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急成長するバトロワの新星Apex Legends

1.大人気ゲームApex Legends

Apex Legendsとはこのゲームは「タイタンフォール」で知られるRespawn Entertainmentとエレクトロニック・アーツ(EA)が2019年2月5日に「突如」リリースした基本プレイ無料のバトルロイヤルFPSゲームであり、今現在もプレイ人口は1億人を超えライブ配信などでも絶大な人気を誇っており、e-sportsとして世界大会なども開かれている。

はじめに、ゲーム内の特徴についてみていく。従来のバトルロイヤルゲームでは1チーム1~4人で1マッチに100人でマップ上空を飛ぶ飛行機から降下し、マップに落ちているアイテムを拾い戦うゲームである。

Apex Legendsはデュオと呼ばれる2人のモードとトリオと呼ばれる3人のモードの2種類があり必ずチーム戦になり、1マッチは60人と従来に比べて少なくなっている。次に「レジェンド」と呼ばれる個性豊かなキャラクターの存在である。このレジェンドにはそれぞれ固有の能力があり能動的に発動するもの、クールタイムの短いもの、クールタイムは長いが効果の高いものの3種類が存在しており、それらを使いこなすことがポイントとなっている。個々に能力があり、チームを組む必要があることからどの組み合わせをするのかなどの戦略があること。またレジェンドごとに詳細なバックボーンが設定されている。これにレジェンド一人一人にストーリー性がありアップデートごとにストーリーが追加され、ほかのバトルロイヤルゲームにはないキャラクター性も備えている。

一番大きな特徴はPingシステムである。このシステムはシグナルを打つことでプレイヤーが位置をマークしチームメイトに敵やアイテム次に移動したい場所などを伝えることができる機能である。

この機能の重要性について見ていきたい。Apex Legendsはシステム上一人で開始しても必ずチーム戦になる。このことから一人であろうとチームで動く以上チームメンバーとコミュニケーションをとる必要が出てくる。コミュニケーションをとる上でまず思いつくのが音声でのやり取りである。

Apex Legendsにはボイスチャット機能というものがありゲーム内で特定のキーもしくはある程度の声を出すことでチーム内で音声のやり取りが可能となっている。
しかしGame*Sparkの調査によると下のグラフのようになっている。

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また上のグラフのよく使うと答えた人の中でも「フレンドとのみ」という意見が多く全体でみると積極的なボイスチャット利用はあまりなく、理由としては過去に嫌なことがあったなどの理由である。このことからボイスチャットを利用することなく自分の意志や位置情報の共有などができるこのシステムはとても重要であることがわかる。

このシステムは2017年にリリースされた人気バトルロイヤルゲーム「フォートナイト」も導入を検討しているという。

 配信技研が毎月YouTube live Twitchなど国内主要プラットフォーム上の75,000以上の日本語全チャンネルを集計しランキングを出している。その中のゲームタイトル別ライブ配信視聴ランキングにおいてApex Lgendsが毎月一位を一年間取り続けている。参考として2021年5月1‐31日のランキングを見て見ると次のようになる。

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ランキングを見ればわかるようにApex Legendsの視聴時間は2位の倍以上と圧倒的な人気を誇っている。ここではApex Legendsがランキング上位になれる理由を探りたい。

2.ライブ配信とは

ゲームライブ配信とはその名の通りゲーム画面をキャプチャーしてその映像をリアルタイムでYouTube liveやtwitchなどの配信プラットフォームを利用し視聴者に配信するサービスのことで事前に撮影し編集した英ぞを配信するオンデマンド配信とついになる配信方法である。これはテレビの生放送と同様の手法であり臨場感や一体感を配信者と視聴者が共有する感覚や相互性が人気となり、2017年頃から急成長を遂げている。以下のグラフを見てわかるように若年層を中心に配信を視聴知る人が過半数を超えていることがわかる。

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三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2018)の調査によるとライブ配信動画の視聴ジャンルでは「ゲーム実況」が37.8%(n=468 複数回答有)と全体の4割を占めており回答数が一番多く、ライブ配信者がライブ配信で発信している内容では「ゲーム実況」が32.3%(n=300 複数回答有)と全体で3番目に回答数が多かった。

配信内容の上位には旅行やトーク、食事の内容や様子などがあるが旅行には金額や時間が多く掛かりその上継続性において難しく、トークはその人自身のスキルが高いかそうでないか、食事は実際の作っている風景や食べている様子などを映す必要があり不特定多数に個人情報が漏洩してしまうなどのリスクがある。それに比べゲーム配信は1度機材を揃えるだけで継続して配信することができ、さらにトークのみの配信と比べゲームのプレイ画面があることでゲームをメインで配信していればトークスキルもそこまで要求されることはなくゲーム画面のみの配信にしていれば映像による個人情報の漏洩のリスクは限りなく低いと言える。このことからゲーム実況はライブ配信の中でも初心者が手をつけやすくなっていると考えられる。

3.ゲームの面白さとは

細木・三木(2020)「コンテンツビジネスの未来 第五回 オンライン配信時代のコンテンツビジネスモデル」に記載されているようにゲームのジャンルは大まかに「思考系」「反射系」の二つに大別され下記のようになる。思考系とは思考を比較的多く要するゲームで操作の難しさが少ないゲームで、反射系とは思考を比較的要しないゲームで操作が難しいゲームである。

「思考系」
  ロールプレイングゲーム(RPG)
  シミュレーションゲーム(SML)
  テーブルゲーム(TBL)
「反射系」
  アクションゲーム(ACT)
  格闘ゲーム(FTG)
  アドベンチャーゲーム(ADV)
  シューティングゲーム(STG)
  レースゲーム(RCE)
  スポーツゲーム(SPT)
  パズルゲーム(PZL)

さらにゲームには「情緒的なベネフィット」があるとされ下記のように整理できる。

①爽快感
撃ったり、斬ったり、ノックアウトしたりと敵を叩きのめした場合にえられる快感。
②上達感
自分の技量が向上することの喜び。
③達成感
複雑なシナリオをクリアし、スキルアップを図り、エンディングを迎えた快感。いわゆる 「あがり」感。
④バーチャル体験
現実では困難な仮想体験
⑤自己投影感
ゲームの主人公へ自己を重ね合わせることで抱く一体感。主人公が強くなることで、主人 公を通して上達感や達成感も得られる。
⑥操作感
コントローラーを操り、それを通して自在な操作といった楽しみ
⑦優越感
勝つ心地よさ。友人より早く上達し、エンディングを迎えたことによる快感自慢といった喜び
⑧収集
ゲーム内のアイテム等のコレクション

上記を表にまとめたものが下記の表となる。

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Apexのようなバトルロイヤルゲームはシューティング・アクションゲームであることから表2のオレンジで色付けされているベネフィットがあると考えられる。特に上達感、操作感においては強く答えることが出来ている。何度も戦うことで戦略の幅や射撃や判断の速さ正確さが改善され、1度死ぬまでに何人キルできているかのキルデス比率と言われるものが上がることで自らの上達感を味わうことが出来る。操作感においてはキャラクターの動かすという点や銃を構える、しまう、打つ、スキルを使うなどにおいて強く感じることが出来る。加えて武器やキャラクターのスキンも豊富にありそれがイベントでポイントを貯めることで配布されたりガチャによって排出されることで上の表における収集という項目のベネフィットについても応えることがことができる。

さらに、オンラインゲームにはコミュニケーションとコミュニティでの仲間意識と爽快感というベネフィットが新規に出現している。コミュニケーションと、コミュニティでの仲間意識で求められることはユーザー一人一人に応じた満足度の提供である。

Apex LegendsはRedditのスレッドを利用することで運営者に意見を伝えたりディスカッションができることより多くのユーザーの意見を取り入れることが可能になっている。爽快感では1つ目にアクションの部分つまりキャラクター操作で、いわゆるキャラコンと言われる要素である。これはスライディングジャンプと言われるキャラクターの移動速度が少し早くなったり壁ジャンプと言われる行動距離が伸びるもの、弾除けと言われる敵が打ってきた弾を避け被弾を抑えると言ったようなもの等の動きによるものがある。

2つ目はシューティングゲームの要素である。これはシンプルに敵との銃撃戦に打ち勝った時や、バトルロイヤルゲームだからこその要素である「漁夫」と呼ばれる戦闘中の敵に対し奇襲をしかけること。これにより戦闘中のパーティーを殲滅した時など戦闘面において感じることの出来るものである。
以上のことからプレイするユーザーの求めるベネフィットに多く応えられていることからApex Legendsは「面白いゲームである」と言える。

配信を見る側のユーザーにとっては試合を通してスポーツ観戦のように操作しているプレイヤーと一心同体となり戦闘に没入することができ、戦闘の内容や試合結果についてコメント欄で盛り上がることが出来る。特に試合終盤に多くのチームが残った時の最後の派手な戦闘や、配信者以外の味方が死んでしまい1人になった時に敵が多数残っており不利な状況から1人で近くにいる全ての敵を倒した時、魅せプレイと呼ばれるようなスーパープレイが出た時などにおいては特に盛り上がる。他のバトルロイヤルゲームのキャラクターよりスピードが早いかつ、少なめの60人であることにより試合がスピーディーに進むことも視聴者にとっては良い要素である。

さらに競技シーンと言われるプロのプレイヤーが配信していたり技術が高いプレイヤーが配信しているとその技術をレクチャーもしくは見て盗むこともでき、逆に技術が乏しいプレイヤーでもコメント欄でプレイについてサポートを得ることができたりプレイしていてもしていなくも配信を見るということが楽しめる。

4.配信の盛り上がり

ゲーム内での特徴ではないが、Apex Legendsはゲームの配信の仕方が他のゲームに比べて特徴的である。通常ゲームを配信する前には何かしらの広告などで宣伝することが一般的であるが、Apex Legendsは配信開始数日前にロサンゼルスで非公開イベントを開催して、人気配信者とコンテンツ制作者、メディア関係者にゲームを紹介し2019年2月4日に世界に向けてサプライズで配信をするという異例の配信方法をとった。話題性もあってか配信8時間後にはプレイヤー数が100万人に到達し3日後には1000万人、24日後には5000万人に到達した。

Apex Legendsの配信においてよく目にするのはVTuberやプロゲーミングチームのストリーマーなどである。ここで取り上げたいのは配信者たちが中心となって参加している大会「CRAZY RACOON CUP」(以下CRカップ)である。CRカップはプロゲーミングチームCrazy Racoonが主催のApex Legendsの大会で現在までに5回開かれており初回から同時接続数が10万人を超える大会となっている。CRカップではApex Legendsのランクマッチのランクやプロが参加する場合は主催者によってポイントが割り振られ3人のポイントの合計値が設定されているポイント値以内でチームを組むことが前提とされ、あまりに強い場合は主催者から別の制限が課されたりもする。またある条件を満たせば減点されるなどのシステムもありチーム組からも楽しめる大会になっている。

チームを組んだ後にはもちろんチームごとの練習配信があり、1チームに1人プロゲーマーなどのコーチを付けプロの大会と同じような練習が行われている。また本番までにスクリムと呼ばれる大会練習が行われる。CRカップほとんどが一回きりのチームであるためこのスクリムも配信で行われリスナーはプロの大会の練習を見ているような体験ができ、大会本番までを自分の応援しているチームと一心同体で進んでいき本番では大会特有の緊張感や熱気、感動を共有することができる。

最新の第五回では公式配信のみで77439人が視聴するなどライブ配信における人気コンテンツである。さらにVTuberのみが参加できる大会VTuber最協決定戦では同時接続者数が22500人であり配信のコンテンツとして人気である。

5.最後に

Apex Legendsはゲームとしての面白いことはもちろん、従来のバトルロイヤルゲームと異なるリリース方法やゲームのシステムを開発したことですでに世に出ているバトルロイヤルゲームの二番煎じになることなく別のゲームとして確立されてる。

またApex Legendsのpingシステムはソロプレイヤーに対し必然的に求められるチームプレイをサポートするためにほかのゲームタイトルが参考に導入を検討するまでになった。それほどまでにユーザーから好評を得ていることやredditで直接開発者とディスカッションができることからゲームをプレイするユーザーが求めるベネフィットが存在していた。

またプレイしていなくても配信者が中心の大会の配信などで一緒に楽しんでいる人が多いことがわかった。よってApex Legendsは人気である。

(参考文献)

EA(2021)「エーペックスレジェンズの2年間を振り返る」
https://www.ea.com/ja-jp/games/apex-legends/news/two-years-of-apex-legends
2021年6月13日

gamespark(2020)「チョイス「あなたはボイスチャットを…使う?使わない?」結果発表」
https://www.gamespark.jp/article/2020/10/17/103081.html
2021年6月13日

culutured vultures(2019)「Fortnite “Borrows” Apex Legends’ Pinging System」

https://culturedvultures.com/fortnite-apex-legends-pinging-system/
2021年6月13日

配信技研(2021)「配信技研NEWS:日本ゲームカテゴリ2021年5月ライブ配信視聴ランキング(タイトル)」
https://www.giken.tv/news
2021年6月15日

三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2018)「ライブ配信サービス(投げ銭等)の動向整理」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/policy_coordination/internet_committee/pdf/internet_committee_190117_0002.pdf
2021年6月15日

野島美保(2005)「第五回 オンライン配信時代のコンテンツビジネスモデル」赤門マネジメント・レビュー4巻10号479-494ページ
2021年6月15日

渋谷ハル(2019)twitter
https://twitter.com/ShibuyaHAL/status/1117440831890149376?s=20
2021年6月15日

mildom(2021)「第五回Crazy Racoon Cup Apex Legends」
https://www.mildom.com/playback/10115448/10115448-c2fmet8oiiboem0ocjg0
2021年6月15日

CR(2020)「CRCUP APEXLEGENDS 初開催で最大同時視聴者数:11万超」
https://crazyraccoon.jp/%e3%80%8ecrcup-apexlegends%e3%80%8f%e5%88%9d%e9%96%8b%e5%82%ac%e3%81%a7%e6%9c%80%e5%a4%a7%e5%90%8c%e6%99%82%e8%a6%96%e8%81%b4%e8%80%85%e6%95%b0%ef%bc%9a11%e4%b8%87%e8%b6%85/
2021年6月15日

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関西大学 羽藤雅彦/羽藤ゼミ
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