
【青森県八戸市】〜八食料理道場体験記〜八食センターでポルトガル料理作り体験
青森県八戸市にある八食センター。
八食センターでは月に1回のペースで八食料理道場と題して、八戸市のプロの料理人を講師として招いた料理教室が行われている。
前々から気になっていたこの料理教室なのだが、先日ついに参加できた。
自分が参加した際のテーマは青森県産食材でポルトガル風おもてなしパーティーメニュー。講師は八戸市中心街に店を構えるポルトガル料理店であるRESTAURANTE & BAR SAÚDEのオーナーシェフの上野 貴志氏だ。

もちろん八食センターでも販売されているほか
青森県のアンテナショップでもその姿を見かける
手造りサバパテと手作りイワシパテ。
これを製造しているのも実はこのお店だ。
パンにはもちろん米にも合う逸品である
ポルトガル料理は歴史的にはアラブ人やムーア人といったイスラーム教徒の勢力下にあった時代も長く、この影響でスパイスを巧みに使った料理が多いと言われる。しかし何より特筆すべきは海鮮料理で有名なことだろう。当ブログでは以前助宗たらの丸干しの記事にて触れた、パスティス・デ・バカリャウなどはその代表例だろう。
また、アラブ人経由でアジアからかなり早い段階で米が持ち込まれたらしく、現代でも米を主食として食べる機会が多い。つまり米に合う料理が多いことも特筆すべきだろう。
戦国時代の日本の武将たちが南蛮料理としてポルトガル料理を受け入れたのは、物珍しさに加えてこの辺りの味覚が共通していたからなのかもしれない。
RESTAURANTE & BAR SAÚDEはそんなポルトガル料理の味に惚れ込み、首都リスボンで修行した経歴を持つ料理人夫妻が経営しているレストランだ。ポルトガル料理の技法を用いて、八戸市の新鮮な魚介を活かした料理の数々は16年に渡り八戸の人々に愛されている。
そして八戸ブイヤベースフェスタの常連店でもあり、今年2025年も2月1日からは3月末まで行われる八戸ブイヤベースフェス2025にも参加が決定している店舗だ。
今回の料理道場は平日の開催ということもあってか、参加者は全般的に年配の方が多い印象であった。また、参加者の大半が女性だが男性の姿も見える。
火や刃物を使う以上は流石に小さい子供の参加は難しいだろうが、性別や年齢問わず参加できそうな雰囲気である。

周辺の駐車スペースが空いている率が高く
会場にも行きやすい鮮魚入り口 (七輪村横)から入る

付近にはのぼりが立っているので分かりやすい

中央に今回使う食材や調味料が並んでいる

年季は入っているが綺麗に掃除されている
今回作るのは豚肉の白ワイン炒め煮 (※1)、ジャガイモと青菜のソパ (※2)、そして魚のソテーと野菜のエスカベッシュだ。
それぞれ家庭でもすぐに作れるようにアレンジが加えられており、例えば南蛮漬けの元になった料理であるエスカベッシュは今回は短時間かつ手軽にできるよう、ソテーしたタラに酸味の効いた野菜ソースをかけたアレンジレシピを紹介していただいた
※1 レシピ内では豚肉の白ワイン照り焼きとあったが説明中に訂正されていた
※2 ソパはスープの意味。ポルトガル料理は基本的に肉や魚がメインだが、共に野菜が入ったたっぷりのスープも供されこれで野菜を摂取することが多いのだという
料理は前半後半に分けられ、講師の先生がまず調理して手順を見せて一区切りついたら生徒が同じ手順で調理。生徒が追いついたら後半の調理を先生が最後まで行い、生徒がそれを参考に調理するという形で進む。
野菜の洗う時のポイントや隠し包丁を入れるときの考え方、家庭で調理する際と店で調理する際の差異などの細かいポイントに加えて必要に応じて質問にも答えてくれるなど、レシピ本やレシピ動画では聞けないような小さなポイントまで分かりやすく説明してもらえる。
実際の調理の際にも味の調整については講師の先生が作ったものを試食して参考にするほか、各テーブルに順番に先生が回ってきて丁寧に教えてくれる。
前半はより時間のかかる野菜のローストやエスカベッシュに使う野菜ソース、そしてソパから取り掛かる。

野菜のローストの
お店では野菜の種類ごとに火入れをするとのことだが
今回は家庭での調理を前提に
まとめてオーブンで調理する方法を説明していただいた。
野菜ごとの火の通りやすさの考え方のほか
火の通りにくい皮に切れ込みを入れることで
見栄えと手軽さを見事に両立するコツなども
わかりやすく実演してもらえる。
因みに早く作ることだけを考えると
電子レンジならばオーブンで焼くより早いが
オーブンと比べると火の通りのムラが出来やすいので
オススメしないとのことである。
他にも野菜の火の通りを確認する先に金串を使うと
頑丈過ぎて硬さが分かりにくいので竹串を使うなど
経験に則った細かなポイントをさまざま聞ける

今回は家庭にある調理用具でも作れるよう
細かく刻んだ野菜を煮込んで作るタイプだ

野菜を入れる順番、どの程度火を入れるかなど
一見簡単なレシピでも細かな部分で個性が出る。
特にポルトガル料理に欠かせない上に
青森県産品としても外せないニンニクは
火を入れるタイミングにより大きく表情が変わる。
ちなみにこのソースは魚はもちろん肉にもよく合う。
因みにポルトガル料理に欠かせないオリーブオイルだが
北国である八戸では寒さで凝固してしまうこともあり
お店ではあえて米油を使うことも多いという
後半では豚肉の白ワイン炒め煮やタラのソテーを作っていく。
豚肉の白ワイン炒め煮は本来前日のうちに白ワインとスパイスでマリネしておき、部位もお店ではポルトガルの家庭料理らしさを強調するために豚もも肉を使うらしい。ただし今回は料理教室の時間内に作るという制約上、素人でも比較的火入れがしやすい豚肩ロースを使用している。
ちなみにこの肉料理は有名なインド料理の1種であるポークヴィンダルーのルーツなのだという。
ポークヴィンダルーが生まれたゴアはかつてポルトガルの植民地だった地。ワインの輸送が満足にできない時代に白ワインの代用として白ワインヴィネガーを使い、さらに風味を増すためにスパイスを多く加えた結果生まれたのがポークヴィンダルーらしい。

今回は入手しやすいほうれん草を使用。
また、切り方もポルトガルでは千切りとのことだが
食べやすくするために四角く切る方法を紹介。
リスボンで修行していた経験のあるシェフというだけあり
ポルトガルの話も聞けて非常に興味深かった

タラのソテーはレシピ上ではそのまま焼くとあるが
家庭で作る場合は皮の部分にのみ小麦粉を叩くと
皮がくっつきにくいとのことで今回もそうやって作った。
因みにお店ではシートを敷いて焼いているという。
また、今回は一般的な切り身と同じようにカットされているが
ソテーにする場合は半身を斜めではなく垂直に切るほうが
焼きやすいとのことので半身で購入する場合は
切り方も合わせられるメリットがあるようだ

豚肩ロースを使っていることもあり
香ばしさを出すためにもしっかりと強火で焼いていく

高低差を出すなど盛り付けのポイントも教えてくれる

と言いたいところだが
このブログを前々からご覧になっている方は
私の盛り付けセンスの無さをご察しだと思う。
この盛り付けも同じ班の他の参加者にしてもらったものである
そして作った後はもちろん実食である。
豚肉の白ワイン炒め煮はニンニクとパプリカの効いたポルトガルらしい風味ながら、たっぷり使った白ワインの爽やかな酸味のおかげで重くなり過ぎずさっぱりと食べられる。付け合わせの野菜のロースト共々、少し手の込んだ料理を食べたい時の料理として新たな選択肢が加わった。
タラのエスカベッシュも本来のものから大きく簡略化したレシピではあるのだが、細かなポイントを抑えたおかげで店の味と言っても過言ではない。野菜ソースの食感の素晴らしさには、神は細部に宿ると言うが、家庭の味も店の味の違いはこういった細かな仕事の積み重ねによるものなのかもしれないと思った。そしてソースが乗った本体とも言えるタラのソテーには自分の中のマダラの認識が覆された。タラといえば水分が多いことから自分の中では汁物や鍋が一番手で、一旦干すことが前提であれば焼き物もあり、たまには揚げるのも悪くないと言う印象があった。しかし今回、コラーゲンを溶かすようにゆっくりと火入れしたタラの味を知りこの順序が崩れてしまった。「タラに塩を振って焼いたもの」でも焼き方1つで美味しくなるものなのかと感動さえ覚えた。
だが、中でも同班の人々が声を合わせて驚いたのがソパだ。実を言うとこのソパ、スープでありながら出汁としてとったのは調理中に出たじゃがいもの皮や玉ねぎの根を湯を温めるときに入れた程度であり、味付けも塩だけである。そのため調理中に参加者からは不安の声が上がっていたのだが、食べてみると野菜、特に炒めた玉ねぎやニンニクから出た旨味だけで十分過ぎるほどにスープとして完成しているのだ。仕上げにサラミを浮かべているのだが、サラミなしでも十分過ぎるほど美味しい。因みに今回は国産のサラミを使ったが、先生曰く本当はヨーロッパのチョリソーなどを使うとさらに美味しくなるという。これ以上美味しくなるポテンシャルが残っているのも恐ろしい。
レシピ本や動画などでは分からない一つ一つの手順の理由や細かなポイントなどはもちろんのこと、八戸市の人気店のプロの料理人からお店の裏話なども聞くことができる。
そして八食センターらしい事情として、食材のレベルも非常に高い。もちろん調理法が素晴らしいことは大前提ではあるのだが、中でも今回使った野菜の特にサツマイモやカボチャなどはとんでもなく甘かった。
実際に調理するのは自分たちとはいえ、人気店のプロの考案したレシピでこれだけの食材を使った料理を食べられるというだけで既に参加費用 (サイトをご覧になればわかるのだが、基本的に1000円程度である)を超える価値がある。
抽選制ではあるものの、機会があれば是非応募してみて欲しい。

八食センター内にて過去のレシピと共に配布されている
RESTAURANTE & BAR SAÚDE
住所 : 青森県八戸市大字堤町 4 - 3
営業時間 : 17:30~23:00(LO22:00)
定休日 : 日曜日・月曜日
アクセス :最寄りバス停は「二十三日町」
備考 : 金曜・土曜は混雑するとのこと
八食センター
住所 :青森県八戸市河原木神才22-2
営業時間 : 9:00〜18:00 (市場棟)
定休日 :水曜日
アクセス :八戸駅から車で10分程度。
備考 :八戸駅から直通バスあり