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こんなにも、心の奥のあの場所に、触れられるなんて……/『ダンス・ダンス・ダンス』

実は数日前に読み終わっていたのだ、『ダンス・ダンス・ダンス』。


びっくりした。本当に、何も覚えていないんだもの…(まだ県立図書館に行っていた頃、10年以上前かな?  『村上春樹全作品 1979~1989』と『村上春樹全作品 1990~2000』を読みまくっていたんだよね。ちなみにこれには『自作を語る』という数ページだけの小冊子が付いている。これを読みたくて、今回も図書館から借りてしまった。←文庫本は持ってるのに)。

読んでたら、何かしら、どこかしら、絶対に覚えていると思うから、やっぱり読んでなかったのかなー?(いるかホテルや羊男は覚えてる。『羊をめぐる冒険』までは確実に読んだ)
結局最後まで、“完全なる新作状態”で楽しんでしまった(サイコー♡)。毎日少しずつ、時にぐんぐん、年をまたいで読み進んだ。体内&脳内通過。


そして、驚いた。
こんなことが起こるなんて……。
もちろん今までにも、同じようなことはあった。あの場所に“触れられる”感覚。近くまでなら、何度か味わったことがある(その場所に接近される感じ?)。
でも今回は、初めて、「ダイレクトにきたこれ、何これ⁇」と思った。思ったと同時に泣いていた。びっくりした。心が、ぐっと掴まれたような、やさしく撫でられたような……ひどく直接的な感覚、感触に、「わーわーわー‼︎」と思った。泣いた。そして “「こんなの初めて…」だよ、まさに「すごい」だし「すごかった」” だった。


(……うん。全然言葉が追いつかない。むしろ言葉にしたくない。たけどそれを丸ごと記録したい→する)


「癒された」でも「救われた」でも、なんか違う。嘘っぽい。薄っぺらい。
「触れられた」が、今の私には一番しっくりくる気がする。

触れられた――心の奥の、あの場所に。


泣きながら、驚きながら、観察して、感動して、でもなんだかものすごく悲しくなって(私はそんな体験、したことないから)また泣いて。


あの瞬間、私は “ユミヨシさん” だった。だから泣いた。
それと同時に、あの瞬間、私は “ユミヨシさんになりたい” と強く思った。焦がれた。だから泣いた。

大きくは、その2つ。あとのごちゃごちゃに混じり合ったものは、言葉にならない。言葉にしない。


そして『くちびるリビドー』の主人公にも、読ませてあげたいと思った。でも彼女はまだ26とか27歳だから、今の私のようには響かないかもしれないな。


そうして最後のところを何度も何度も読み返して、涙が出なくなって、数日経って(その間はもう読み返さないで、大切に、心の中だけで見つめて)、ふーーーっと落ち着いて、これを書く。書いている。

こういうことが起きるから、『物語』はやめられない。

だって誰が、こういうことを、目の前の「私」に与えてくれる?  見せてくれる??

残念ながら今の・これまでの私には、そういう出会いは訪れなかったから。
全部、『物語』を通して、出会ってきたから。知って(知ったような気になって)きたから。



『ダンス・ダンス・ダンス』――まさか今ここで、こんなところで、こんなふうに出会うなんて思ってもみなかった。
これはちょっと今の私には、あまりに「個人的」で、なのに「普遍的」な、「ものすごく特別な一作品」に躍り出てしまったな……。

“だから今”だったし、“まさかの今”だった。

嬉しいよ。最高の気分。ご褒美みたいな、私と物語だけとの間に起こる奇跡みたいな……魔法の瞬間。


受け取って、また生きる。

少しだけ、強くなったような、剥けたような気になって。



最後に。
例の『村上春樹全作品 1979~1989 ⑦ ダンス・ダンス・ダンス』の「自作を語る」によると、村上さんはこの作品を始終楽しみながら書いたらしいのだが、本当に、特に上巻の前半、スイミング・スクールから古代エジプト人への流れ(ファラオの一族、ジョディー・フォスター的クレオパトラ、マイケル・ジャクソン、暗闇、ビリー・ジーン、羊男)なんてもう、読んでいて笑っちゃうくらい楽しげなエネルギーに満ちていて、自由で、「あー、村上さん飛ばして(のりにのって)書いてるな♪(けどちょっと飛ばし過ぎじゃない? でもそこがいい。←本人も言っている)」って伝わってきて、なんかそういうのって勇気をもらうんだ。励まされる。



というわけで、次の物語は『羊をめぐる冒険』にしようと思っていたんだけど(すでに私は飢えている。日常的に摂取する物語に…)、本屋さんに行ったら下巻しかなくて、しかも二軒目もまさかの“下巻のみ”で(どっちの店にもこの前まではあったのにー。同じ時期に誰かが冒険に出たのですね。旅立ちの春近し、ですものね? なにより本が売れるということは世界にとっていいことだ♡)、これは“順番に読むべし”という宇宙?からのメッセージだな……と思った私は(どうしても手ぶらで帰りたくなかっただけ?笑)、素直に、柔軟に、とてもとても薄い『風の歌を聴け』を手に取って、連れ帰ってきましたとさ。

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けっこう最近も(とは言え数年前か?)図書館で借りて読んだ気がする、いったい何度目?の『風の歌を聴け』。ついに自分のものに……。
(☝︎シリーズ第一弾&デビュー作。Q. 確か、最初は別のタイトルだったんだよね?/A.「Happy Birthday and White Christmas」)


40周年って、すごいなー。
その間、ずっとおもしろい&新しいなんて、本当に尊敬する。心の師匠。きっと一生、読み続けていくのだろうな……何度でも。




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“はじめまして”のnoteに綴っていたのは「消えない灯火と初夏の風が、私の持ち味、使える魔法のはずだから」という言葉だった。なんだ……私、ちゃんとわかっていたんじゃないか。ここからは完成した『本』を手に、約束の仲間たちに出会いに行きます♪ この地球で、素敵なこと。そして《循環》☆