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大きな本棚を初めて買った。

憧れの、背丈より高い本棚を購入した。夫と一緒に組み立てて(わたしはネジ渡す係)、わたしの部屋に真っ白な大きな本棚がそびえたった。壮観!嬉しくて昨夜は空っぽの本棚を眺めて、幸福な気持ちに浸っていた。ここにこれから何でも入れられると思うと、無限の可能性があるような気がした。

とはいえ、空っぽのままだと買った意味がないので、とりあえず片っ端から四六判の本(B6サイズ、一般的な単行本)を放り込む。敢えて棚の高さを変えられないものを買った。これまでの経験上、可動棚を上手く活用できた試しがない。片づけが苦手なのに、変数を増やしてはいけないと悟ったのです。B6サイズまでしか入らない本棚なら、何を入れるかの選択肢は狭まる。その分、悩まず、さくさくと作業できる。

積んだままで取り出しにくかった本たちが、ずらりと背を見せて並んだ。頭の中がすっきりした。前々から部屋は自分の脳の延長だなと思っていた。デスクはワーキングメモリ。広いデスクを買うと思考の幅が広がる。モニタは感覚器。そして本棚は記憶を保管する大脳新皮質。記憶は倉庫の荷物のようにしまいっぱなしではない。思い出すたびに編集されていく。思い出せない記憶は、活用できないし、なくなったも同然だ。

本も、いつでも手にとれて、タイトルを見ることができて、どんな本があるかを認識できて、初めてわたしの「記憶」となる。

あんまり本をたくさん持たない主義なので、全部放り込んでもまだ空きが十分ある。B6サイズの本が400冊入るのだそうだ。物書きさんたちにとっては400冊なんてあっという間に埋まる冊数なんだろうけれど、この本棚の400冊は倉庫ではなく、有機的に血肉とする本にしたい。取捨選択して、読み終わっても残しておきたいお気に入りの本と、これから読むべき本、なりたい自分に向かうための本を並べて、わたしの脳を設計したい。

などと考えている時間が幸せ。

〈本日の小説活動〉
『最果てアーケード』小川洋子から「人さらいの時計」を読んだ。短編ひとつ読むのに10分もかからないのに、小説はわたしを遠い深いところへ連れて行ってくれる。やっぱり小説、好きだな。


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