【雑談】理想のカフェを探し歩いて千の風になった、の巻
ある日、わたしはカフェを探していた。
いや、血眼になって探し求めていた。
その日、うちの双子は二人で映画を観に行った。
もちろん大好きな仮面ライダーの映画だ。
ちなみに、我が家の双子は、中1の女子。
好きな物を堂々と「好き!」と言えるいい子に育ったと自負している。
二人が仮面ライダーを見てる2時間、近隣で一人で時間をつぶそう!本とマイノートを持って、ついでにイヤホンも持参して、お一人様時間を満喫すべく、気合十分でカフェを探した。
しかし、私はこの日、満足するカフェを見つけることは出来なかった。いろんなカフェを3軒ハシゴした挙句、いまだにこのお気に入りカフェ問題に決着をつけられていない。
今日は夏休み中の皆さんの箸休めに、そんな私のカフェ迷子エピソードを聞いてほしい。
先に言っておくが、この記事、箸休めなのに5,000字も費やし、終いには文句で終わるので、お忙しい方は、こんな私の無駄話で貴重な時間を無駄にしないで欲しい。
でも、私と同じようにこの大事な夏休みをInstagramやThreadsを見て、時間を溶かすように過ごしている人がいるなら、その時間つぶしの一環として私の記事を読んでくれたらうれしい。
さぁ、こちらの世界へようこそ。
まず、この話をする前に、私の街と都会のカフェにおける価値観の違いについてお話ししたい。
私の住む街は、北海道にある海沿いの田舎町だ。
バスや電車はあるがバスの便は少ないし、そもそも我が家からは電車の駅まで車で20分。どこに行くにも、とりあえず車を出さないとどこにも行けない、そんな街である。
そんな車社会の我が街には、当たり前だが、歩いてふらっと入るようなカフェは少ない。なぜなら街を歩かないから。
都会でいう「カフェ」とはそもそも、電車や徒歩移動が当たり前の街中で、歩き疲れてちょっと休んだり、喉を潤したり、待ち合わせまでの時間を潰す場所である。
しかし、基本私たちの移動は車で”ドアtoドア”。
お出かけ途中に歩き疲れて休んだりする事がない。疲れたら家に帰るのだ。
私たちがカフェに行くのは、友人とゆっくり外でおしゃべりしたい時や、一人でそのカフェ自体を満喫したい時。車でカフェに行って、車で帰ってくる。それが私たちのカフェの使い方である。
その日は前述の通り、お1人様時間を満喫しようと、気合をいれてカフェを訪れた。お目当てのカフェは、映画館から車で数分の所にあった。
数年前に友人と入った時も雰囲気が良かった、白い建物のおしゃれなカフェ。ケーキセットが美味しかった。よし、今日はあそこにしよう、と決めて車で向かった。
カフェに着き、久々の一人時間にワクワクしながら店内に入り、「お好きな席どうぞ~」と言われて窓際の席に座ったあとに、ふと気づいた。
…タバコくさい。
店内を見回すと、私が座っているのは禁煙席だが、反対側には喫煙席がある。仕切りはない。
私はタバコの匂いが苦手だ。
かつて一緒に住んでた祖父が超ヘビースモーカーだったせいだと思う。
ただ、鼻炎持ちなので鼻は良くない。だからか。気付くのが遅かった。よく見ると、「当店は喫煙できます」と大きく書いてある。私は目も悪いのか。
でも、まぁ、そうだったのか…。
それは気づかなかった私が悪い。
でも、前来た時は禁煙だった気がする。お店のコンセプトを変えたのかな?
よくみたら、前はおしゃれにコーヒー豆が並んでいた棚には、がごめ昆布、とろろ昆布と、昆布しょうゆが、所狭しと並んでいた。レジ横にはかごに入った地域のとれたて野菜と、以前ケーキセットが書いてあったメニュー表には「本日の日替わり定食・生姜焼き」とある。
あれ、なんか覚えてる感じとちがうな。
いや、これはこれでいいけども。
「ご注文お決まりですか?」
と優しそうなおばさまが注文を取りに来た。
さすがに「やっぱり出ます」とは言えずに、アイスティーを頼んで、まぁ、ちょっとタバコくさいくらいいいか、と諦めて本を読み始めた。
しかし、時間が経つにつれて、煙草の香りが強くなってくる。よく見たら、禁煙席は私だけだが、喫煙席はほぼ満席だ。そうか、タバコが吸えるカフェって愛煙家には貴重なのかも。
ただ、エアコンの風に乗って、そのタバコの煙が私の席に流れてくる。そうか、そういうことか。タバコの煙が、千の風に乗って。脳内で、秋川雅史のテノールが響く。
私は申し訳ないながらもいよいよ耐えられなくなり、アイスティーを一気飲みして、お店を出た。ちゃんと調べなかった私が悪い。すみませんでした。
あぁ、まだ映画が終わるまで1時間半ある。
私はネットで検索しながら、少し離れた観光地にある、歴史的建造物の1Fにカフェを見つけた。ここは禁煙!雰囲気もよさそう!
車で5分くらい移動して、駐車場に停める。
今度こそ。
そう思って入口を入ると、今度は、建物内が暑い。とにかく暑い。もわぁ〜っとしてる。エアコンも無いが、窓も開けてない。真夏の屋内プールのような湿度。
そして、今度はトイレくさい。カフェスペースがトイレの横だったので仕方ないが、これはトイレの中でも、公園の端っこにある公衆トイレのにおいだ。さすが歴史的建造物、きっとトイレも古い。これはタバコより辛いぞ。
今回はお店に入る前だったので、回れ右をして引き返して、私はそのまま外に出た。
もしかしたら、私のこだわりが強いのかもしれない。細かいことを気にしすぎなのかも。
思い起こせば、
私は理想的なカフェを見つけたことがない。
良いカフェと出会った!と思っても、店内の香り、温度、BGMの大きさ、照明の明暗、テーブルの高さ、目の前の景色など、何かしら「もう少し○○だったら…」と邪魔なこだわりが顔を出す。
せめて臭くないカフェを…。
口呼吸だけで1時間過ごさずにすむ場所を…。
車を違う場所にとめて、もう、徒歩で探すことにした。映画が終わるまで、あと1時間程。
我が街の観光エリアに来てしまった。
観光客気分でお散歩するのも悪くない。このまま、いっそお散歩して時間つぶすか、と歩いていると、レンガ作り倉庫の建物の入り口にちいさな看板をみつけた。
"サンドイッチあります。"
サンドイッチ、あります??
こんなとこにサンドイッチ専門店?
立てかけられた黒板のメニューを見ると、サバサンドやラムサンドのメニューの横に
「12席あります。ドリンクのみもOK!」と書いてる。正直アイスティーを一気飲みしたので喉はかわいてないが、良く見ると私の一番好きな炭酸飲料の名前が書いてる。
"ドクターペッパー ¥350"
入ることを決めた。
中に入ると、1Fは古着屋さんで、2Fに続く階段に"サンドイッチ屋は2F→"、と書いてある。
一人でドキドキしながら階段を上がる。
知らないお店に一人で入る緊張感。たまらん。
2階に上がると、わぁーお!雰囲気よい!!
広くはないが、静かで、おしゃれな音楽がかかっていて、とにかく、臭くない!今日はそれだけで、もう満足!!しかも誰もいない!
古着屋さんの2階にこんな秘密基地みたいなお店が!カウンターには原宿の裏通りにいそうなお兄さんが二人いて、にこやかにいらっしゃいませ〜と声をかけてくれた。お兄さんも、感じが良い。
誰もいない店内で、はしっこの席に座る。
2階から、下の古着屋さんが見える。
もちろん、くさくない。
暑すぎず寒すぎず。
テーブルの高さもちょうどよく、
ドクターペッパーは美味しい。
ついに!ついに見つけた!
私の街で、初めて出会った理想的なお店!
すかさず同じ街に住む親友2人にLINEする。
「めちゃくちゃいいお店見つけた!今度一緒にサンドイッチ食べに来よう!」
メニューも写真を撮らせてもらった。
テイクアウト可と書いてるので、おうちで食べようと、”豚肉のエスニックサンド(ホットチリソース)”をテイクアウト用に注文した。
このサンドがおいしかったら、今度は友達とゆっくり来よう。隠れ家みたいなこのカフェで、おしゃれなバゲットサンド食べながらおしゃべりしよう。
私はそこで映画が終わるまでの時間を、本を読み、ノートを書き、ゆっくり過ごした。
テイクアウトのサンドも出来上がり、お会計の時に、お兄さんに今日の私の紆余曲折を話した。
「私、今日、ゆっくり過ごせるカフェを探し回って、3軒目でやっとここにたどり着いたんです。」
「え、3軒も?」
「なかなか見つからなくて諦めてたんですけど、今日はここを見つけられたから大満足です!」
「そんな風に言ってもらえてうれしいです!」
お兄さんたちが微笑む。
「こんな素敵なお店があるなんて今まで知らなかったから、今度友達一緒にまたサンドイッチ食べに来ます!!」
「ありがとうございます!」
私は満たされていた。
なかなか見つけられない、この雰囲気と、音楽と、メニューと、そして臭くないカフェ。多分サンドイッチも美味しい。だって見た目がシャレてた。最高。探してた甲斐があった。
今度また子供たちの映画に付き合わされる時は、ここに来よう。心に決めた。
最後にお兄さんが笑顔で言った。
「でも、うち、明後日で閉店するんですよ。」
え?
閉店??
うそだろ?
なんてこった!
やっと見つけたと思ったのに!
「でも移転する予定なので、OPENしたらまたサンドイッチ食べにきてください!」
よかった。移転だった。
でも、この場所ではないのか。
サンドイッチとドクターペッパーにはまた会えるけど、やっと見つけたこの場所がなくなるのは、やっぱり残念。そうかー。やっと見つけたと思ったのになー。
私の理想のカフェ探しは、振り出しに戻った。
ちなみに、テイクアウトした豚肉のエスニックサンドは信じられないくらい美味しかった。
あれから一年。
今日。そう、まさに今。
私はカフェを探している。
今日は、うちの長女が友達と一緒にお祭りの屋台を見に行った。みんな受験生なので、1時間だけお祭りを見てまわる、とのこと。
バスの便もないので私が送迎し、1時間なので母はその近くで時間をつぶして待つことにした。
そこでまた、カフェ問題である。
またネットで調べた。
お祭り会場の近隣でカフェ、または喫茶を。
3軒くらいよさそうなお店があったので、第一候補から一つ一つ訪ねた。
1軒目は紅茶専門店、2軒目は昭和レトロな喫茶、3軒目は1杯ドリンクを頼むと整体が無料になるというよくわからないコーヒースタンド。
近いところから1軒ずつ訪れたが、なんと3軒ともお店自体がつぶれていた。そんなことある?信じられない。これが過疎化の実力なのか。
更に調べて、徒歩5分圏内で現在営業しているのは、ファーストフード店を除いて、地元の老舗珈琲屋さんの喫茶と、駅ナカのTULLY’S の2択。
TULLY’Sの方が絶対安心できるクオリティと雰囲気を提供してくれるのはわかっていたが、イチかバチか珈琲屋さんの喫茶に向かった。だって、もしかして、そこが私の理想の店かもしれないじゃないか。
自動ドアを入る。今度は入ってすぐにわかった。1Fは喫煙席だった。でも大丈夫、2F席が多分禁煙席だ。
カウンターでアイスカフェオレを頼んで、店員さんに聞いた。
「禁煙席は2Fですか?」
「いえ、当店は1F席のみになりました。」
…やっちまった。
うそだろ。おい、またやっちまったよ。
「え、じゃ、じゃあ、あの奥が喫煙席で、手前のこの窓際のカウンター席が…」
「そちらも全席、喫煙席でございます。」
全席…、喫煙席!!
若い女性の店員さんはにこやかに教えてくれた。
だから、入る前にちゃんと調べろって言ったじゃん、自分。もう、なんど同じ間違いをするのか。
仕方なく、窓際のカウンターの一番はしっこに座った。お店は悪くない。お姉さんも悪くない。カウンター席は私一人。奥のテーブル席とは距離もある。まぁ、1時間だけだ。耐えられる気がする。
アイスカフェオレを一口飲んだ。
これは、この店で入れたコーヒーではないことがなんとなく分かった。
40年も生きていると、出されたコーヒーが、ちゃんとドリップされたものなのか、はたまた紙パックか、インスタントなのかは、違いの判らないオンナで定評のある私でも、なんとなくわかる。
これは多分紙パックだ。
こっそりカウンターの後ろを見たら、お土産屋さんや地元スーパーでも売ってる、この店オリジナルのアイスコーヒーのパックが見えた。
いや、仕方ない。店に落ち度はない。
禁煙席があると勘違いしたのも、きっと珈琲屋さんだからドリップしたてのコーヒーが出てくるだろうなんて勝手に期待したのも私だ。
アイスカフェオレを飲みながらnoteを書き始めた。そんな中で書いたnoteだから、ご覧の通り、こんなすさんだ内容になってる。
その時、隣のカウンター席に中年のご夫婦が座った。一瞬、まさか、と思ったが、お二人は席に着くなり、すぐにタバコを取り出し、揃って火をつけた。
またタバコの煙がエアコンと千の風に乗って、私に流れてきた。
私のーーとなりのーせーきでー
タバコ吸わないでくだーさーいーー
ウソです。吸っていいんです。
なんたって、全席喫煙席なんですから。
次はちゃんと調べろ、自分。
そして、色々冒険せずに安定のチェーン店を利用することも検討しよう。
私のカフェ探しは終わらない。