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縦軸のコミュニケーション

「サマーフィルムにのって」っていう映画見ました?まだ見てない人は今すぐ見て!今年イチオシの映画。

時代劇を愛する女子高生が周りの同級生たちを巻き込んで映画を作る。ひと言で言うとそんな映画です。「みんなの青春、この夏の間だけ私にください!」。予告編でこのシーン見て「絶対面白いやつだ!」って期待してたら、その期待を上回って来たよ。

まず登場人物たちのキャラクターが魅力的。

座頭市の映画を見ながら「勝新、尊い~」と身もだえする主人公の「ハダシ」。「美しさなら市川雷蔵でしょ」イケメン好きの剣道部員「ブルーハワイ」。「時代劇も良いけど『時かけ』くらい読みなよ」SF好きでイケメン苦手な天文学部員「ビート板」。

その他、ライバルの映画部部長や男子生徒たちもキャラがハッキリしてる。

そして無駄なシーンが一個もない。何気ないセリフも全部意味がある。「映画部が作ってるラブコメ、セリフの8割が『好き』って言ってるんだよ。『好き』って言葉を使わずに好きな気持ちを伝えるのが映画でしょ」。こんな何気ないセリフも後で生きてくる。

前述した「『時かけ』くらい読みなよ」も「勝新、尊い~」も後々生きてくる。全部つながってる。

二回見て二回泣いちゃったよ。まんまとサマーフィルムに乗せられたよ。

この映画と「サイダーのように言葉が湧き上がる」と「子供はわかってあげない」を合わせて2021年夏の「三大青春映画」と呼びたい。いや、呼ぶ!呼んじゃう!勝手に呼んじゃう!

映画見た人は分かると思うんだけど、三本とも大まかな内容は、ほぼ一緒。

「女子と男子が偶然出会う」「好きなのかどうかよくわからない、なんだろ?この気持ち?ってモヤモヤする」「それが恋だ!と気づいて告白する」。このスリーコード。

王道だ!王道のボーイミーツガールだ。朝飯でいうなら「ごはん」「味噌汁」「鮭の塩焼き」だ。ごはんミーツ鮭だ。何度食べても美味いヤツだ。

しかも三本中、二本が「出会い頭に二人が偶然ぶつかる」という王道中の王道的出会い。相撲の立ち合いのような出会い方。残りの一本も「好きなアニメが偶然同じ」っていう、話が出木杉くん。

その王道の朝食にかけられるトッピング、つまりは「ふりかけ」の違いで三本の映画の味わいが変わる訳ですよ。この三本の映画の「ふりかけ」。何だと思います?

「サマーフィルムにのって」なら時代劇。「サイダーのように言葉が湧き上がる」なら俳句。「子供はわかってあげない」なら書道。

共通するのは「ちょっと昔のアイテム」。時代劇も俳句も書道も伝統的な文化。

時代劇を通じて過去と繋がったり、俳句を通じて認知症のおじいさんの昔の恋物語を知ったり、書道を通じて子供たちに教えることを学んだり。

それを見ながら思ったのが「あー!これって縦軸のコミュニケーションだ!」って事。

恋や友情は同世代との「横軸のコミュニケーション」。でも歴史や伝統に触れる事、未来を思う事だって「縦軸のコミュニケーション」だ。

映画の中でも「映画ってフィルムを通して過去と今がつながるんだよ」ってセリフが出てきたり「あたしに教える事なんて出来るかな?」「大丈夫、教わった事なら教えられるでしょ」ってやりとりがあったり。

「サイダーのように言葉が湧き上がる」の主人公は「横軸のコミュニケーション」が苦手。誰かに話しかけらるのが煩わしいから常に音のしないヘッドフォンをしてる。でも俳句を通じて過去の、会ったこともない作者と繋がる「縦軸のコミュニケーション」は得意。

コミュニケーション苦手って言うと「横軸のコミュニケーション」ばっかり意識しがちだけど、「縦軸のコミュニケーション」だったら得意な人たちも大勢いるんじゃないかな?どちらのコミュニケーションにも優劣はない。

そんな事を考えながら最近の自民党総裁選のニュースを見てたら「誰々は何々派閥に支持されてる」とか「誰々は実権を握る誰々に嫌われてる」とか「横軸のコミュニケーション」ばっかりでうんざり。

「失敗した過去をどう生かすか」とか「こんな未来を描いている」とか「縦軸のコミュニケーション」の話は全然出てこない。

狭ーい身内だけで「横軸のコミュニケーション」やってねーで、もっと「縦軸のコミュニケーション」出来る政治家、出てこいや!!

以上、昔は横も縦も前後も左右も、四方八方コミュニケーション音痴だった、元祖コミュ障男、金谷ヒデユキがお伝えしました。


金谷ヒデユキ

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