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もっとも価値あるお買い物、それは時間を買うことです

お金の相談業を始める際に、個人のお客様のみと相対しようと決めました(この仕事の醍醐味は「個」と「個」のキャッチボールであると今でも思っています)。

これまで実にさまざまな人と面談を重ねましたが、皆さん多彩な肩書きをお持ちです。いちばん多いのは会社員の人です。経営者の人、学校の先生や、公務員やリタイアした人もおられます。
 
コンビニエンスストアのオーナー、芸妓さん、お坊さん、政治家や学生や旅人や主婦(夫)の人もおられました。もちろん年代もばらばらです。当方がオンライン面談のため、居住の都道府県もさまざまです(海外にお住まいの人もいます)。
 
相談者はそれぞれ違ったバックグラウンド(背景)をお持ちで、育った場所や時代が異なります。学歴も違えば、職歴も異なります。単身世帯の人もいれば、大家族の人もいます。
 
仕事に夢中な人もいれば、病を抱え療養中の人もいます。平らな道のり、波乱万丈、上り坂、下り坂、人生の立ち位置やお姿もさまざまです。
 
異なった文化規範、価値観を持ちながらも、しかし、どんな人にも等しく「お金」は関わってくるものです。まず、生きるため(生存のため)には「お金」が必要。この事実は変わらないでしょう。
 

しかし、ただ生きるだけでは人は満たされません。スプーン一杯の余裕を継ぎ足して、ほっと一息付ける「こころの充足」も必要でしょう。
 
衣食住で言えば、
 
・こんな装いをしたい。
・こんな食べ物を食べたい。
・こんな建物のこんな部屋に住みたい。
 
誰もが望むちょっとした満足ではないでしょうか。私たちは自分の欲を気にしながらも、さまざまな消費の影を追います。問題はそれがスプーン一杯分の「満足」なのか、それともバケツ一杯の「満足」かなのです。
 
ところで、あなたが無意識に求める満足とは、果たしてあなた個人の産物なのでしょうか。私にはそうは思えません。

誰かの「買っている」を目撃することに事欠かないSNS社会では、「あなたは(それを)欲しいのですよ」と思い込まされている部分が多々あります。
 
資本の集積とそのミックスは縦横無尽に動いて、あなたの満足を(バケツ一杯どころか)、浴槽一杯にまで膨らませようと躍起になります。そして深く顧みることもなく、浴槽一杯の創られた欲望を満たすためだけに、お金を盲目的に貯める、あるいは増やしていく人が後を絶ちません。
 
 
世の中にはもっと価値が生じるお金の使い方があるのではないでしょうか。シンプルに記すとそれは「時間を買うこと」です。お金を用いて私たちは時間というスペースを購入できます。
 
自分の仕事を振り返ってみましょう。多くの人は誰かに雇われ、時間的拘束を受け、給与というお金を受け取る身です。たしかに定期収入は入りますが、あなたは貴重な資源(時間)を差し出すわけです。

若いうちは、最大の資産が時間ですから、それを捧げてお金を得るというのは仕方のない部分があるでしょう。
 
しかし、ある程度年を重ねれば、意識して「お金で時間を買う」というアクションを起こしてもよいのではないでしょうか。

なにも大げさなことではありません。典型例でいえば65歳まで再雇用等で働くのではなく、60歳できっぱり退職する。この行動はまさに、お金で時間を購入し、第二の人生の時間スペースを増すことに他なりません。
 

あるいは別の具体例もあります。私のお客様で40代で早期リタイアした人がおられます(仮にAさんとしましょう)。Aさんもお金で時間を購入されたひとりです。Aさんが仕事を卒業したのは48歳の時で、もっとも大きな理由は当時9歳だったお子さんと過ごす時間を手に入れるためだったといいます。 
 
“カンさん。一瞬一瞬が永遠なんです。娘はまだ僕と一緒に居てくれるけれど、15歳、いや13歳にもなれば、もう自分や友だちとの世界に没入して、僕が入り込む余地はなくなっちゃうかもしれない。今この年齢の娘と過ごしている時間は決して巻き戻せない。この瞬間はお金では買えないんです。”
 
その通りです、Aさん。
 
お金では決して買えない時間を、お金で購入するという選択は、まさに灯台下暗しの発想であります。

今一度考えてみてください。「お金」は適切に運用することで現状維持、もしくは逓増させることが可能です。しかし「時間」は万人にとって等しく減っていくのみです。誰にもそれを変えることは出来ません。
 

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カン・チュンド
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