ねずみにも根気よく言えばわかる

ねずみには
言ってもわからないと思われがちだ。

でも
わたしは信じるようになった。
ねずみにも
根気よく言えばわかるのだ。

少なくとも
この春から
我が家の天井裏を基地にしていた
クマネズミの一族には
わかってもらえたと思う。

それまでに
7匹のねずみと
数え切れないくらいのカニたちが
犠牲になった。

パンツも齧られて穴が空いたし
畑仕事の後に楽しみにしていた
ローゼルおにぎりも食べられた。
ガスコンロの裏の線も噛みちぎられたし
ゴムベラにも歯型が付いた。

7匹目を仕留めた時に
天井裏のねずみたちに
訴えることにした。

わたしはほんとは
カニも食い散らかされたくないし
もうねずみのことだって殺したくない！
どうか出てってください！

大きな声で
聞いてもらえてると信じて
何度も何度も
こんこんと訴えた。

そうしたら
不思議なことに
次の日から
ねずみたちが
いなくなったのだ。

仔猫くらいの大きなねずみと
それよりすこし小さいねずみたち
数匹は残っていたはずだ。

わたしは
ねずみたちが
訴えをきいてくれたと
信じることにした。

数日経つと
ねずみたちの
においもなくなった。

そうしたら
カニたちが戻ってきた。

昨夜も枕元でカニが
ぷくぷくぷちぷちぷぷぷぷと
ずっと話していた。

カニが何を言っているのか
わかろうとしたけれど
まだ今のわたしにはわからない。

でも
安心できる
ぷくぷくぷちぷちだった。

カニもねずみもわたしも
みんなおんなじだと思った。

言葉も文化も違うので
通じ合いにくいが
ちゃんと信じて訴えれば
伝わるのだ。

そして
ちゃんと信じて
耳をすませば
きっと伝わってもくる。

わたしの声に
耳をすましてくれた
クマネズミたちに
感謝をしよう。

そしてわたしも
ちゃんと耳をすませる人間で
ありたいものだよ。