養老先生のさかさま人間学
本の構成ははじめにで示されていますが漢字一文字に対してエッセイを書くということで成り立っています。養老先生流の生物学や脳科学の知見に基づくエッセイになっています。短い文章で読みやすく、なぜ生きているかどうなっていくのか(どうなってきたのか)考えさせられる内容です。
特に印象に残っているのは第七章の特別講演「変化するとき」です。方丈記や平家物語を引用して諸行無常を語っていたり、戦中戦後の体験を踏まえて価値観が一転してしまう様子を当時の東日本大震災から1年後の高校で講演されていたのが印象的で身につまされました。人間の個体も変化するものであって同じということはないのだ。自分と他人の間には生物的な違いがあって同じではないのだ。抽象化してしまって同じと捉え同一化して退化してしまうと言っているようにも捉えられました。youtubeでも他の人とは一線を画する視点を話しておられ帯にあるように養老理論の入門書というのは当てはまるように思いました。ちなみにこの本は広島県にあるぞうさん出版という世界で最も田舎にあるという地方の出版社から出されています。そこも共感しました。