時間切れ!倫理 50 墨家1
(ア) 墨子
戦国時代に一番大きな勢力を持ったのは儒家でしたが、それに対抗する勢力を持ったの が墨家でした。墨家の創始者が墨子。
(イ) 概要
面白いです、このグループ。平和主義です。戦争大反対です。軍事技術者集団です。この人たちは戦争が大嫌いですが、戦争をするのです。防衛戦争をする。たとえば楚という大きな国が宋という小さい国に攻め込む準備をしている。そういう噂を聞くと、墨家集団は、「宋国が責められそうだ、絶対に敗れてたくさん人が死ぬ、助けに行かねば。」と宋国に入って、防衛のお手伝いをする。かれらは軍事技術を持っているので、城を守る様々な道具を作って防備を固める。別の町が攻められると、またみんなでどっとその町に行って防衛をする。そういう集団です。その技術者集団を墨家という。
墨家の墨はスミですよね。昔、材木を切る時に、墨縄という墨を浸した紐を板にぴったり沿わせて、その紐をパンと弾いた。こうすると板にまっすぐの墨のあとがつく。それを目印に材木をまっすぐに切りました。昔、私の家にもこの墨縄の道具があった。こういう道具を使って木を切って防衛道具を作るので、墨家と呼んだのではないかとという説がある。
また、墨子が奴隷出身で顔に奴隷の印の刺青を入れられていたので墨子とよばれたという説もあります。墨子はそんなに身分の高い人ではなかったのでしょう。だから、弱い人たちを助ける活動をしたのかもしれない。人助け集団なので、戦国時代には非常に人気があった。
有名なエピソードがあります。大国楚が小国宋に攻めこもうとした。墨家グループが宋に入って防衛準備を進める一方で、墨子自身は単身楚にはいり、楚王に面会して戦争そのものを思いとどまらせようとした。「私たち墨家が宋に入って防衛体制をきっちり整えたから、侵略は失敗に終わります。戦争はおやめなさい。楚国が何万の軍勢で襲ってきても落とすことはできません」と。楚王はそんなことでは説得されません。そこで、楚王の前で、戦闘のシミュレーションをしてみせた。そうすると、楚軍がどのように攻めても、勝利できないのです。
この邪魔な墨子を殺してしまおうと思った楚王に対して、墨子は先手を取ってこう言いました。「私一人を殺しても無駄ですよ。われわれ墨家は皆この作戦を共有しています。それに、武器も持たずたった一人でやってきた私を恐れて殺したとなれば、あなたの評判が落ちるだけですよ。」そういわて、楚王はそのまま墨子を帰し、作戦を中止しました。この話がすべて実話かどうかわかりませんが、象徴的な話だと思います。墨家に人気が出るのは当然ですね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?