健康オタクは不健康
『ちびまる子ちゃん』や『コジコジ 』でお馴染みの漫画家さくらももこさんは健康オタクだった。
と同時にかなり不健康だった。
中国の謎めく漢方やらお茶やら飲尿療法やら、東洋医学寄りのあらゆる健康方を試す傍ら、ヘビースモーカーでもあった。
彼女は53歳で亡くなった。
死因は癌であった。
以下は『ももこの健康手帳』のアマゾンレビューである。
なぜ健康オタクは不健康なのか?
について私なりに幾つかの観点から考えてみた。
1.健康への強迫観念
2.健康法を続けたせい
3.そもそも健康な人は健康法にハマらない
「健康」への強迫観念
健康な生活をしなければならない」というストレスがある。
「精神を凌駕することのできるのは習慣という怪物だけなのだ。」という三島由紀夫の名言がある。
この言葉を折に触れては思い出す。
世の中には宿題をやらなくても眠れる子供と、宿題をしないままでは、どんなに眠くても眠れない子供がいる。
また、風呂は明日の朝でいいと思える人と、なんとしても今日の汚れを今日のうちに落とさないと布団に潜れない人がいる。
習慣とは強迫観念に近いものだと感じる。
生命維持活動以上の「やらなくてはならないこと」は、やらないと気持ち悪いことであり、やがて自分の身に降りかかる不幸の可能性を軽減するための行動である。
三島由紀夫は病弱へのコンプレックスから筋トレに励んだらしい。
習慣は趣味ではない。呪縛である。
実際のところ、人工甘味料など体に悪いとされているものを摂取したところで、直ちに病気になるわけではないが、「体に悪いことをしてしまった」という罪悪感・焦燥感が、肉体的以上に精神的に身を追い詰めるのである。
ダイエットも似ている。
食べ過ぎてしまった罪悪感や、高カロリーなものを摂取した後悔が更に二重三重にダイエッターを襲う。
ストレスは酵素を消費させるから、後悔のストレスで更に痩せ辛くなるという負のスパイラル。
加えて、なまじその知識と意識があるばかりに、「ストレスを知覚したこと対するストレス」まで起こるという無限の地獄である。
健康オタクはオタクであるが故に、健康にまつわるストレスを自ら受けずにはいられないのだ。
何も知らず、何もせず、好き勝手に不摂生している人よりも莫大な精神的なストレスを受けているのだろう。
健康法を続けたせい
長年、健康法とされてきたことが覆される瞬間がある。
本当のことはよくわからない。
例えば糖質制限は正しいのか間違いなのか、筋トレは寿命を縮めるか伸ばすかなど。
何が正しいのかはわからないが、どんなに良い栄養が含まれていても一つのものを食べ続けると栄養が偏るのはなんとなく分かる。
筋トレも過ぎたるはなお及ばざるが如し、ということだろう。
また、ある観点からすると体に良くても、別の観点からすると体に悪い場合もある。
体質・適時・適量・目的(何の維持・改善を目的にするか)を考えなければならない。
風邪が治っても風邪薬を飲み続ける人はいないが、「健康」という漠然としたものの維持・向上のために、サプリメントは無限に増やせるうえに、やめ時が分からないのである。
習慣を解くことには抵抗と恐怖が付き纏う。
その習慣を続けているから健康で居られるという確信があれば良いが、その確信のないまま、なんとなく続けていて、辞めたら今より不健康になるのでは? と不安で辞められない場合も意外に多い。
そもそも健康な人は健康にハマらない
もっとも健康を意識するのは、病気のときである。
私も数年前に吹き出物が顔中に噴出した時期があり、同時に喘息、胃腸や皮膚の炎症、アレルギーなど様々な不調が体に現れるようになった。
それを機に、自らの「健康」に向き合うことになった。
健康というのは本当に奥深くて、体は冷やさない方がいいとか野菜を食べた方がいいとか一般的に共通することはあっても、人それぞれ体質やそのときの悩みにより、摂取すべき野菜も違えば飲むべき薬も違う。
「体に良いこと」は人それぞれなのである。
結局のところ健康についてアレコレ悩み探求しているのは不健康者と老人ばかりで、元気な人は週に5回ラーメンを食べても平気でいる。
駄菓子を食べないような神経症の子供を含め、
健康オタクは精神的あるいは肉体的にそもそも弱った人なのではないだろうか。