働く女のマンガとは 氷河期を超えて
20年前くらい、私が働き始めた頃、あまりの社会人生活の辛さに打ちのめされた。今よりもっとパワハラ・セクハラがうっすら全般的に蔓延っていて、長時間労働は当たり前で、パワハラ・セクハラそれに類する被害に遭うことは、そこそこ可能性が高い災害に遭うようなものだった。それがこっちに狙いを定めて向かって来たときには避けられない。
楽しいことも多かったけど、テンションを保つのと体力とストレスのバランスを取るのに毎日息も絶え絶えだった。
当時からサブカル好きで漫画も映画も好んでたし、オシャレも好きだったからファッション誌も読んでたけど、女性向けのそれらのメディアを私は憎んだ。全くもって現実的ではない女性会社員が描かれていたから。特に働く女性のことを恋に仕事にオシャレに頑張るキャリアウーマンな私、みたいに描かれたマンガには反吐がでましたね。
まあでもしょうがないんですわ。今思うと。マンガ家さん(おそらくほとんどが女性作家)もバブル後不景気の中、それなりの社員数のある企業の中、男性と変わらぬ仕事量を与えられたイチ社員として働いたことはなかったんだから。まあーわかるわけないンすわ。仕事の辛さとして描かれたモノの薄っぺらいことよ。ちっげーよ、そんなもん全然辛くねンだよ、ああ〜?わかってねえなあ、と思ってた。
あの時代が1番、専業主婦と働く女性の分断激しかった気がする。ミクシィはあったがツイッターはなかったし、働く女性は増えてるのにネット上にも交流とかはないし、まとめサイト全盛期の少し前?だと思う。どっちサイドも何が辛いのか共有されてなかったんですもの。
ただそんな中で連載が始まった「働きマン」でやっと溜飲を下げる。かつてないほど、この時代の働く女性を正確に描写してたので。各キャラの悩みどころも恐ろしいほど社会人として的を得ている。どういう取材してたんだろう、作者。課長島耕作みたいにウルトラ人間関係で万事解決、とはならない。
今となっては当時のパワハラ・セクハラ蔓延る日本社会の貴重な資料なんではないかとすら思うよ。あの時代はホントにああいう時代だった。
だが、時は経ち!
(今じゃ雑誌のカヴァー、ではなく)今はそこかしこにリアルな働く女性漫画が溢れており、それも当時のように働く=オシャレ、みたいなんではなく、実に様々なリアルな業態と悩みを扱ったお仕事漫画がありますよね。しかもちゃんと面白いっていう。お仕事漫画はサラリーマンに限らず、もはやマンガ化されてない職業などないのではないか状態。
中でも私が感銘を受けたのは「まじめな会社員」です。コレは厳密にはお仕事漫画ではないのかもしれないが。
「まじめな会社員」である派遣社員のあみ子は、20年前の「働きマン」主人公その他の登場人物とは、労働に対するスタンスが真逆。
連載当時は主人公に対する怒りや共感や、でも主には「コイツ嫌い」の声がSNSにもあふれ、すっかり嫌われ主人公なのですが、これがどうしたことだろう、20年前働きマンだった自分に刺さる刺さる。
わかる〜!あるある〜!覚えあるわー!これ!みたいなオンパレードですよ。
特に若い頃サブカルかぶれてた自分にとってワナビーと言われるあみ子の痛い行動はチクチク言葉ですよ。
働きマンは2000年代の働き方の資料になると思ったが、この漫画もある意味コロナ禍の、正社員ではない女性のリアルな働き方と仕事への向き合い方の例として、貴重な資料になるんではないかと思う。
まじめな会社員3巻の中の、
よくドラマなんかでは
「その仕事、私にやらせてください!」「この企画やりたいです!」
って場面があるけど
実際に就職してからそんな日が来ることはなかった
にはホント笑った。いや〜そうなのよね。存在を消す。笑。
自分自身を振り返っても、氷河期にやっと就職できた「ありがたい」就職先で働きマンしてたわけだけど、ガツガツするのが当時の「普通」でそれが安全だったから働きマンしてただけで、仕事に積極的なわけでは全然なかったな(笑)って。
大部分のサラリーマンは働かなくていいなら働きたくないだろう。ただどうせ働かなきゃいけないなら仕事に全力をかけて働きマンしたほうが、やりがいもできるし人生も充実する。でもやっぱり心の底ではあみ子的スタンスなんじゃなかろうか。この辺は時代が変わっても不変じゃないのかな〜。そんなことを考えた。