記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

『うわさのズッコケ株式会社』の感想を30年越しに書いてみた。

私は、小学生の頃に、ズッコケ三人組シリーズをリアルタイムで読んでいた、ど真ん中世代です。

今回、この記事を書くのは、ノートの『#読書の秋2020』で、『うわさのズッコケ株式会社』が課題図書になっていたからなのですが、読んだのはかなり昔なので、一度読み返してから感想文を書こうと思っていました。

ですが、図書館に行って表紙をしばらく見て、結局、借りずに帰ってしまいました。

理由は、今、読んだ感想ではなく、当時の記憶を辿って書いた方が、むしろ正直な感想が書けると思ったからです。

スッコケ三人組シリーズは、結構な作品数を読んだ記憶があるのですが、如何せん子供の頃の記憶なので、内容はほとんど覚えていません。

ただ、『うわさのズッコケ株式会社』だけは、結構ハッキリと内容を覚えています。
理由は、小学生の時に読んで、とても面白かったから。それと、高校生になってからもう一度読み返したからです。

とはいえ、小学生の頃から30年以上、高校からでも20数年は経過しているので、内容に一部誤りが生じている可能性がございます。

何卒、ご容赦ください。

ハチベエが楽して儲けようとする

このお話は、ざっくり言うと、楽して儲けようとして、結局、儲けることは大変だと悟る物語だと思っています。

物語は、ハチベエたち三人が海で釣りをしている時、近くに商店がないことに、不便を感じる所からスタートしたと記憶しています。

で、同じく、釣りをしている大人たちに、スーパーで売っていた特売品のジュースやコーヒーを定価で売りつけて、利鞘を稼ぎます。

このとき、ハチベエは「なんてちょろい商売なんだ」と味をしめて、スーパーで大量の飲み物と食べ物を購入して、大儲けを企みます。

今にして思い返すと、ハチベエは、ナメた根性しているヤツだと思います。

ハカセはヤベエやつ

で、調子こいた三人組は、釣りのオフシーズンの憂き目に遭い、大量の在庫をかかえてしまいます。

で、いろいろあって(すみません、詳細覚えてません)クラスメイトにお金を出してもらってその利益を還元する「融資」を持ちかけるのですが、このときのハカセの言い分を強烈に記憶しています。

要するに、株式投資の仕組みを分かりやすくクラスメイトに説明するのですが、この時、確か「確実に儲かる」と言っていたと思います。

今までの経験で、人のいる場所に適切なお店を出せば、確実に利益が出る事が実証できていると。

結局、クラスメイトはハカセの言うことを信じるのですが、子供ながらに

「こいつヤベエやつだ。」

と、思ったことを覚えています。

ハカセの言っていることは、まぎれもない事実なのですが、はっきり言ってしまうと、人のいる場所に適切なお店を出すことが一番難しいことです。
それを、さも簡単なことのように言ってのける。
しかもこの時、ハカセは、具体的なアイデアを持ち合わせていなかったと記憶しています。

大人になってから、ハカセのこの行動に『詭弁』という適切な単語があることを知るのですが、このシーンはとにかく衝撃でした。

名前を忘れた少年に共感する

で、なんだかんだあって、ハチベエは、ラーメン屋の息子(すみません名前は忘れました)を勧誘して、モーちゃんの姉が通う高校の学園祭に、ラーメン屋を出店して負債の回収を見込むのですが、私は、このラーメン屋の息子(名前は忘れた)に、とにかく共感したのを覚えています。

その名前を忘れた少年は、ラーメンに「結構お高いお値段」をつけて販売をします。

自分が創ったものを、お客さんの前に提供して、評価される。

このクリエイティブな行為に、無茶苦茶興奮したのを覚えています。

私は、高校生の頃、週刊少年ジャンプの『ジャンプ放送局』という、読者投稿コーナーに投稿していたのですが、なかなか採用されず、悔しい思いをしていました。

結局、100枚近く投稿して、ようやく1枚採用されました。
掲載されたネタは、面白おかしい三段オチを書く「路傍の立札」というコーナーだったのですが、絶対に掲載されないだろうというネタが、週刊少年ジャンプに載っていました。

 「たま」で思い出すもの。
   一、ねこの名前。
   一、バンドの名前。
   一、「金」。

このネタが掲載された週刊少年ジャンプを目にした時、もう、顔から火がでるように恥ずかしかったのを覚えています。

「こいつは、いつもこんな下品な下ネタを考えるようなヤツ。」

そう思われるのではないかと、投稿した事を激しく後悔しました。

とはいえ、一度雑誌に載ってしまったネタを、取り下げる事はできません。そのときに私は痛感しました。

「創る」と言うことは、他人の目にさらされること。
そして創ったものが一度世に出てしまうと、弁解も弁明できない「覚悟」を持たなければならないこと。

私は、冒頭でお話しした通り、『うわさのズッコケ株式会社』を、高校生の時に読み返したのですが、それがちょうど『ジャンプ放送局』に、投稿をしている頃でした。

自分の創ったものが「他人の批評にさらされる覚悟」を、勇気をもって受け入れている小学六年生の(名前をわすれた)少年が、とてもカッコよく思えたことを覚えています。

そして今でも、この(名前をわすれた)少年が、心の片隅に残り続けています。
ちょっと大袈裟な言い方になってしまうかもしれませんが、彼の生き様が、仕事を行う上での「挟持」になっています。

ほとんどの人の仕事を網羅している

『うわさのズッコケ株式会社』は、ズッコケシリーズ一番の人気作品と言われているのですが、その理由をちょっとだけ考察してみたいと思います。

楽して儲けようとして起業しちゃう、ハチベエ。
「事業計画」という名の詭弁をふりまいて、融資を無心するハカセ。
ムードメーカーという名の天性のネゴシエーター、モーちゃん。
ラーメンをお客に出す覚悟をきめる、(名前をわすれた)少年。
大口株主になりハチベエに詰め寄る、(名前をわすれた)少女。

そのほか、最終配当の少なさに文句を言ったり、出店の手伝いをしたり、物見遊山に徹したりと、クラスメイトたちは、ハチベエが興した会社に様々な形で関わります。

『うわさのズッコケ株式会社』というだけあって、この作品には、社会にある、あらゆる職種が描かれています。

私がラーメンを創る(名前をわすれた)少年に、強烈なシンパシーを感じたように、当時の読者は、登場人物のだれかに共感を覚えたのだと思います。

ハチベエに共感して、起業を目指す人。
ハカセに共感して、プロジェクトを成功に導く人。
モーちゃんに共感して、チームの輪を尊ぶ人。
ラーメンを創る(名前をわすれた)少年に共感して、創作に挑む人。
ハチベエに詰め寄る(名前をわすれた)少女に共感して、リーダーシップを発揮する人。

どの登場人物に共感するかは、人それぞれだと思うのですが、この本を「面白い!」と感じた人は、いずれかの登場人物に、自分を重ね合わせていたのではないかな・・・と思います。

ハチベエは真面目でいいやつ

最後に、ずっと悪口を言っているハチベエについてフォローさせてください。
文化祭に出店した屋台で、ハチベエ達が出店したラーメン店は、大人気店になります。

ハチベエは、皿洗い係を担当するのですが、とにかく大忙しで、洗っても洗ってもラーメンの丼が溜まっていき、最終的にはいいかげんに洗った丼をお客に出してしまいます。

このとき、自分の仕事に対してとても申し訳なさそうにするハチベエに、
「真面目でイイやつだな」
と、ホッコリしたのを覚えています。

いかんせん、30年越しの感想なので、妄想が創った美談の可能性もありますが・・・。

いいなと思ったら応援しよう!

かなたろー
最後までお読みいただき誠にありがとうございます。 サポート戴けたら、とてもとても喜びます。

この記事が参加している募集