『Pool』はフィンテック企業だから生み出せた!事業責任者が語る、金融ビジネスの難しさと面白さ
──最終的に目指したい未来は、「お金の自動運転」
こう語るのは、手元の資産形成に活用できるクレジットカード『Pool』の事業を牽引する宮尾 拓です。
『Pool』は当社の掲げるミッション「お金の新しい選択肢をつくる」を体現する事業の一つです。今回は、その事業責任者である宮尾のこれまでの歩みから、『Pool』立ち上げの背景・これから目指したい世界観など幅広く聞きました。
起業を経て、カンムに出戻り。『Pool』事業をリードしつづける
──はじめに、宮尾さんのこれまでの経歴についてお聞かせください。
宮尾:大学院修了後、起業家を多く輩出するベンチャー企業に入りました。この会社を選んだ理由は「いつか起業したい」という思いがあったからです。
入社後、すぐに子会社に出向。20代で事業責任者となりました。年上かつ優秀なメンバーが大半のチームをどうまとめていくか……。はじめは「何でも自分が決めないと」と、肩に力が入ってしまいましたが、自分は事業の勝ち筋を見出すことに徹して、任せるべきものは任せるようになってから少しずつ事業が好転して、当時赤字に転落していた状況から安定的に利益を出せるようになりました。試行錯誤を繰り返しながら、悩み苦しみましたが、今では貴重な経験をさせてもらったと思っています。
7年ほど在籍したあと、広告会社のフリークアウト・ホールディングスへ転職。フィンテック事業を展開していた子会社に出向し、さらに投資先だったカンムへ出向。2019年に転籍しました。
──なぜ他の会社に転職せず、転籍したんですか?
宮尾:仕事で関わりのあったカンムのエンジニアが、とにかく優秀な人だったんです。一つひとつの発言の裏に深い思考を感じたり、論点の整理もとても上手で。こんなエンジニアがいるのかと興味が湧いて、そんなメンバーと一緒に働いてみたいと思いました。
でも入社から3年ほど過ぎた後、カンムを一度退社。実は私、出戻り社員なんです。
──出戻ったということは、決してネガティブな理由でやめたわけではないんですね。
宮尾:やめる気はまったくなかったんです。カンムはとても働きやすい会社でしたし。
突然、新しいフィンテックの会社を作る話が舞い込んできて、そうない機会だし、やってみたいと。その後、投資サービスのスタートアップを起業。結局は転職と起業を含めて1年半ほどで復職を願い出ました。経営陣からは「またすぐ起業しないですよね」と念押しされつつ、承諾してもらいました。
ということで、カンムにはトータルで4年在籍しています。『Pool』は構想段階から2022年のサービスローンチに携わり、その後は事業責任者として事業を推進してきました。
「決済+投資」が1つになった異例のサービスは、スタートアップだから実現できた
──あらためて『Pool』のサービス概要について教えてください。
宮尾:『Pool』は決済だけでなく、投資もできるクレジットカードです。
「無意識のうちに投資できる世界を」をコンセプトに、「決済するお金」と「投資するお金」を分けない、これまでの当たり前を突き崩すサービスです。
多くの方は、預金は銀行の通帳、お買い物はクレジットカードやプリペイドカード、投資は証券口座と、別々の”お財布”で管理していると思います。これは、銀行・クレジットカード会社・証券会社と、それぞれの専門領域が縦割り構造になっているからに他なりません。
私たちはその垣根をなくして、投資もしながら、投資資金もクレジットカードの決済に回せる。このようなプロダクトの提供を通じて、日本の金融体験の変革に挑戦しています。
──どのような経緯で立ち上げられたサービスなんですか。
宮尾:「預金比率が50%を超える日本で、MMF(Money Market Fund)のような商品を再発明できないか」という八巻のコンセプトがPoolのはじまりでした。
MMFとは、アメリカで生まれた公社債の投資信託。今や投資大国であるアメリカも、預金が大半でした。しかし1970年代後半から80年代初頭にかけて、2ケタ上昇の激しいインフレに見舞われる中で「預金を放置しておくと損」という認識が広がりました。そのとき広く浸透したのが、MMFをはじめとする投資商品だったんです。
かつて預金が主流だったアメリカを投資大国に変えたように、『Pool』で日本人のお金に対する感覚を少しでもいい方向に変えたい。そんな想いが込められています。
──新たな金融サービスをつくるにあたっては、どんな苦労がありましたか?
宮尾:これまで投資と決済が明確に分かれていましたが、銀行やクレジットカードの運営主体が異なる法人である前提があったから。今はそれを横串でいろんな金融機能を提供できるようになってきた。
金融業特有の法規制の厳しさはあるのですが、『Pool』は複数の法律にまたがる複合的な金融プロダクトなので、法的論点一つとっても、簡単に答えが出ず、当局との話し合いが必要です。社内で議論して道筋を探り、その都度、当局に相談するため、新しく何かに取り組もうとするとそれなりの時間がかかります。
また、新しいコンセプトのサービスでもあるので、ユーザーが受け入れやすいコンセプトとしてプロダクトを届けることも大切です。多くのお客様に利用してもらえるように、マーケティングの体制を拡充するのが喫緊の課題です。
総じて、とても難しいビジネスに立ち向かっていることは確かです。投資に決済機能を組み合わせたプロダクトは国内でもまだ他にないのではないかと思います。とはいえ、理想的な体験を提供できていないので、引き続きチャレンジしていきたいと思います。
生活費を“プール”して、「決済+投資」に使える世界をつくる。その先の未来
──『Pool』はまだ世の中にない新しいサービスで、かなり挑戦的なテーマですね。
そうですね。投資商品でありながら、一般的な投資の選択肢とはまた異なる受け皿になり得る意味でも、面白みを感じています。『Pool』は固定利回りと高い流動性を両立させている点が特徴です。従来の定期預金や債券などの伝統的な商品とは、また違う新しいコンセプトの投資サービスです。
実際に、ユーザー様のインタビューでは「『Pool』は投資というよりも“置いてある”感覚に近い」と言われています。生活費を文字通り”プール”して、「決済+投資」を1つのアプリで完結できる世界観は、当社の掲げるミッション「お金の新しい選択肢をつくる」のど真ん中に位置する事業です。
──『Pool』を提供することで、どのような世界をつくっていきたいのですか。
まずは、意識的に「投資をする」というよりは、自分の「生活費を”プール”しているウォレット」の中で投資ができている世界をつくりたいです。生活費が入っているお財布の中で投資ができているイメージです。
これからの日本は、予測できない変化が多い人生になっていくことが予想されます。その中で「お金の使い道はどうあるべきなのか」もセットで考える必要性がより一層増していくのではないでしょうか。
たとえば、働き方については「定年まで同じ会社で働く価値観」から「転職をしてキャリアを作っていく価値観」へと移り変わってきています。ライフイベントのあり方も多様化する中で、これまで以上に人生が一直線ではなくなっている時代に突入する。
予測できない変化が多い人生になっていくからこそ、人生の伴走者である“お金のあり方”もより機動力の高い・柔軟なお金のやりくりができる状態であるべきだと考えています。
──その先に見据えていることはありますか。
最終的に目指したい未来は、「お金の自動運転」です。
お金のコントロールは、預金、投資、決済などさまざまなお金の動かし方がある中で、全体でどうあるべきかをコントロールした方が良いと思っています。それには、人よりもAIなどのスマートなロジックの方が、お金のポートフォリオの管理がしやすい。
『Pool』は投資単体、決済単体というよりは生活に関わるすべてのお金のやりくりを分断されることなく、一元管理ができる状態を目指したいです。
“お金の新しい選択肢”をつくり、リスクマネーが流通する世の中に。日本経済を活性化させたい
──今自分に課している「事業責任者としてのミッション」を教えてください。
当社は「銀行機能をアップデートをする」未来を目指していますが、その中で私のミッションは「魅力的な運用商品を発明すること」です。
流動性とある程度の利回りを両立した商品へのアクセス機会は限られています。既存の金融機関による貸付が停滞傾向にある状況で、資金が銀行に滞留しやすい構造があります。そこで我々のようなフィンテックのスタートアップがリスクを抑えながら資金提供していける新しいビジネスモデルをつくりたい。
このようなチャレンジを通じて、日本のリスクマネーが流通していないところに行き届かせ、日本経済の活性化に少しでも寄与したいです。お金があればより企業が成長でき、日本経済の活性化につながると信じています。
──大きなミッションを担う『Pool』事業部ですが、責任者としてどんなことを心がけていますか。
宮尾:メンバー一人ひとりに「誰かが必要としているものをつくっているという実感」を持ってほしいと思っています。『Pool』の価値、魅力などサービスが持つ意義を言語化し、積極的に伝えるようにしています。
手前味噌ですが、うちのチームは本当に優秀なメンバーばかりです。ボールを自発的に拾って、各自で解決する。当事者意識が強い人が集まっています。
私は、みんなが「チャレンジしたい」と心から思える、そしてそれぞれのパワーを発揮できる環境づくりを目指しています。
──これからどんな人にチームに加わってほしいと思いますか?
宮尾:今求めているのは、金融業界の経験から新しい価値を作ってみたい方でしょうか。
これまでは「技術で金融をハックする」というテック企業としての側面が強く、金融経験者不在のまま、事業に取り組んでいました。先入観なく、自由な着想でサービスづくりができるのはカンムの強みでもありました。
これからもう一段上のステージへ向かうためには、金融業界の知見をうまく取り込むことが会社として、事業として、次のステージにつながると考えています。
さらに理想を言えば、古いものに縛られず、不確実なものとも向き合いながら新しいものづくりを楽しめる人、でしょうか。
私たちが掲げるミッションは「お金の新しい選択肢をつくる」。きっと、金融機関では難しいことが、カンムではチャレンジできるはずです。
──宮尾さん、本日はありがとうございました!
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