旅ガチャが若者を中心にヒットした理由
はじめに
私たちは、今年ヒットしたランキングからPeach (ピーチ)が取り組んでいる「旅行ガチャ」に焦点を置き、“なぜヒットしたのか”マーケティングを使って調べることにした。
Peachとは
2012年3月に就航した、全く新しい概念をもった航空会社。コンセプトは「空飛ぶ電車」で、航空業界の不可能を可能にしながら、日本の航空史上最速のスピードで次々と路線を展開、事業拡大をしている。(国内線:31国際線:17 2022年12月時点)
圧倒的な低運賃で誰もが気軽に移動できるようになることで、「人と人との出会いが、そこから生まれる感動や笑顔であふれる世界をつくることが私たちの夢です。」と公式サイトに記載されていた。
ここからはPeachと国内に就航している航空会社(ANA、JAL、スカイマーク、 ソラシドエア、エアドゥ、ジェットスター)との比較を述べていく。まずここで重要となってくるのは、サービスの充実さと料金だ。各航空会社には(FSC・MCC・LCC)と3つ種類に分類される。(表1)
FSC(フル・サービス・キャリア)とは、値段が高い分ほとんど全てのサービスが充実している。預入荷物の重量も20㎏以上のものが多く機内サービスも無料で行ってくれる。国際線だと乗っている間にモニターで映画などを楽しむことが出来る。スタンバイ機を持つことで飛行機の遅延や欠航にならないようにしているので、急いでいる時やビジネスで利用することが多い。
MCC(ミドル・コスト・キャリア)とは、LCCより高いけれどFSCよりも安く航空券が手に入り、安さと快適さのバランスが良い。預入可能な荷物の重量も充分で座席も広く中にはFSCより快適なものもある。座席にはモニターがある航空会社もある。FSC・LCCとの差がハッキリと分からないのでこれと言った特徴は航空会社によってそれぞれ違う。
LCC(ロー・コスト・キャリア)とは、なんといっても料金が安いことが特徴!その分、荷物や座席指定などのサービスが有料のものが多い。24時間フライトを行っていて時間を選ばないが、成田空港や関西国際空港など主要の一次空港とは違い、伊丹空港などの二次空港を使うので都心へのアクセスは少し不便。また、スタンバイ機を持たないので天候や災害によりどこかの空港で飛行機が足止めになった場合、代わりに飛ばす飛行機が無いので、欠航になることが多く遅れに弱い。台風シーズンの沖縄から飛んでくる予定の飛行機や冬の東北エリヤから飛んでくる飛行機の航空券を選ぶ時は欠航になったりしても変更が出来なかったりキャンセル料が高かったりするので、遅延補償や欠航の補償も一緒に購入しないといけない。機体が小さい分シートも狭い。サービスはあまり良くないが、国内を少し移動するぐらいや近い国への移動の場合にLCCはとても便利。PeachはこのLCCにあたる。
PEACH『旅くじ』とは
2021年8月に発売された。くじのカプセルの中には行先とミッションが入っており、偶然に身を任せて、スリルある新しい出会いを楽しむというものだ。料金は1回5,000円で6,000円分もしくはごくまれに10,000円分のピーチポイントと交換してもらえるというものだ。時期によってポイント数が変動することはなく、航空券の購入のタイミングによっては片道でも追加料金が必要な場合があったり、往復分が賄えたりする場合がある。ポイントで付与されるため、ポイント有効期限までに航空券を購入すればよい。支払方法は、旅くじ自販機はPayPay決済のみである。
SWOT分析
実際に「SWOT分析」を用いて旅くじの市場分析を行うことにした。
「SWOT分析」とは、Strength(強み)Opportunity(機会)Weakness(弱み)Threat(脅威)の4つの要素から分析を行うマーケティングフレームワークである。
まず強みは、行き先が決められないためワクワク感があることである。また、5,000円という安い価格で旅行に行くことができ、ポイントを獲得することができる点も強みであると考える。他の航空会社は、平日と祝日によって価格が変動するが、旅行ガチャは開始当時から値段の変動がないため、いつでも気軽に利用することができる。
次に弱みは、販売場所が少なく支払方法が限られる点にあると考える。実際に旅行ガチャが設置されている場所は、東京・大阪の2か所である。そのため、ガチャを行いに来る人達も限られることになるだろう。支払手順は、東京ではPayPay決済、大阪では紙幣のみと指定されている。
次に機会は、コロナが落ち着き、旅行の需要がアップしたことにあると考える。旅くじが始まったのは2021年8月であり、ちょうど感染者数が減少傾向にある最中であった。そのため、旅くじは今まで外出できなかった人たちにとって、気軽に旅行先を選ぶことができるよいコンテンツとなったのだと考える。また、SNSを通して広まった話題性が人々の興味を引き寄せたのだと考える。コロナで外に出ることができない人々にとって、SNSは日常生活の中でより一層欠かせない存在になった。そのため、「ガチャで旅先を決める」という今まで聞いたことがない取り組みの情報が、多くの人々に届いたのだろう。
最後に脅威は、ライバル社の格安キャンペーンである。旅くじを運営している企業はPeachという日本初の格安旅行会社であるが、このPeachのライバル社は主に、 「JTB」などのその他の格安旅行会社である。旅くじとの違いとして、その先々の魅力がまとめられた冊子から行き先が選べるということと、ホテル代が含まれているということがいえる。そのため、プランを計画することが苦手だという人は旅行会社を選ぶことが多い傾向にあると考えられる。さらに、社会状況も大きな脅威である。現在、落ち着きつつあるコロナウイルスだが、さらなる流行によっては利用者にとって旅行に行くことが困難になり、大幅な売り上げ減少が予想される。
この4つの項目のうち、私たちは「機会」の中でも利用者が自ら発信するSNSが、ヒットしたきっかけの最も大きなポイントになっているのではないかと考えた。
デジタル社会のカスタマージャーニー
SWOT分析からヒットした理由としてSNSに注目し、5A分析を行った。5A分析とは、デジタル社会のカスタマージャーニーであり、
認知(広告や口コミで知る)
訴求(ブランドに引きつける)
調査(評価、評判を調べる)
行動(店舗やECサイトで購買する)
推奨(SNSなどで情報共有する)
の5つから調べるものである。
実際に旅行ガチャを5A分析する。〈認知〉には Peach が認知活動のために発信しているSNSとしてYouTube・Twitter・Instagram・Facebookを使用している。さらに、旅くじ利用者が自ら発信するTikTokがあげられる。中でも顧客が実際に体験したことを発信しているTikTokが一番大きな影響を顧客に与えていると考えられる。旅くじの〈訴求〉として『行き先を選べない旅、してみませんか?』というキャッチコピーのインパクトが顧客の関心を引き寄せているのではないかと考える。〈調査〉の方法としてもやはりSNSを使用している人が多く、特に実際の利用者があげている投稿や配信、口コミなどを通じて調査する人が多い。〈行動〉として実際にくじが設置されている東京のサンエー 浦添西海岸パルコシティ や大阪の心斎橋PARCOへ行き、くじを引く。さらに、2022年11月16日から沖縄での販売が開始されているため購入者が増加すると考えられる。最後に〈推奨〉として、利用者が自ら体験したことをInstagramやTikTokで投稿・発信する。
この5A分析を通して、〈推奨〉が旅くじのヒットした1番の理由であると考える。
考察
Peach自体SNSを利用して旅くじの詳細を宣伝しているものの、そこまで顧客に対して目立ったアピールが見られなかった。この背景として、旅くじを企画した小笹さんによると、当初旅くじは1日に1個売れればいいという考えだったそうだ。そのため、SNSでの活動がそれほど見られなかったのだと考える。しかし、実際にPeachが取り組んでいる旅くじを使用した顧客が、自身のSNSを用いて発信したことで、今まで旅くじの存在に気付かなかった人たちの興味を一気に引き付けたのだ。このように、ヒットした理由は、実際に旅くじを利用した顧客が自らの体験のクチコミが大きな影響を与えたといえる。
分析結果からクチコミはどのように語られているのか : クチコミ動機と言語タイプの関係性について実証的考察(2012.03 安藤和代)を参考に人がクチコミを語る動機について調べた。すると、クチコミには6種類の理由があり、①生存本能 ②関係構築 ③緊張や不安の解消 ④自己呈示 ⑤状況理解 ⑥リスク・コスト・不確実性の低減であることが分かった。ここから、今回の旅行ガチャが当てはまるものは④自己呈示ではないかと考察する。自己呈示とは、知識の披露や知識をアピールすることである。 実際にクチコミを見ると、自身が行った場所の写真と共に、旅行ガチャについて好意的な感想が述べられているのが多く見られる。人々はこの投稿を見て、旅行ガチャの存在を知ることができる。このように旅行ガチャの存在を知った人々は興味を持ち、SNSを用いて調べ実際に利用する人が増加したのだ。
おわりに
マーケティング的思考を理解するためSWOT分析とカスタマージャーニーを行い、旅行ガチャはSNSによる利用者のクチコミの影響を大きく受けヒットしたといえる。
参考文献
1回5000円「旅ガチャ」なぜ誕生? SNSでの反響は「想定外」...仕掛け人が語る企画の狙い: J-CAST ニュース【全文表示】
ANA「ピーチ子会社化」で何が変わるのか。コードシェアは実施せず、バニラとの合併は「今後考えていく」 | タビリス (tabiris.com)
Peachの「旅くじ」 - 行き先を選べない旅してみませんか? | Peach Aviation | ピーチ (flypeach.com)
「旅ガチャ」がバズった理由。きっかけはSNSだった!規制緩和で旅行、観光、ホテル業界に新しいトレンド - カリスマめぐり (irohameguri-i.com)
旅ガチャ自販機設置場所や中身は?6000円以上のピーチポイント当たりもある? | Delicious-info
Peachについて | Peach Aviation (flypeach.com)
国内の全LCCの特徴・サービスを徹底比較!おすすめとANAやJALとの違いを解説 | スカイスキャナー (skyscanner.jp)
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