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「参政党」は「れいわ」の右派バージョンか~綱領から政党を覗いてみた~

地方議会にも急伸する参政党

2022年7月10日投開票の参院選で、すい星のように現れた政党「参政党」が1議席を獲得しました。

その直前に、筆者はこの党の綱領をワードクラウド化しました。議席獲得の可能性について、早くからメディアで伝えられていましたので、どんな政党なのか一有権者として調べておこうと思ったためです。

その記事は多くの方が見てくださったようです。

参政党の綱領は、90文字ありません。れいわ新選組の400文字よりも短いのです。

ちなみに他党は以下の通りです。

  • 日本共産党=約15000字

  • 日本維新の会=約7000字

  • 社民党=約6200字

  • 公明党=約4800字

  • 自民党=約2000字

  • 立憲民主党=約1800字

  • 国民民主党=約700字

以下が参政党綱領の全文です。

・先人の叡智を活かし、天皇を中心に一つにまとまる平和な国をつくる。
・日本国の自立と繁栄を追求し、人類の発展に寄与する。
・日本の精神と伝統を活かし、調和社会のモデルをつくる。

参政党綱領

筆者は記事の中で、

綱領は政党の憲法と筆者は思っています。こんな短い憲法ではどんな国を目指すのかさっぱりわかりません。

と書きました。

綱領は、政策集や公約集とは違います。

政策集や公約集は社会・経済・政治状況に応じて、適宜変えていくべきものです。これに対して、綱領はもっと基本的な、党として決して揺るがない立党の精神を、党内と有権者に闡明するものなのです。政党の憲法と呼ぶのはそういう理由です。

それなのに、参政党の綱領はわずか90文字しかない。新党であるにもかかわらず、現状認識も、基本理念も、目指す国家像も十分に示していない。これで有権者の支持を求めることがどうしてできるのか、不思議だったのです。

さらにいえば、この、判断材料を示さないという事実自体が、有権者の判断材料になると思っていたのですが、比例区で有効投票総数の3.3%に当たる、1,768,347の得票を得て、1議席を獲得しました。メディアの予想は当たったわけです。

そして2023年4月の統一地方選挙では、231人の候補を立て、100人の地方議員が誕生しています。統一選では日本維新の会の躍進が目立ちましたが、実は参政党も急速に勢力を伸ばしています。

綱領軽視の先輩党「れいわ」と「民主党」

綱領を見ても、どんな国家を目指しているのかさっぱりわからない点では、れいわ新選組が先輩に当たります。これも全文を掲げておきます。

決意(綱領)
<私たちの使命>

日本を守る、とは
あなたを守ることから始まる。
あなたを守るとは、 あなたが明日の生活を心配せず、
人間の尊厳を失わず、
胸を張って人生を歩めるよう全力を尽くす政治の上に成り立つ。
あなたに降りかかる不条理に対して、
全力でその最前に立つ。
生きているだけで価値がある社会を、
何度でもやり直せる社会を構築するために。
20年のデフレで困窮する人々、
ロスジェネを含む人々の生活を根底から底上げ。
中卒、高卒、非正規や無職、障がいや難病を抱えていても、
将来に不安を抱えることなく暮らせる社会を実現する。
私たちがお仕えするのは、
この国に生きる全ての人々。
それが、
私たち「れいわ新選組」の使命である。
<私たちの当面の基本政策>
①消費税は廃止
②全国一律最低賃金1500円「政府が補償」
③奨学金徳政令
④公務員を増やします
⑤一次産業戸別所得補償
⑥「トンデモ法」の一括見直し・廃止
⑦辺野古新基地建設中止
⑧原発即時禁止・被曝させない

れいわ新選組綱領

筆者は以下の記事で、次のように書きました。

<私たちの使命>からは、何も意味のあることは伝わってきません。控え目に言っても、これでは近代政党と言えません。

<私たちの当面の基本政策>では、「当面」がまず引っ掛かります。綱領に「当面」の施策はありえません。それは選挙公約です。
基本政策に平気で「当面」という言葉をつけること自体が、信頼に足る党であるという印象を毀損しています。

個別政策もどのような理念に基づいているのか不明です。有権者が知りたいことに答えていません。

れいわが目指すのが資本主義なのか社会主義なのか、君主制なのか共和政なのか。少子高齢化、経済活性化、財政問題、日米同盟や自衛隊、憲法改正へのスタンスはどうなのか。まったく伝わりません。
唯一伝わるとしたら、こうした基本スタンスを含まない文書を「綱領」として公表できる政党だという事実です。

筆者が綱領にこだわる理由は、綱領がしっかりしていない政党には政権を任せられないためです。野党の間は、与党攻撃をしていれば済むのですが、与党になったらそうはいかない。その時にまともな綱領がないとどうなるかは、今はなき民主党の例が示しています。有権者は懲り懲りしたはずです。

詳細は以下に記しましたが、民主党は結党以来10年以上も綱領を作らなかったため、いざ政権を取った時に基本政策をめぐって党内がまとまらず、大混乱しました。結果としてついには党が分裂し、有権者には見離されて選挙で大敗しました。

下野した後に慌てて綱領を作りましたが、手遅れでした。

もう一つの、さらに深刻な可能性は、一人のカリスマ的リーダーが党内を壟断し、独断で政策を進めることです。与党の政策がたった一人のカリスマに支配されたときは、ファシズムへの道だといっても過言ではないでしょう。

れいわについていえば、山本太郎氏のカリスマ性で支えているところがある。いまでさえ「山本私党」と批判されているわけですから、まともな綱領が絶対に必要です。

憲法が権力者を縛ると同じように、綱領は所属党員を縛る。逆に言えば、綱領に実質的な内容がない政党は、権力を握ったときに何をしだすかわからない怖さがあるのです。

そういうわけで、綱領に視点を置く限りにおいて、参政党はれいわの右派バージョンです。

マスコミよりyoutube

参政党は参院選前まで、特定の有権者以外には知られていない政党でした。設立は2020年4月11日ですが、メディアの露出はほとんどありませんでした。

2022年に入っても、大手紙(読売、朝日、日経、毎日、産経)で参政党に触れた記事は、1月~3月の間にたったの1件。日経新聞が元旦に特集した参院立候補予定者一覧の中に、

政治団体「参政党」も擁立の準備を進めている

日経新聞2022年1月1日付け

とあるだけです。その後も

  • 4月=12件(読売新聞5、毎日新聞5、朝日新聞2)

  • 5月=96件(読売新聞35、朝日新聞33、毎日新聞25、産経新聞2、日本経済新聞1

です。6月22日の公示後は、多くの記事が載りましたが、大手紙はほぼ、直前まで全く動向を伝えていなかったわけです。新聞でさえこうですから、テレビはもっと露出がなかったと推測されます。

では、参政党はどこで知名度を広げていたのか。

youtubeです。

参政党は設立記念日から2週間後の2020年4月24日に、「参政党結党特別インタビュー!」と銘打って、最初の動画配信を行っています。動画は3本で、財務省OBの松田学氏と、元共産党専従職員で、小沢一郎議員の秘書だったジャーナリストの篠原常一郎、そして、設立の中心人物である参政党事務局長の神谷宗幣氏の3人の動画がアップされています。

このうち神谷氏は今回参院選で当選した張本人です。

動画配信開始後、ユーチューバーを基点に一気に知名度が広がる様子については、投票当日にアップされた以下のNHK政治マガジンが詳しいです。

最初の配信から1か月後の2020年5月19日から、「政党DIY cafe」というyoutubeチャンネルを開設し、神谷氏、篠原氏がホスト役になるなどして、政治トーク番組を運営していました。そして、そのわずか2年3か月後に国政政党になり、2023年の統一選では地方にも多くの議席を得たことになります。これは離れ業といってもいいと思います。

この路線は若者の新聞、テレビ離れに対応した戦略としては優れています。2020年のNHK国民生活時間調査によると、30代までは、新聞を読む時間は平均5分にも満たないし、ネットの接触時間がテレビを上回っています。しかも参政党は教育や子育て支援を熱心に訴えてきた。マーケティング感覚は鋭いものを感じます。

NHK国民生活時間調査

あおりを食ったのは自民党です。なぜなら、若者は自民党を支持してきたからです。維新や国民もそうですが、自民党の票をうまく取り込んできたといえます。関連記事を貼っておきます。

実はこの戦略もれいわと似ていて、れいわが奪っているのは保守層の票ではなく、立憲民主党や日本共産党や社会民主党です。こうした構図に気が付いたのが国民民主党で、だからこそ、立民と距離を置き、自民党と協力的な姿勢になっていったのだと思います。どうせ泳ぐなら、小さい池より大きな海でということなのでしょう。小党を埋没させないためのポジショニングとしては、おそらく正しい選択です。

なお、参政党については以下のような情報もあるようです。

上記のコラムは、参政党関係者がロシアと近しいことをいくつもの実例を挙げて示しています。欧州の極右政党もロシアとの繋がりを指摘されていますし、日本でも同じようなことはあるのかもしれません。

参政党はワクチン懐疑派であり、ワクチン懐疑派と親露アカウントは親和性が高いという研究結果も発表されています。綱領も含めて党の成り立ちについて情報が少ないだけに、もちろん、確実なことは何も言えないわけですが、関心をひく記事ではあります。


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