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大臺 序乃壱

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此のお話は日本が嫌いな日本人へ…。  日本を愚かと思う日本人へ…。  日本が貧しい国であったと思う日本人へ…。  日本人として誇りを持てぬ日本人へ届ける物語。  此れは我等が…
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2021年4月の記事一覧

大壹神楽闇夜 1章 倭 降り立つ闇3

大壹神楽闇夜 1章 倭 降り立つ闇3

「いや、しかし華咲の娘とは思えんな。」
 香久耶をジロジロ見やりながら彦介が言った。彦介は既に顔を真っ赤に染め上げできあがっている。
「ほんと、お母さんもお姉ちゃんも図々しいのに此の娘はなんとも大人しい。」
 喜多が言った。
「うん。確かに似ておらん。この娘は何と言うかお頭の良さそうな顔をしておる。」
 又次が言う。
「にゃはははは…。当たり前じゃ。香久耶はお頭の良い日三子になるんじゃ。」
 と、

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大臺神楽闇夜 1章 倭 降り立つ闇 2

大臺神楽闇夜 1章 倭 降り立つ闇 2

「で、月三子が二人、水三子は四人もおって誰もおらんとはどう言う事じゃ。」
 ジロリと伊都瀬が神楽達を睨め付ける。
 六人は揃って伊都瀬の前で正座をさせられお叱りの真っ最中である。勿論第二城門の前であっては迷惑と伊都瀬は案内された寝所で此の六人を集めての事である。
「我は寝ておったから関係ないぞ。」
 神楽が言った。
「そうじゃ、我はちゃんと神楽を見ておった。」
 吼玖利が言う。
『そんな言い訳が通

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大壹神楽闇夜 1章 倭 降り立つ闇1

大壹神楽闇夜 1章 倭 降り立つ闇1

「ほれほれ。よく見るのじゃ。」
 と、神楽は目を広げて吼玖利に見せた。
「これこれ、そんなかわゆい顔を近づけるで無い。」
「良いから見るのじゃ。」
「何を見れば良いのじゃ ?」
「我の目じゃ。」
「目 ?」
「そうじゃ。よーく見るんじゃぞ。」
 と、更に近づける。
「どうじゃ。両目の色が違うであろう。」
「おお、本間じゃ。色が違うぞ。」
 と、驚いた表情で神楽の瞳をじっと見やる。
「そうであろう。

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大壹神楽闇夜 序章 2 卑国の神楽

大壹神楽闇夜 序章 2 卑国の神楽

太陽の日差しが木々に遮られ、蒸し返す暑さは幾分ましではあるが、其れでも汗を拭う手拭いはグッショリである。娘達は山道から川を見つけると隊列を離れ、川辺で紬を脱ぎ捨てると川の水でこべり付いた汗を落としはじめた。
 山道を覆い尽くす娘達の群れ。その群れから勝手に外れ川辺に行けば咎められそうなものだが、卑国の娘達にとっては普通の事である。誰も咎めず誰に許可をもらう必要もない。好きな時に休み、好きな時に飯を

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大壹神楽闇夜 序章 奴隷の王2

大壹神楽闇夜 序章 奴隷の王2

 其から半年も経たぬうちに準備は整った。船の数は三隻。船員の総人数は三〇〇人程である。此れはあくまでも調査であり侵略や征服といった行いでは無い。だから過剰な人員は必要ではなかった。政としては船は小さく目立た無い物が好ましかったが、小舟で魚釣りをしに行く訳ではないし、目の前の陸地に行く訳では無い。だから、船を小さくと言っても限界があった。
 政は船団の大尉を務める項雲に、あくまでも内部調査で有る事を

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大壹神楽闇夜 序章 奴隷の王

大壹神楽闇夜 序章 奴隷の王

 数百年続いた戦乱の世が終わりを告げると久方振りの平和な世が訪れた。唯、此の戦が数百年続いたと言われても始皇帝となった政にとっては高々数十年程度の事である。此れは政だけではない。皆が皆高々数十年なのだ。戦乱の世に生まれ其れが終わっただけの事である。殆どの者が事の起りなど知らず、只々時代に翻弄されていただけの事である。
 其れでも平和が訪れたのは良い事である。然れど政には納得出来ない事がある。其れは

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