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女性たちへ、媚びないで、自分の人生を#千葉敦子さん

“女ってこんなにつらい!虐げられてる!” と被害者意識にこりかたまった、女たちの恨み節には同調はしないで、
相手や社会に不平不満を言うより先に、
同性(女性)も異性(男性)も、公平に、
まず自分がどうか、どうあったらいいのか、考えてみなさい、と叱咤激励している。

1989年、30年前の本、千葉敦子さん『寄りかかっては生きられない』は、
共感や同調、悩みの言い合い、戦いみたいな女性論とは異なり、私が初めて出会う、
すっきりとした内容のフェミニズム論だったように思う。

そもそもフェミニズムとは。
全ての人間にとって、人間らしく生きるとはどういうことか、人間らしく生きられる社会とはどういうものか、という根本的な問いを投げかけている、という。

男尊女卑の思想や、女性が社会的に虐げられてきた歴史があり、勝ち取るべき平等や権利を得るための “たたかい” は、
実際求められるかもしれないけれど(入試時の男女公平や、マタハラ、就職のM字カーブの問題など)

そもそも根本にある考え方として、
男らしさ女らしさといった、違いではなく、
男女共通の「人間としての価値」「人間らしさ」を追求できるような変化が必要なのでは?、と問いかける。

しかし、
『日本では女性の解放、社会的地位の向上は女性だけの問題とみなす男性が多い。それが男女双方の問題、つまり人類全体の問題であるという認識があまりみられない。』と文中で書かれている。
月経の辛さを、妊娠の体の変化を、お産や育児の辛さも、キャリアとライフイベントを選択する難しさを、結婚で求められる変化を、
女の問題を「男は知らない」。
社会的に、“そうなんだ、大変だね”、くらいにしかならない。
もしくは、“なるほど、大変だね、でも男もさ、これこれ大変なんだよ”みたいな話に、なったりする。
**
もしかすると、女の問題を知らない、ことを、知らないのかもしれない。**

それならば、千葉敦子さんのいう「人間としての価値」とは。
それぞれの人が、社会で「ひとりで生きられる人間」として自立していることだという。

具体的には、
男女ともに、「自分のことはできるだけ自分でする」という習慣を身に着けること。
経済的にも家事の能力も。
そしてそれぞれの人生のなかで、自分はどうありたいか、どう周りの人と関係を築いていきたいか、の意思決定も。

例えば、仕事も家事も両方経験し知っていれば、専業主婦でも、共働きでも、夫婦間で一方に負担を強いることはなく、どちら側の立場も知っていて配慮することができる。
また、周りが結婚してるから、子どもを産んでるから、という周囲の評価だけで、
自分の思いにきちんと向き合わず決めたとしたら、人生100年時代、
私-母=ゼロ 私-仕事=ゼロになった人生の残り半分をどうするのか。
外からみて幸せそうにみえる、ことの方が、自分にとって本当に何が一番大切かより大事なのか。
男女がどうかよりも、大切な価値観は、「自分自身の人生をコントロールしている」という感覚だという。

このような内容につづく、千葉敦子さんの
男への、女への、
皆がおそらく、心の奥底で、薄々感じていることをズバリと言い当てるような主張は、軽快で明快だ。

日本の男への具体的な叱咤激励は以下のよう。
まわりの女性に、母親代わりをしてもらうことを求めるのはやめたら?
従順な女中のような女性を求めるのはやめたら?
それに、妻、娘と言った身近な女性にさえ対等な人として向き合っていない男性が、
仕事場や他の場で自分と対等に女性と向き合うことなんかできやしない、とバッサリだ。
女に犠牲(専業主婦になれ、とか、女性らしくいろ、とか)を強いる男は、基本的に人間としての平等関係を認識していない、という。
ロマンティックに、女に頼ってもらいたい、寄りかかってもらいたいと思うかもしれないけれど、大人の女性に「全面的に」寄りかかられたら迷惑なんじゃない?なんて、
よく言ってくれたと、思った。
可愛い、とか、従順、とか、女らしい、とかの基準だけではなくて
お互い自立している男女として人間関係をつくるほうが、よっぽど豊かじゃないの?
なんて意見、私はこの本を読むまで正直出会わなかった。

それならば、日本の女への叱咤激励は?
これはまた強烈で、私のなかの悶々としてた思いを、こんなにわかりやすく言葉にしてくれるなんて!と感謝の思いが湧いたほどだ。
**
まず、世の中わるい、といっていても幸せにはなれないよ、という。
そして世界と比べて日本は女性の権利が遅れてる、といいながら、なかなか進まない現状を2つの視点で指摘する。**

1つ目は、“誰かがやってくれる、と受け身”なこと。
『男と同じ待遇は欲しがるくせに、男と同じに責任はとりたくないという手合い、これは女にとっても一番困るのです。誰かが闘ってくれて、その果実だけは、自分がもらいたい、と都合のいいことを考える女が多すぎやしませんか?』
私たち女はこんなに大変!と騒ぐけど、それを自分でどうにかしようとは思わない。誰かが何かしてくれたらいいと思ってる。

“だって毎日忙しいから”
“だってそんな力ないから”
“だってそんな風に目立ちたくないから”

何もしないで文句ばかり、与えられる物だけ受け取っていてもだめ。
自分に何ができるのか、身近な家族から変えられないか、とか、誰かと力を合わせられないか、とか小さなことからでも始められるし、
女性の権利を勝ち取ろうと頑張っている人がいるなら、その人を支持する応援する、その意思を表明することだって、行動のひとつだ。
日本の女性はそれができないんじゃない?なんて指摘、まさにその通りだと思った。

2つ目は、“今のままでいい、女は女らしくいたらいいじゃない”、と考える人も、普通にいること。
『妻(女)たちはすべて「社会を下支えする犠牲者」かというと、そうはいえない。ずるい女、怠け者の女も結構いますからね。こういう女たちは、職場で戦っている女たちの足を引っ張値、なるべく男女不平等の現状を長引かせようと一生懸命です。とても男たちと平等な職場で働く気などない、自分の不勉強、怠慢を棚にあげて、「専業主婦で何がわるいの?」「女の幸せは赤ん坊を産むことよ」と時代遅れの価値観にしがみついています。』
時代遅れ、とまでは言わないけれど、
ただ、自分が古い(けど、一般的な)価値観にとらわれている人は、そういう価値観から抜け出して自由に生きようとする人たちに対して、決して寛容にはなれないのだ。
その意見が、社会や男性側の、
“やっぱり今のままで別にいいよね”という無関心や、楽な意見への同調を、良しとしてしまう。
結局、変化を起こそうとする人への障壁や困難を増しているのも、女性たちの内なる思いだったりするのだ。

さまざまな、ねじれをもつ、フェミニズムの問題。
この本への感想として、私は、
良い悪いではなく、
今のままでいい、と思う人、自分が変わりたいと思う人、社会を変えたいと思う人、特に何も考えてない人、
どんな意見も、思いも、あっていいけれど、

男に、社会に媚びるのではなく、
まわりが求めるイメージを自分にあてはめない勇気をもって、
こういう生き方をした方がよい、みたいに、他の人からの評価のために、
自分の人生の選択や意見を決めることを、やめてみたら?と
日本の女性にエールを送っているのだと思った。

最後に千葉敦子さんからの21世紀の女性へのメッセージはこうだ。

『表面的な礼儀よりも、
中身のあるコミュニケーションを重視し、
変にへりくだることもなく
、自分のセクシュアリティーに誇りをもち、
自己主張はつよく、自分を大切にし、
不満ははっきりと表明する目標のある人へ。』
『こういう女を怖がる男は減り、一段下ではなく同じレベルにいる女と手を取り合うことを喜びとする男が増えたら。』

21世紀になったけど、この本が書かれた30年前から、日本は何か変化があっただろうか。

私はこの本を読んだことで、自分の中の悶々としていた思いを形にしてもらったと思う。
自分にも生かしたいし、他の人に話す時にも言葉にして伝えたい。
そして、表現として、こうなってほしいという思いを、どうやって実際の行動、変化に移したらいいのか、また考えていきたいと思う。

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