣裳を頼んだが、12月3日婚礼の当日が雨になり、衣装が糊付けしただけの安物だったので、濡れて剥がれて腰から下が落ちてしまう。庄屋は恥をかかされ、婚礼を取りやめ、母と娘は村を追い出され、娘は井戸に飛び込んで死ぬ。老婆はその衣装を少しずつ燃やして呉服屋を呪っているのだ。その店は「江島屋」というので、旅人は驚く。その江島屋の番頭だったのだ。相手の目をつぶしてやると、灰の上に「め」の字を書いて、火箸で突く老婆の形相にぞっとする。
 番頭が江戸に戻ると、江島屋の女房が急病で死に、葬儀の準備中に小僧が事故死というので大騒ぎ。番頭は老婆の姿を胸に秘めておくことにした。その年の12月3日、蔵で腰までしかない花嫁衣装を着た娘がずぶ触れになっているのを見て逃げ出すが、主人に問い詰められて、とうとう老婆の話をする。火箸で目を搗く真似をすると、「痛い!」……主人の目に激しい痛みが走った。
 それから娘だけでなく老婆の姿も目撃され、使用人は一人去り二人去り……とうとう店をたたむことになる。
(もう一つの結末)老婆の幽霊に驚いた江島屋が池に落ち、回りが助けようとするが、着物が裾が濡れて剥がれたため救えなかった
【成立】 三遊亭円朝が明治2(1869)年の「鏡ヶ池操松影(かがみあがいけみさおのまつかげ)」の一部を独立させたもの。古今亭志ん生(5)は婚礼と婆さんの姿の2席に分けて演じ、前半は大笑いさせ、後半はぞっとさせた。古今亭今輔は鳴物入りで演じたというが、私が聴いたのは素噺。桂歌丸が継いだというが聞いていない。

いいなと思ったら応援しよう!