「文学フリマ東京39」で買った、「旅と批評のクロスポイント 『LOCUST』
数年前に平和島の流通センターで行われていた「文学フリマ東京」では収穫が多かったので、久しぶりに行ってきました。
今年の会場は東京ビッグサイト。12時からのオープン30分後に行きましたが、すでに列ができていて入場するのに15分ほど掛かりました。
会場内は人で一杯でした。なるべくスムーズに見て回りたいので、最初に端まで行って、そこから戻ってくることにしました。
でも、平和島の時と何か様子が違う感じです。評論やノンフィクション、同人誌などが並べられた机がたくさんありましたが、ここでは違います。多いのは、アニメを表紙にしたライトノベルやBL小説。僕が求めているものとは違います。
ノンフィクション作品もありましたが、少なかった。タイトルを既存の作品に似せているのか、もじっているものが多いのが気になりました。宮本常一の『忘れられた日本人』に似ているものが2点ありました。出店者に訊ねると、「ええ、まぁ」と曖昧な答えが返ってきて、本を見せてもらうと『忘れられた日本人』を意識しているようでした。2次創作なのでしょうか?
出店者がコスプレしている店も少なくなく、自分には縁がないのでそういう店は素早く通り過ぎるようにしました。
でも、来場者も多く真っ直ぐに進めないところもあります。逃さず机の上を眺めていたつもりですが、食指の動く本がまったく見当たりません。平和島では何冊もあったのに。
まだ全体の3分の1も見ていないのに、徒労感が出てきそう。先月に書いた自分の原稿の一節を思い出しました。
「(前略)ライターになりたい人に言っておきたいのは、たいがいの人はあなたの文章を読みたくはない、ということです。それをあえて読もうというのは、中身のある文章、価値のある文章だけですよ。社会に対して自分なりのしっかりした価値観を持って、世間に言いたいことがある人が書いたものだけ。僕は、ライターというのは作家だと思っていますから、付和雷同の救いがたい常識論や、判断しない判断の上に立って、ものを語られてはたまらない(後略)」
これは、マガジンハウスから発行されていた『鳩よ!』という雑誌の1995年10月号「フリーライターへの道 文章で身を立てる方法」特集の中の「クルマ・ライターになる!」で取材されて答えた、『NAVI』元編集長の鈴木正文さんの言葉を引用したものです。
12月23日に発行される『クラクション』という雑誌で『NAVI』を振り返っていて、その中で僕は「10年10kmストーリー物語」という原稿を書いています。「10年10万kmストーリー」がどのようにして始まったのかの舞台裏を明らかにしているので、ぜひ、読んでみてください。
グッタリし掛かったところで、神保町のシェア書店PASSAGEスタッフのたぬきさんにばったり会いました。棚主が40名も参加しているので、そのフォローやPASSAGEの宣伝のために来ているとのことです。
「カネコさん好みのノンフィクションや紀行、評論なんかは向こうの方に固まっていますよ」
さっきまで見ていたのとは正反対の場所です。どうりで見付からないはずでした。
言ってみるとその通りです。面白そうな本を手に取ってパラパラやりながら、眼の前の出店者と話ができるのは楽しい。
でも、調子に乗らないように気を付けなければなりません。題材となっている土地に行ったことがあったりしても、得意げにペラペラペラペラ話し込むとウザがられますから。年長者の経験は意義あるものですが、若い人々に興味があるとは限らないからです。優しく相槌を打ってくれているだけなのです。
それにしても混み過ぎで、ゆっくり本や雑誌などを選んだり、話したりすることが難しかった。平和島に関してはそんな記憶がありません。
根本的な会期や会場の問題もありますが、ジャンルごとにグループ化して明確に店を並べれば、僕のように無駄にライトノベルやBL作品などが並ぶ列を往復しないで済んだはずです。
今回は購入したのは1冊だけでしたが、他の面白そうなものを見落としてた可能性は大きいと思います。それほど混んでいました。
買ったのは、『LOCUST』という雑誌の第4号長崎特集。デザインもカッコ良く、文章もたくさん詰まっていて読み応えがありそうです。サブタイトルの「MAGAZINE FOR TRAVEL AND CRITICISM 旅と批評のクロスポイント」に惹かれました。