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vol.7-2 『異文化理解能力 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養』

異文化を比較する際、各文化を「絶対的な位置」から見るのではなく、「相対的な位置関係」で見ることが重要である。


エリン・メイヤー氏の『異文化理解能力 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養』で、一番重要な部分なのではないかと思うほど印象に残った部分である。


日本人が異文化を認識する際は、「〇〇文化は、『日本と比べて』〜だ」という視点になるということだ。


前回は、①コミュニケーション:ローコンテスト vs ハイコンテクストについて言及した。



今回は、以上の8つの指標の中から、②評価、③説得、④リードについて考察する。


②評価:直接的なネガティブ・フィードバック vs 間接的なネガティブ・フィードバック


直接的なネガティブ・フィードバック:同僚へのネガティブ・フィードバックは率直に、単刀直入に、正直に伝えられる。ネガティブなメッセージをそのまま伝え、ポジティブなメッセージで和らげることはしない。(中略) 批判はグループの前で個人に向けて行われる。
間接的なネガティブ・フィードバック:同僚へのネガティブ・フィードバックは柔らかく、さりげなく、やんわりと伝えらえる。ポジティブなメッセージでネガティブなメッセージを包み込む。(中略) 批判は1対1でのみ行われる。


前回考察した①コミュニケーションでも言及したが、ハイコンテクストな言語を持つ文化では、間接的にネガティブなことは伝えられる。


いわゆる「オブラートに包んで」伝えるのである。


最近の日本社会では、何にも考えなしの発言はパワハラやセクハラなど非難の対象になってしまう。

そのため、フィードバックはますます間接的に相手に伝わりづらく行われる。


私自身も、フィードバックを受けているはずなのに結局何について指摘されたのか分からず逆にモヤモヤするという経験をしたことがある。


私は外国人と共に働く環境にいるため、どちらかというともう少し直接的にフィードバックをしてもらいたい、またはしないといけないなと思っている。

日本は極端に間接的なネガティブ・フィードバックを用いている、と考えれば、自分が思う「直接的な」フィードバックは、相手にとってはそうでもない可能性がある。


そもそもフィードバックを行う際に気をつけなければいけないのは、相手の性格や人格についてではなく、あくまでも相手の行動に対しての改善点を述べるということである。

どのように伝えるかだけでなく何を伝えるのかも重要になる。


だから、伝え方ばかり気にして間接的なフィードバックになっている場合は、フィードバックの本来の目的とズレてしまっている可能性がある。

極端な間接的なネガティブでは、「結局何が言いたかったの?」となり、逆に相手の行間を読みすぎて不信感を抱かれるかもしれない。


自分に対する認識を得ることで、その認識は協力関係の向上に大いに役立つ。(p.104)


メイヤー氏がいうように、フィードバックの方法は上司と部下や組織の中できちんと認識し合うことが最善策であると思う。

私自身も、上司が間接的なフィードバックをしてくる、と思えば何を言わんとしているのか読み取る姿勢でフィードバックを聞くことができる。


どちらの方法が良い悪いではないが、誤解なくフィードバックを行うためには「認識の共有」が必須であることを学んだ。



③説得:原理優先 vs 応用優先


原理優先の思考法(演繹的思考):結論や事実を一般的原理や概念から導き出す(p.123)
応用優先の思考法(帰納的思考):現実世界の個別の事実を積み重ねることで普遍的な結論へと至る(p.123)


日本の教育では、原理優先の思考法が用いられている。


まずは公式や文法のルールを先に提示され、それをどのように用いるのか実際に練習することで、その原理や概念を理解していく。


そのため、最初の公式や文法ルールを忘れてしまうと、事実や結論を導くことすらできなくなってしまうのである。



私が子どもたちに英文法を教える際は、応用優先の思考法を生徒たちに求めている。

先に文法ルールを提示するのではなく、例文をいくつか見せた上で、何か「気づいたこと」はないか、と質問しながら文法ルールに辿り着かせる。


例えば、

What do you like to do?「あなたは何をするのが好きですか?」

What does he like to do?「彼は何をするのが好きですか?」


という2つの文から、どんな文法ルールが導き出せるだろうか。




「英語の文字でどんなところが違うかな」「日本語の意味はどこが違っているかな」などと問いを投げかけると、


「"do" と "does" が違う」「『あなたは』と『彼は』になっている」など様々な回答が出る。


これらの回答から、「じゃあどんな時に"do"を使うのか、"does"を使うのか」を立て再度投げかける。


そうすると、「『あなたは』の時に"do"、『彼は』の時に"does"を使う」ことが分かる。

文法用語でまとめれば、一般動詞の疑問文のルール(主語によってdoとdoesを使い分ける)について、例文から導かせたのである。



しかし応用優先の思考法は、原理や概念を導き出すまでにかなり時間がかかる印象だ (日本の教育方法と逆行しているからかもしれないが)。



それはなぜか?




「気づき」が足りないのだ。


先の例で言えば、例文が2つ並んだ際、どんなことにどれだけ多く気づくことができるかが、結論に辿り着くスピードに関係してくる。


さらに、「『あなたは』の時に"do"、『彼は』の時に"does"を使う」という結論に対して、「じゃあ "she"『彼女は』の時は "do"か"does"どちらを使うのか」という問いを立て、より抽象的な結論に辿り着くことができるだろう。



話が逸れていった気がするが、思考法が偏ると見えてくる物事の範囲も変わってきてしまう。

だから理想はどちらにも対応していることであると考える。

思考法を相手に合わせてばかりで、自分の思考も狭まってしまってはもともこもないと思う。


④リード:平等主義 vs 階層主義


平等主義:上司と部下の理想の距離は近いものである。理想の上司とは平等な人々のなかのまとめ役である。組織はフラット。しばしば序列を飛び越えてコミュニケーションが行われる。(p.159)
階層主義:上司と部下の理想の距離は遠いものである。理想の上司とは最前線で導く強い旗振り役である。肩書きが重要。組織は多層的で固定的。序列に沿ってコミュニケーションが行われる。(p.159)


『採用基準』(伊賀泰代 著・ダイヤモンド社)では、平等主義のグループが理想だとされているように感じた。

全員がリーダーシップを持つグループの方が大きな成果を出すことができる、旨を伊賀氏は何度も主張していた。




最近は、階層主義よりも平等主義が広がってきている気がするが、長く根付いた文化を変えることは難しい。


日本は階層主義であることを、またそれを一社員が変えられるほど簡単な問題ではないことを実感している。



平等主義が理想とされる風潮には、様々な社会や時代の変化が大きく関わってきていることを最近知った。


端的に言えば、自分がリーダーシップをとって何かに取り組めるような人でないと、21世紀を生き抜くことができないのだ。


21世紀を生き抜くためには、国や社会単位での文化を括りも超越して、個々の文化を作り出すぐらいの勢いが必要である。


メイヤー氏は、国単位での文化を考察していたが、それが基となって次は「個の文化」が生まれてくると思う。



本著を通して、「日本と比べて」という視点がかなり偏った位置づけになっていることがわかった。



グローバル化によって人々の価値観が往来するようになったこの時代に、なお一層、様々な文化に対する"perspective"「視点」を持つことは日本文化を背景に育った人たちに必須であるとまとめる。



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