編集者目線から「ライトノベル」を分野別に考える 【ライト文芸・キャラ文芸編】
僕はマイストリートという編集プロダクションに務めていて、毎年『このライトノベルがすごい!』という書籍を編集しています。ライトノベルについてはなるべく包括的に状況を見るようにしています。
しかし2010年代からはWeb発のライトノベルの隆盛と、別分野としてライト文芸・キャラ小説も爆発的に増えてきたことで、広義の“ライトノベル”というものをしっかりと追うことが難しくなってきています。
とはいえ、編集者という人間は作品を読んだときに、「自分が関わっているレーベルからの出版に向いているものなのか」、「約半年後以降(刊行される時期)に広く受け入れられる設定・内容なのか」、ということを考えています。
そして、「作者がどういった意図を持って書いているのか」「どういった読者がこれを喜び、受け入れてくれるのか」といったターゲット読者についても考えていきます。
これは個人的な意見ではありますが、僕が考える広義の“ライトノベル”をいくつかの分野に分けながらそれぞれの印象をまとめていきます。
分野は大きく分けて
①既存の文庫ライトノベル
②Web発新興ライトノベル
③ライト文芸・キャラ文芸
④その他の分野
というように書いていければと思います。
今回は「ライト文芸・キャラ文芸」です。ライト文芸は、ライトノベルのキャラクター性や文章の味わいを持ちながら、いわゆる一般文芸的な題材や世界観で作品を生み出しています。
1980年代にライトノベルがジャンル小説やジュブナイル・ヤングアダルトといった作品群の枠に当てはまらず、独自の小説分野として認識されていったように、ライト文芸・キャラ文芸も2000年代にライトノベルや一般文芸の枠には当てはまらない小説群として、様々な文化を融合させながら形成されていったものだと思います。
その過程はこちらの記事にも書きました。
■ライト文芸に好まれる要素
ライトノベルを読んで育ってきた作家がいて、キャラクターを描くイラストが小説のカバーに使用されることが一般的になり、ライトノベルを制作する編集部や一般文芸の編集部が新たなレーベルを立ち上げ、「ライト文芸」「キャラ文芸」という分野が確立していっています。
ヒット作も多く生まれており、それらの傾向からも、読者にどんなジャンルが好まれるのかが伺い知れます。
好まれるのは、恋愛、犯罪、仕事、料理。
要素としては「書店」「コーヒー」「特殊な仕事」「美味しい料理」「妖怪・神様」「神社仏閣」「京都や鎌倉などの古都」
女性好みだと「中華後宮」「平安・陰陽師」「偽装結婚・契約夫婦」「イケメン」最近はなぜか「龍神様」
こういった傾向が見られます。「ライト文芸」「キャラ文芸」と言っても様々な文化的背景があって、それらの流れから出来上がっているジャンルもあるので簡単ではありません。けれど、作品の狙い目となる題材や設定があるので、しっかりと押さえた上で作品作りができるとよいでしょう。
今回はヒット作を分析しつつ、プロットを立てるのに役立ちそうなアイデアを紹介してきます。
「ライト文芸」「キャラ文芸」を買う読者たちは、もちろん「小説を読むのが好きな人」です。もっと言うと、「娯楽として、文章で書かれた情報を読んで楽しめる能力がある人」です。
加えて、物語の中で活躍するキャラクターの魅力も受容することができる人でもあります。
現在ヒットしているライト文芸・キャラ文芸のシリーズは、読者が興味を惹かれる要素の組み合わせがうまくハマっています。ここからは人気のシリーズを上げながら、それぞれのジャンルで重要になっている要素を紐解いていければと思います。大きな枠組み「ライト文芸・キャラ文芸」と括っていますが、ジャンルごとにターゲット読者は異なりますし、そこにいる読者が好む要素も期待する物語も異なります。
文化的な背景も異なるので、どんな文脈を汲んでいるのかを見つつ、紹介していければと思います。
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