中学理科の教材研究をするカプセルマン
中学校理科における定番の生徒実験として、『太陽の1日の動きを観察する』というものがあります。『ペンの先の影がちょうど真ん中に来たところで印をつける』という文章に懐かしさを覚える人もいるのではないでしょうか。その実験において使用されるのが、『透明半球』という道具になります。あ、私は理科の先生です。
どのようなビジュアルの道具かは説明が不要なほどに完璧な名前なんですね、これ。その名の通り、透明な半球なのです。ギリギリ「卵の殻みたいに、中は空洞?それともぎっしり何かが詰まっている?」くらいの質問は飛び出しそうですけれど、多くの人が同じイメージを共有できます。これはすごいことです。
アルフォートと聞いて、誰もチョコレート菓子を想像できません。ドラクエの4番目の街(そこにはカジノがある)かな?や、温泉街の隅でひっそりと営まていれる、知る人ぞ知る『喫茶アルフォート』?などと思われることでしょう。ちなみに、喫茶アルフォートでコーヒーを頼むと、それに合わせる軽食として、船の模様がプリントされたビスケット付きのチョコレートが出てきます。
この『透明半球』ですが、いざ授業で使用しましょ!と思い、理科室を漁っていたところ…ないんですよね、これが。透明半球が透明すぎて見えていないだけ、実の
ところ棚に置いてある可能性はありますが、無いのです。
無ければどうするか。購入するっきゃない!と思いきや、そんなことっきゃない!んですよね。幸い、授業までに時間がありましたので、『なんとか買わずに済まないか』と考え始めました。買うと意外と高いんですよね〜。大きめの鍋くらいのサイズ感で、1000円くらいします。
言うて透明な半球ですから、何か代用できるものが手に入らないか、と考え始めました(こんな思考の中に理科の先生の目敏さが滲んでいます)。条件は以下の通りです。
・透明である
・半球である
・なるべく安く手に入る
・ていうか、無料でゲットしたい
・ていうか、本来は捨てるものである
・遠出したくないっすね〜
この辺をクリアしてくるものは何かあるのか…
(以下、頭の中)
(うーん… あー… なんだ… 何がある… うー… あー、私はコーヒーが飲みたいなぁ!そうだそうだ!あ、違う… うーん… 早く仕事終わらないかなぁ〜…あ、今日の帰りDAISO行〜こぉっと!わーい!DAISOの近くに本屋もあって、ゴキゲンな街だぜ〜!その間にはガチャガチャゾーンもあって、一生取れない類のクレーンゲームもあるなぁ〜…うふふ〜…)
(あ)
(お?)
(ガチャ…ガチャ…?)
(…)
(!)
思わず「ヘウレーカ!ヘウレーカ!」と叫びながら真っ裸のまま外に飛び出しそうになりましたが、幸い服は来ていましたし、仕事中でしたので実行には至りませんでしたが、ついに辿り着きましたね。
ガチャガチャのカプセルですよ!あれって、透明な半球なんですよね。そして、本来は捨てられる部分なのですよ。ビジュアルなんて、本来の実験道具をそのまま小さくしたような、名付けるならば『透明半球 1/12モデル』なのです。もうプラモデルだこれは!さて、そうと決まれば早速カプセル収集だ、と言うことで街にお出かけをしました。
街に繰り出して分かったことは、『ガチャガチャのカプセルって全然ゴミじゃないんだ』ってことです。その店舗の備品として管理しているお店もあり、そういう場所ではガチャガチャコーナーの近くにある空入れを指差しながら「あのぉ、このカプセルゥ、もしねぇ、捨てるのならぁ、欲しいのですが〜」と、クネクネしながらややねっとりした声で交渉をしても(実際はちゃんとキリッと交渉しました。大人なのでね)、「店のものなので、ダメです」と普通に断られました。ガーン
しかし、それはお店にもよるみたく、快諾してくれる場所もありました。
とある店舗で許可をいただき、ガチャガチャコーナーの利用者が捨てたゴミのうち、捨てる前に保管されていた使用後の空のカプセルを「好きなだけ持っていってくださいな!」という高待遇を受けました。気前の良いカプセル農家さんですね。ありがたや…!
実はカプセルを見ていく中で気づいたことがあり、それは『意外と半球の形をしたカプセルは少ない』と言う事実です。ちょっと潰れた形をしたものや、上下で一体型となっているものまで、様々です。色が付いているものもありますよね。その場で実験に使えるものと使えないものの仕分けをしてはお店の通常業務の妨げになる上、『ゴミを漁っている成人男性がいる』と通報が入り、警備員が駆けつけてしまうため、一旦全てもらい、自宅で使えそうなものを精査することにしました。
成人男性が空のカプセルが入ったゴミ袋4つを抱えて店内を歩く、というやや異様な光景をお届けしてしまいましたが、なんとか手に入れることができました。大量の中から透明であるかつ比較的綺麗な半球型のものを選び抜き、生徒の数を超えたゆとりある量をゲットすることができました。この実験って、通常は大きな透明半球でグループでやるものなのですが、これなら1人1個使って太陽の軌道を求められます。予備実験も上手くいき、ヨシヨシとほくそ笑んでおりました。
さて、最後に問題になるのが、『使わなかったカプセルの処分』です。当然ですが、こちらで処理をすることになります。カプセルはプラスチックごみですから、指定された曜日に指定袋に入れて、自宅のアパートのゴミ置き場に置いておきました。
その光景の異様さったら愉快です。通常、家庭ごみでは出ない類のものです。まぁ自宅でね、ちょっとランダムにご飯を決めてみたりと、カプセルトイを使って遊ぶなどの家族間の軽い戯れでは使われることはあるでしょう。
しかし、そのような過程で出たごみだとしても、ちょっと多すぎです。選別した結果、ゴミ袋3袋がパンパンになる量になりました。どんだけご飯の選択肢があるのだと。
こうなると、考察が捗りますね。一体ここにはどのような人が住んで、どんな生活をしているのか。ゴミから生活を推測するという、尋常じゃないくらい『キショ』な行為でも、自分が相手であれば許されます。自分のごみから、自分の生態を予測します。
カプセルって通常、ガチャガチャをしたその場で捨てられるものですよね。ガチャを回して「お!これが当たったのか!」を確認するためにその場で開封するからです。それが家庭ゴミとして大量に捨てられること自体、おかしいのです。どのように考えれば説明がつくか。
きっと捨て主は、カプセルを体内の代謝によって生み出し、その中身に用事があるので、家庭ゴミとして空のカプセルは捨てるのでしょう。ソシャゲのガチャのように体の中心部から出てきて、中身のレアリティを確認したのちは空のカプセルを捨てる、それを日常的に繰り返しているのでしょう。そういう行為をなんと私たちは呼ぶか。
排泄です。きっと、排泄をカプセルを経由して行なっている可能性があります。
何を、とは言いませんが、カプセルに入れて体外に排出することで、排出効率をあげているのでしょう。おくすり飲めたね、のちょうど反対です。
マリオに出てくるヨッシーみたいですね。かわいい〜。新作ロックマンに『カプセルマン』として出演するオファーを待ちながら、今日も教材研究に励んでいきます。あ、私は理科の先生です。