読書感想:ビジネスの武器としての「デザイン」
読んだ理由
フェラーリデザインしたことでめっちゃ有名だから。んで、世界的な巨匠デザイナーは何を考えてデザインしているのか知りたかったし、最近ガンプラのデザインしたり何かとメディアで見る気かも多いので何か読んでみようと思った時にたまたま目についたのがこの本だった。
著者
奥山清行
概要
どうすれば「デザイン」をビジネスに活かせるか、スタイリングのような表面的なデザインではなく「言葉のデザイン」や「ニーズからウォンツ」、「ブランディング」から「ビジネスの枠組み」自体の本質的なデザインを自身が携わるプロジェクトを例に解説してる。
感想
デザインの考え方やプロセス・手法など割とほかのデザイン書籍でも同じようなことが語られているので、印象に残ったのは色々あるけど自分的にはデザイン教育の部分かな。(最初の方に語られているからってのもあるけど)
どんなことかというと「デザイナーの専売特許」だったクリエティブの壁の領域が失われ始めたということ。これまでデザインは美大やデザインスクールで教えられるものだったが、東大やスタンフォード、ハーバードではデザイン教育がプログラムに取り入れられるようになった。背景としてデザインツールが進化したことで誰でもやる気さえあればそこそこのクリエティブを作れることができるし、AIがさらに進化すれば誰でもデザインの水準をもっと上げることができると述べている。これに関しては使い勝手のよいUIデザインツールのFigmaなどの登場やAdobe Senseiの進化により表現したいことが今までもグッとやりやすくなるのは明確なので間違いない。
そんな中でも、日本だってデザインは教えてるはずだが、じゃー何で海外のハイレベルな大学のデザイン教育が注目されてるかというと、「文系理系の枠を超えたデザイン教育」をしており、それプラス「ビジネス」についても教えているからにほかならないと。日本のデザイン教育は文系教育の中で絵の描き方を覚えさせれ卒業後はエンジニアの下について、言われるがままに商品のスタイリングをするにとどまってきた。対してアメリカのデザイン教育では文系理系の垣根がないため、構造から設計、強度計算や使用する素材までの全てがデザインの話としてみっちり教えらこまれる。「この差がプロジェクトを主導していけるデザイナーと、受け身にならざるを得ないデザイナーの違いとして大きいのだ」と述べているが、これはインダストリアル領域だけの話だけではなく、IT・Web業界にもそのまま当てはまるのではないだろうか?HTML・CSSすら書けないデザイナー問題やデータモデル設計やUIとの関係性の部分などテクノロジー領域に弱いデザイナー(自分も)が多いし、言われるがままにデザインしてしまうからこそ、ポートフォリオにプロジェクトの背景や課題、デザインプロセスやロジックなどまともに言語化できないデザイナーが量産されている現状に繋がっていると思う。(最近採用活動やっているので特にそう思う)とはいえ自分も受け身の部分はあるので反省するところではあるが...。
もうひとつ大きな問題として、日本の美大やデザインスクールでは「ビジネス」についてお金回りのことを教えてくれない点にあるということ。だから、日本のデザイナーの多くはビジネスを知らず自分が作ったデザインがビジネスにどのような効果をもたらすか、第三者に具体的に説明できないケースが多かったのも全くその通りだと思うしかなかった。そのせいで、商品のコンセプトが決まった後の下流部分でスタイリングのみをせざるしかなかったというのは腹落ち。ところがアメリカの場合は昔から美大やデザインスクールでビジネス視点での教育は存在し、デザインを単なるスタイリングとして捉えるのではなくて、経済的な要素を前提として「モノやサービスを創造するツール」、「問題解決のための手段」として捉えてきてるので、予算や、売り上げ、利益、費用対効果などお金の部分の教育もしっかりやってたらしい。奥山さんが1980年代前半にアートセンター・カレッジ・オブ・デザインで学んでいた時にはビジネスのことをみっちり教わってたとのこと。日本はどうだろうか?少なくとも私が2005年頃に日本のデザインスクールに通ってた時は1ミリもデザインとビジネスの関係性を教わってきたことはない...。(通ってたスクールが良くなかったせいもあるが)
ここまで来るとなんだかBTC人材「ビジネス × テクノロジー × クリエティブ」的な感じですよね。BTCについてはこの本に詳しく書かれています。
ちなみに奥山さん曰く
現在の世界で上手くいってるビジネスの最前線ではデザイン視点のあるビジネスパーソン(または、パートナー企業のプロジェクトに上流から参画したビジネス視点のあるデザイナー)がプロジェクト全体をリードすることが、世界的に見て普通になってきている。
とのことでこれは自分的にはデザイン系経営が上手くいってる証でもあると思う。海外は特にCEOがデザイナー出身の場合もあるし、CEOの右腕的なCDOがいたりするのが普通だし。
ここまでデザイン教育的な感想ばかりになってしまったけど、この本のメインはいかにデザインをビジネスの武器として活用するかその考え方プロセスなどについて詳しく書いてます。ただ、わりと最近のデザイン書籍の内容とそんなに語っていることは変わらないのでデザイナーが読むというよりは、デザインをスタイリングのことだと思い込んでいるビジネスパーソンこそ読むべき本かなーと思います。
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