『映画大好きポンポさん』 3人の天才クリエイターの創作メソッド
『映画大好きポンポさん』という漫画があります。来年、映画化も予定されています。
この漫画を、初めて読んだときの衝撃は今でも忘れません。
脳の後頭部がジンジンして、前頭葉がゴリゴリして、頭頂部がキリキリして、脳の機能を100%フル活用してむせび泣き、感動している自分がいました。
とにかく面白すぎるので「いいから買って読め。」と、強くお勧めいたします。(無料でも読めるのですが、いいから買って読んでください。)
そして、2番目に抱いた感想は「この物語の続編は絶対に読めないんだろうな・・・」でした。
ですが、現在、『映画大好きポンポさん』は、4シリーズが刊行されています。
これは、あくまで私の妄想にすぎないのですが、ポンポさんがシリーズ化できたのは、2人の天才クリエイターが誕生したから。だと思っています。
この2人のクリエイター、実は「映画大好きフランちゃん」と現在不定期連載中の「映画大好きポンポさん the Omnibus」にしか登場していないのですが、この作品に於けるかなり重要な位置を占めていると思っています。
早速ですが、以下に、ポンポさんを含めた3名の天才クリエイターの特徴を紹介いたします。
ポンさん 天才クリエイター かわいい
キャロル 天才クリエイター かわいい
マー姉さん 天才クリエイター かわいい
要するに、3人とも天才クリエーターでかわいいのですが、3人の職能、および創作メソッドは、びっくりするほど異なります。
具体的にどう違うのか・・・あくまで私個人の解釈ですが、図にしてみましたのでご覧ください。
せっかくなので、キャラクターの魅力と合わせてご説明いたします。
ポンさん オールラウンド型ゼネラリスト
この漫画の中での彼女の一般的な呼称は「ポンポさん」なのですが、見出しに関しては敬意を込めて「ポンさん」と呼ばせていただきました。
ポンポさんは、1作目と、2作目以降で、大きく役割が変化したクリエイターだと思っています。
どれくらい違うかと言うと、2作目以降はこうですが・・・
1作目はこうです。
1作目、「映画大好きポンポさん」では、物語のファンタジックな部分・・・潤沢な資金。強力なコネクション。圧倒的な才能。ナタリーちゃん、そしてなによりジーン君との運命的な出会い。
これらの、偶然としては出来すぎているファンタジックな部分が、ポンポさんのその愛らしい容姿に、「銀幕の申し子」という一言が添えられて、ギュギュギュギュっと凝縮されています。
ラッピングされて、かわいく包まれている状態です。
ですので、そのバランスが崩れてラッピングが破れてしまうと、途端に夢が覚めてしまう。
1作目「映画大好きポンポさん」では、この部分がとにかく慎重に、それはもう慎重に描かれています。
・・・これ以上の言及は差し控えます。「いいから買って読め。」としか言えません。
さて、そんな1作目を受けて、2作目以降を作ろうとした場合、物語に新たなテーマが必要不可欠です。ポンポさんの立ち位置も変わらざるを得ません。
とはいえ、さらなる能力を詰め込める容量も、欠点で傷をつける耐久性も、この愛くるしいラッピングは持ち合わせていない。そう思っていました。
結果、「映画大好きポンポさん2」では、ポンポさん自身にとっても「盲点」と言える弱点が露見され、その部分を埋める物語として、見事に着地しています。
・・・これ以上の言及は差し控えます。「いいから買って読め。」としか言えません。
さて、前置きがものすごーく長くなりましたが、彼女の能力について、自分なりに説明していきたいと思います。
彼女の能力は「ネゴシエート」と「審美眼」です。
ポンポさんのネゴシエート(交渉能力)について詳細に描かれ始めたのは、「映画大好きポンポさん2」からです。
一作目では、ポンポさんは、ニャリウッドの中心人物のように描かれていますが、「2」でその前提条件がシレッとくつがえります。
ウェズさんが登場したからです。
描写から察するに、現在のニャリウッドというショービズの世界は、彼のスタジオが「中心」に鎮座し、ポンポさんが代表を務めるペーターゼンフィルムは「老舗」という地位に甘んじています。
そんなウェズさんに、「映画大好きポンポさん2」では頭を下げ、「映画大好きカーナちゃん」では、清濁併せ吞んだ、見事なネゴシエート術を見せつけます。
つまりは「ハッタリ」を使いこなすようになったのですが、この変化は、彼女がスペシャリストからは一歩退いて、俯瞰する役についたことを意味します。
私は「2」以降のポンポさんの方が圧倒的に好きです。敏腕プロデューサーとしての彼女の「詭弁」はもう本当に痛快です。
とにかく尊敬できます。こういった人物の元で、クリエイターとして思いっきり悪知恵を働かせてみたい。そう、思わせてくれます。
余談ですが、私は「感情は数値化できる」と思っています。というか、感情を自分専用の測定器で制御する事こそクリエイターの仕事です。
もうひとつの能力「審美眼」については、多くを語る必要はないでしょう。この一言が全てを物語っています。
これは、あくまで個人的な妄想なのですが、この言葉は比喩でもなんでもなく、ポンポさんには、瞳の中の輝きが「実際に見えている」のではないでしょうか。
彼女は、共感覚(シナスタジア)を持つ、ギフテッドなのではないかな? と思っています。
私たちは、ポンポさんの瞳を通した「奇跡の物語」を、漫画として楽しめる僥倖を得ているのだと思っています。
キャロル センス型スペシャリスト
私は、なるべくキャラクターに敬称をつけることにしているのですが、彼女だけは、敬意を込めて「キャロル」と呼び捨てにさせていただきます。
キャロルは、作曲家、いわゆる映画のBGMをつくる人なのですが、実際のところ、その才覚は劇中でほとんど描写されていません。
わかりやすいところでは、
ヒーロー映画の監督とケンカした。
作りたい映画を表現して、フランちゃんにつっこまれた。
くらいです。
やっぱり、音の無い漫画の世界で、音楽を語るのは難しいと思います。
ですが、彼女の天才クリエイターとしての実力を、これ以上ないくらい雄弁に物語ったコマがあります。
これです!
全然わかんないですか? はい。私も、ちょっとなにいってるかわかりません。
順当に考えると、キャロルが「シットコム風に登場する大物ゲスト」を予想しているシーンなのですが、彼女の脳内には、人物と共に旋律が浮かんでいるのだと思います。
キャロルは、そういった、言語化ができない天才クリエイターです。
マー姉さん 努力型スペシャリスト
この漫画の中での、彼女の一般的な呼称は「マーリンさん」なのですが、ここは敬意を込めて「マー姉さん」と呼ばせていただきます。
マー姉さんは、脚本家なのですが、明らかに努力型のクリエイターです。
ですが、彼女は、その努力を一切苦にしていません。むしろ、心の底から楽しんでいます。
彼女の生き様は、このページに全て集約されていると思っています。
劇中の描写から、彼女がブリオフィリア(本の虫)なのは明らかです。
と言うことは、つまり、
息を吸うように、本を読んで基礎能力を上げ続け、息を吐くように、脚本を書き上げることができる。
そういった脚本家なのだと思います。
流行り言葉を使うのならば「全集中・常中」の状態ですね。
また、彼女の才覚を示すシーンが、もう1コマあります。
これです!
要するに「シットコム風に大物ゲスト登場」のシーンを、ポンポさんに丸投げしているのですが、これは、このシーンに限っては、自分よりもポンポさんの方がいいシナリオが書ける。と確信しているためです。
私はこの、3人の天才クリエイターが存分に腕を振るっているこの1コマが、「映画大好きフランちゃん」の中で一番好きなシーンです。
そして、もうひとつ大事なシーンの説明を・・・
このコマは、マー姉さんの優しさが凝縮された素晴らしい1コマだと思っています。
映画スター、フランちゃんの歌声と共に、キャロルの才覚が世界中に知れ渡ったことでしょう。
100%の癒しで構築された「映画大好きポンポさん the Omnibus」
さて、ここまで長々と語ってきたように、私は、とにかく「映画大好きポンポさん」シリーズが大好きなのですが、一番読んだ回数が多いのは、もうダントツで「映画大好きポンポさん the Omnibus」です。
(次点が、フランちゃんの前半部分)
理由は、他のシリーズは感動しすぎるからです。
「映画大好きポンポさん」シリーズ4作品を最後まで読んでしまうと、毎回、脳の後頭部がジンジンして、前頭葉がゴリゴリして、頭頂部がキリキリして、脳の機能を100%フル活用してむせび泣き、感動してしまいます。
あきらかに寿命が縮んでいると思います。21世紀の「恐怖新聞」なのではないでしょうか。
そんなわけで、とにかくもう、脳の機能を100%の癒しでフル充電させてくれる「映画大好きポンポさん the Omnibus」が好きで好きでたまらないのです。
特に、第3話のマー姉さんのかわいさは最高です。あまりに尊すぎて筆舌に尽くし難いです。かわいい。
このシリーズは、もう本当に、すえながーく続けていっていただきたいです。具体的には「OL進化論」くらい。
余談になりますが・・・
私は、「ポンさん」「キャロル」「マー姉さん」の3人さえいれば、どんな物語も描けちゃうと思っています。
こちらの表にうっすらと書いてある「狂言回し」「説明役」「トリックスター」は、「映画大好きポンポさん the Omnibus」での、彼女たちの基本的な役割です。
ポンポさんは、キャラクターのプロフィール上、(指導者)という役回りに立つこともあるのですが、あくまで補助要素です。
ここまで書いて、ほとんどそっくりな作品とキャラクター達を見つけてしまいました・・・。
これです!
ちょっとなにいってるかわからない人は、こちらをご覧ください。(11巻くらいから立ち読みするのが手っ取り早いです。)
そして・・・「あわよくば買って読め。」
最後に
「映画大好きポンポさん」には、彼女たち3人の他にもたくさんの天才が登場します。
物語の真の主人公、ジーン君。
全てのシリーズのキーマン、コルベット監督。
THE伝説、ペーターゼンさんとマーティンさん。
(10数年後は)大人気バイブレーヤー(になるであろう)、マスター。
現在のニャリウッドの中心、ウェズさん。
まっすぐすぎる、銀幕スター、兼、新人監督レオンさん。
うつくしすぎる、銀幕スター、クリスティアさん。
ピュアすぎる、科学考証家、兼、新人脚本家デュラント君。
「当たり前だぜ」ダッジさん。
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ですが、キャロルとマー姉さんは、物語の中で「明らかに特別な位置」にいるキャラクターだと思います。
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「かわいい」からです。
よろしければ、こちらもご覧ください。