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ライトノベルとライト文芸って何が違うの?

 進捗どうですか? マイストリート岡田です。

 このnoteは、編プロ所属の編集者である岡田が、そのときそのときの思ったことを書き連ねていくやつです。

 今回のテーマは、小説ジャンルの中でも目立っている分野である、
 「ライトノベル」と「ライト文芸」の違いについて。

 一言で言ってしまえば「書店の売り場(棚)が違う」です。ほぼイコールで「主要な想定読者層が違う」とも言えます。作り手側の都合です。

 それから作り方もちょっと違います。ライト文芸はカバーにイラストを用いてライトノベル的なパッケージにしていますが、多くは口絵と挿絵がありません(メディアワークス文庫は口絵あったり、挿絵を入れる作品もあるので、すべてではない)。

 なので作り方自体は一般文芸に近いです。

 ライトノベルもライト文芸も、キャラクターの立った内容になっており、エンターテイメント性を重視した作りになっているのは同じです。イラストを用いたカバーになるのも同じで、書影だけを見れば(テイストは違うにしても)パッと見は同じ部類のものに見えます。

 なぜ似たような小説が、書店の中で別々の棚(大型書店だとフロアや建物も別だったり)で展開されているのか。

 それは上のツイートでも書いている通り、レーベルを抱える編集部が、エンタメ小説の領土拡大を狙っているから、と解釈できます。

 ライト文芸に関しては、その黎明期からの発展について書いた記事があるので、まずはそちらを参照してください。

 小説というメディアでは、エンターテイメント性の強いキャラクター小説が全体を覆っていき、2021年現在はライトノベルもライト文芸も一般文芸も純文学も「パッケージング次第!」になってきたと感じています。

 現に「涼宮ハルヒ」シリーズは角川文庫版で写真カバーになり、東野圭吾作品はイラストを使った新装版が出て、近現代日本文学は人気漫画家のカバーイラストで売れています。

 このパッケージングの戦略を練り、イラストレーターやデザイナー、プロモーション方法などを考えているのが編集者なのです。常に悪巧みを考えてるんですよ編集者ってやつは。

 いまでこそ書店へ買いに行くのがなかなか憚られる世の中になっていますが、それでも書店の棚を大きく占めて展開されることは本にとって何よりの宣伝ですし、お客さんに見つけてもらうためのドデカイ手段です。いかにして書店の棚をゲットするかが、本を売る側がいつも考えていることなのです。

 ライトノベルレーベルがどんどん創刊していったゼロ年代は、レーベル内でどんどん刊行点数を増やし、ライトノベルの棚の中で領地合戦をしていました。それが2010年代になるとWeb発小説がどんどん現れ、四六判・B6判という大きめサイズの本がどんどんライトノベル棚を侵略していくようになります。書店のライトノベル担当が物理的に棚の確保が難しいと嘆いている横で、各出版社はライト文芸という一般文芸寄りのエンタメ小説にも乗り出し、文芸・文庫の棚を侵略し始めたのです。

 これがだいたい2015年頃の話。それから5~6年経ったいまは、ライト文芸内でも読者層の変遷が起きていて、

①ライトミステリー・お仕事・グルメ系の一般文芸/ジャンル小説の流れ
②あやかし系・中華後宮・結婚系の元少女小説の流れ
③10代恋愛や泣ける・感動・ダークなテーマを描く、元ケータイ小説の流れ

 ③なんかはTikTokでバズって大重版!という流れが見えていて、各社オビにもTikTokのロゴが躍っていますね。

 僕の直近刊行された担当作も③のパッケージングをかなり意識して作っています。感想を見ていると、狙い通り10代の読者に届いているようです。


 このように、「ライトノベル」や「ライト文芸」と一口でまとめられている分野の中で、この10年の間で大きな変化が起こり、読者層もジャンルも売り方も異なってきています。

 しかしパッケージング(イラストやデザインの雰囲気)は似通っていて、読者側からすると、ライトノベル/文芸文庫だと思ったのに棚が違う、となってしまうわけです。買うもの決めて書店に来るお客に優しくない。

 この先、エンタメ小説分野がどうなっていくか、また別の書店の棚を狙って侵攻を始めるか。はたまた書店を飛び出してコンテンツを売り出していくか。この先の動向にも注目です。


 2010年代、ライトノベル市場は、Web小説の勃興が印象強いのですが、この10年のライトノベルの動きは、飯田一史さんの『ライトノベル・クロニクル2010-2021』に詳しく書かれているのでおすすめ。コラムでWeb小説書籍化の歴史が書かれています。


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