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パクりといわれたゲームの反撃
1.原神とは
原神は中華人民共和国上海市に本社を置くmiHoYoによって開発されたアクションロールプレイングゲームである。別の世界からやってきた旅人(主人公)として、自分探しの旅へと出発し、失われた兄妹との再会を目指す波乱万丈な冒険の旅である。また、7つの元素(風・炎・水・氷・雷・岩・草)による力を巧みに操ることで、難解な謎を解き、強敵を打ち倒すこができる。キャラクターは20人以上おり、一人ひとり豪華声優が声をあてている。原神は、Google Play ベスト オブ 2020でユーザー投票部門 優秀賞、ベストゲーム2020を受賞した。さらに、Apple Design Awardsでビジュアルとグラフィック部門を受賞した。今回は、原神がなぜ人気が出たのかについて調べる。
2.5Aを用いた分析
1)5A
原神のヒット分析をするうえでは、コトラーが提唱した5Aという枠組みが有効である。
認知(AWARE)
・従来からのカスタマージャーニーの入口。他者から聞かされたり、ブランドの広告を見たりすることで、認知されます。
訴求(APPEAL)
・顧客は認知したブランドの中から、自分にとって好ましいと思う少数のブランドだけに引きつけられた状態です。
調査(ASK)
・顧客は引きつけられたブランドの中から、魅力を感じたブランドを調査します。調査段階で詳しい情報を手に入れたら行動へ進んだり、購買行動を伴わない場合でも、推奨へ進んだりします。
行動(ACT)
・購買行動だけではなく、消費や使用はもちろん、アフターサービスを通じた
コミュニケーションも行動に含まれる。
推奨(ADVOCATE)
・顧客にブランドに対する強いロイヤリティが芽生え、熱心な推奨者は大好きなブランドを自発的に他者に推奨し伝道者になる段階です。
2)原神と5A
5Aという枠組みを使って、原神について分析を行う
認知(AWARE)
・原神はパクリゲームといわれ、リリース前から話題があった。また、東京都にある17の駅で広告掲出を実施した。さらに「原神」のキービジュアルをラッピングしたアドトラックが都内を走行した。
訴求(APPEAL)
・個性豊かなキャラクター豪華声優陣のフルボイスである。ゲーム内のBGMは、オーケストラによる演奏である。美しく柔らかなグラフィックである。
調査(ASK)
・YouTubeやSNSなどで、実際に体験している人の動画を見る。アップストアなどで評価やレビューを見る。
行動(ACT)
・実際にアプリを入れ、体験する。
推奨(ADVOCATE)
・新しいキャラクターやイベントを追加していく。SNSでの消費者の投稿を狙う。
3)推奨 クチコミ
5Aの中でも、推奨が大切だと考えました。なので、クチコミの動機と機能に注目しました。
「クチコミの促進要因に関する先行研究の整理と今後の研究課題」という論文では、臼井(2014)によると、オンライン上のクチコミの動機は、「ネガティブな感情の発散」「他の消費者への配慮」「自己高揚」「アドバイス探索」「社会的便益」「経済的インセンティブ」「プラットフォームの手助け」「企業を支援」の8つである。あるゲームでは、レビューをすることで報酬を貰えるなどがある。しかし、原神は報酬が貰えるわけではない。なので、クチコミの動機は、「自己高揚」「アドバイス探索」「企業を支援」であると考える。
「サービス商品の選択・評価におけるクチコミの機能」という論文では、長嶋(2009)によると、クチコミの機能は5つに分かれる。ここでは、クチコミがもたらす機能が原神にどんな影響を与えているのかを述べる。
1.クチコミの意思決定推進機能
実際にクチコミを重要な情報源として利用している
原神:App Storeでの評価とレビューやSNSを見る
2.クチコミの期待値形成機能
クチコミを見ることによって、期待値を適正に形成しようとする
原神:実際に体験した人による評価とレビューを見る
3.クチコミの評価軸付加機能
顧客が従来から持っていた期待や実際の評価軸に、新たな軸を付け加える
原神:自身が持っいる情報に付け加えて、実際に体験した人による評価とレビューを見る
4.クチコミの実際値修正機能
期待を大きく上回ったり、大きく下回った時に、クチコミで確認する
原神:画像のように、App Storeのレビューで書く。公式Twitterにリプライをする。
5.クチコミによる改善要望機能
クチコミによって改善の要望を伝える
原神:画像のように、App Storeのレビューで書く。公式Twitterにリプライをする。
このように、クチコミの動機と機能には繋がりがあることがわかる。クチコミをする要因は、報酬があると考える。しかし、原神は報酬がないため消費者にとってメリットはない。なので、クチコミを行う動機は「自己高揚」「アドバイス探索」「企業を支援」である。消費者がクチコミを行うことで、そのクチコミの機能が働く。特に、「クチコミの実際値修正機能」では、始めようとしている人にとって有効である。
3.原神
1)ビデオゲームを構成する4つの因子
「コンピュータゲームの特性と楽しさの分析」という論文では、山下ら(2004)によると、ゲームの構造に関する因子を4つ、「RP・シナリオ性」「仮想性ー現実性」「運動型ー思想型」「キャラクター普及型ー機器普及型」に分かれる。さらに、ゲームの与える心理的影響に関する因子を5つ、面白い・楽しい・好きな「ゲーム本来の楽しさ」、スピード感のある・爽快な「感覚運動的興奮」、迫力がある・感動的な・冒険的な「設定状況の魅力」、心が和む・癒される「和みと癒し」、頭脳的な・難しい「難解・頭脳型」に分かれる。
2)各クラスター
上述の因子の組み合わせに応じて、買うゲームをいくつかのクラスターに分類することが出来る。山下ら(2004)では、5つのクラスターが提示されている。それぞれ確認したい。
・ファンタジー型
PR性、シナリオ性が高く仮想世界におい て展開し,思索を要して比較的長い時間をかけてプレイするようなゲーム。「設定状況の魅力」「和みと癒し」の因子得点の平均値が高い。
・映画型
PR性、シナリオ性が高いが、現実に近い世界において展開し、リアルなグラフィックを持つ。「設定状況の魅力」の因子得点の平均値が高い。
・現実活動型
PR性、シナリオ性は低く、現実に近い世界において展開し、遠い反応を要するようなゲーム。「感覚運動的興奮」の因子得点の平均値が高い。
・キャラクター型
PR性、シナリオ性は低く、仮想世界において展開し、さらにキャラクターが普及しているようなゲーム。「ゲーム本来の楽しさ」「感覚運動的興奮」の因子得点の平均値が高い。
・シミュレーション型
現実に近い世界において展開し、思索を要して長時間かけておこなうようなゲーム。「難解・頭脳型」の因子得点の平均値が高い。
原神は、ファンタジー型といえるだろう。ファンタジー型は、「設定状況の魅力」「和みと癒し」の因子得点の平均値が高い。「設定状況の魅力」では、迫力がある・感動的な・冒険的な・幻想的な・きれいな・リアルな・登場人物になったような・創造的なである。原神は、ビジュアルとグラフィック部門で受賞したので、幻想的な・きれいなに当てはまる。さらに、別の世界からやってきた旅人である自分自身が主人公なので、登場人物になったような気持ちになる。「和みと癒し」では、心が和む・癒される・明るい・身近なである。キャラクターが可愛いことで癒しを与えていたり、時間によって明るさが変わるなど当てはまる。ストーリーはフルボイスでシナリオ性は高い。原神のように、RPGは多くある。原神は、グラフィック、フルボイス、ストーリーといった点で他よりも優れていると考える。
4.まとめ
原神はリリース前から「ゼルダBotW」のパクリゲームではないかと注目を浴びていた。実際に体験したことで、「自己高揚」「アドバイス探索」によってクチコミを行ったではないか。なので、クチコミは原神が促したわけではなく、消費者自身がプレイ体験を書きたいと思ったのではないか。
原神とゼルダBotWはゲームスタイルが似ているところが多くある。原神はゼルダと同じでオープンワールドゲームであり、ファンタジー型である。ゼルダは、原神がリリースする前から人気があった。なので、原神も人気が出たのではないかと考える。また、原神は無料でダウンロードができる。無料でこのクオリティは他のゲームではないと考える。
原神がヒットしたのは、誰もが体験することができるオープンワールドゲームであったからと考える。
参考文献:
Google Playチーム Google Japan Blog https://japan.googleblog.com/2020/12/playbestof2020.html?m=1 2021年6月15日
原神——冒険に満ちたブランニューワールドへ (mihoyo.com) 2021年6月15日
都内の駅に掲出された『原神』広告をすべて撮影! 探しにくい駅や掲出場所をお届け - 電撃オンライン (dengekionline.com) 2021年6月3日
マーケティング4.0の5Aカスタマージャーニーマップを学ぼう (pkmarketing.jp) 2021年6月15日
長島広太(2009)サービス商品の選択・評価におけるクチコミの機能 ― ホテルサービスの場合 ―291345719.pdf (core.ac.uk) 91ー108ページ
臼井浩子(2014)クチコミの促進要因に関する 先行研究の整理と今後の研究課題 Marketing Journal Vol.34 No.1 (jst.go.jp) 158ー169ページ
山下利之・清水孝昭 ・栗山裕 ・橋下友茂(2004)コンピュータゲームの特性と楽しさの分析_pdf (jst.go.jp) 349ー355ページ
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