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ロマンスグレーの男と恋するライオン

 ロマンスグレー(romance gray)は和製英語で、白髪交じりの頭をいう。若白髪で悩んでいた、ソニー創業者の盛田昭夫もりたあきお(1921~1999)がアメリカにいるとき、「それはロマンチックグレー(romantic gray)といっておしゃれなんだよ」と言われ、うれしくなって日本ではロマンスグレーという言葉でそのことを話し、それを聞いて「ロマンスグレー」という小説が書かれたり、映画の宣伝文句に使われたりして、白髪交じりの魅力的な男性に使われるようになった。という。
 今では、グレーヘアーの魅力的な女性も多くなった。

 ロマンスグレーの魅力的な男性といえば、こんな話がある。

 ロマンスグレーの男性に、二人の女性がいた。
 魅力的な男性ということは、お金も持っているので、二人の女性ともつきあえるのだ。一人の女性は若い娘。もう一人の女性は、ロマンスグレーの男よりも年配の魅力的な女性。当然のことながら、男は二人の女性とは別々にあっていた。
 若い女性とあった後、すやすや眠っている男を見ながら、若い女は、「この人がもっと若く見られたらいいのに。あんまり年が違いすぎると財産目当てだなんて言われちゃいそう」と、男が若く見えるように男の白髪を抜いていった。
 年配の女性は、隣ですやすや眠る男を見ながら、「私より若いこの人だけど、もっと年を重ねているように見えないかしら。二人並んでいるときに同年代に見られたいわ」と、男の黒い髪の毛を抜いていった。
 男と二人の女性の関係は続いた。
 二人の女性は男の髪の毛を抜き続け、とうとう男の髪の毛は、全部抜けてつるっぱげとなってしまった。とさ。


 別のこんな話もある。

 ライオンが人間の娘に恋をした。
 恋に理由はない。前述のロマンスグレーの男性の場合も、どうしてこの女性たちとつきあったのか、特に理由はない。好きになったものは好きになったものだ。そして恋すると、狂おしくてどうしようもなくなる。
 ライオンは、娘の父親の農夫に「娘と結婚させてくれ」と訴えた。農夫は、そんなことができるわけないと思いつつも、ライオンが恐くて「だめ」とも言えずに困ってしまった。
 ライオンが、何度も返事を求めるので、農夫はこう答えた。
「娘は、あなたが恐くてたまらない。だから、あなたのキバとツメを切り捨てなければ結婚できないと言うのです」
 それを聞いた恋するライオンは、自分の武器であるツメとキバを切り捨ててしまった。
 ライオンが農夫のもとに現れると、その姿を見た農夫は、「なんだ。弱々しい姿のライオンだ」となめてかかり、棍棒こんぼうを持ってライオンをぶちのめして追っ払った。とさ。


 イソップの話は、最後に教訓が述べられる。
 これらの話のもともとの教訓は何だったかはともあれ、自分の魅力、自分の実力を知ることは大切だ。ロマンスグレーだから魅力のある男性。鋭いツメとキバを持っているからこそ百獣の王とよばれるライオン。
 それぞれの魅力、力を認識して行動しなければならないのに、それを忘れてしまった。
 自分の力を知る。自分の魅力を知る。そういうことを私はこの話から学んだ。
 さて、他人のことはよく見えるが、「灯台もと暗し」で、案外自分自身のことはわからないもの。さてさて、自分自身のアピールポイントって何だろう。
 

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