#17『My Child Lebensborn』から学ぶゲームデザインの引き出し(2)「時間経過の演出」
本記事は遊んだゲームから、一つのアイデアに注目してゲームデザインの実例を勉強していく連載記事です。
ゲーム開発者や、これからゲーム制作を志す方へ向けて、アイデアのインプットのための引き出しとなれば幸いです。
(前回:#16『My Child Lebensborn』から学ぶゲームデザインの引き出し(1)「プレイヤーの選択を統計表示」)
ゲームの紹介
『My Child Lebensborn』(マイ・チャイルド・レーベンスボルン)は、養子の子供を育てていく育成シミュレーションゲームです。一方で「シリアスゲーム」の側面も持っているゲームです。
(※シリアスゲームとは:純粋な娯楽目的でなく、社会問題についての示唆などが含まれているゲーム)
My Child Lebensborn
起動時に警告がありますが、本作にはいじめや虐待、迫害などの不快な描写が含まれており、正直なところ万人にはオススメしづらいゲームです。
プレイヤーは、養子に引き取った子供を育てていくのですが、子供は出自によるいわれなき迫害や差別を受けており、その厳しい現実と向き合いながら親としての選択を問われていきます。
時間経過の演出
さて、本ゲームでは生活費を稼ぐためにプレイヤーが町工場に仕事に出る必要があります。
仕事はプレイヤーが何か作業をするわけではなく、単にターン数を消費し、朝から夕方へと切り替わるのですが、そのときに画面には時計のようなUIが表示され、時計の針がグルグル回るといった演出が挟まれます。
時間経過を表す時計UI(朝→昼→夕→夜を表している)
この演出は、例えば単にパッと画面を切り替えつつ、メッセージウインドウで「夕方になりました」と文字で表示することも出来ると思います。
その方がプログラム上もシンプルで、余計なUIグラフィック素材も必要なく、演出時間も短く終わります。(もしゲームのプロトタイプを作っている段階であればそうするでしょう)
しかし、ゲーム中の状態が大きく変わる場合は、このような特別な演出を挟むことで「時間が経過している」という実感をプレイヤーに与えることができます。
場面切り替えの頻度
本ゲームでは、単に1ターンを消費して朝から昼になった場合は、特別な時間経過演出はありません。1日は数ターンあるため、毎回このような演出を入れていたら煩わしくなってしまう可能性が高いです。
一方、「仕事」を行った場合は3~4ターンが一度経過しています。この場合は特別な演出を挟むことで「場面が飛んだ」ことが分かりやすくなります。1日1回の演出のため、そこまで煩わしくもないでしょう。
このように、演出を入れるときは「頻度」も考えることが大切です。
例えば、RPGにおいて「ザコ敵」と「ボス敵」のエンカウント時の演出。
単なる消耗アイテムを手に入れたときと、重要なキーアイテムを入手したときの演出など。
頻度が少なく場面が大きく変わるときの方が、演出を特別なものにするというのは定石でしょう。
演出のモチーフを考える
時間経過を表す演出に、ただ文字で「夕方になりました」とするのに比べ、
「時計」というモチーフを用いるのは、直感的にイメージが伝わりやすいでしょう。
こうしたモチーフには、他にどのような例があるでしょうか。
例えば、待ち時間を表すUI表現では「砂時計」。
モンスター辞典などであれば、「書物」のページが捲られる演出。
ミッションをクリアしたときは、「スタンプ」が押されるといった演出なども定番ですね。
特別な演出を考えてみよう
あなたの遊んでいるゲームや、開発しているゲーム、構想しているゲームで、普段の演出と比較して「特別な演出」を行っても良い場所は、どのようなものがあるでしょうか。
例えば、
・通常のレベルアップとクラスチェンジ
・合成や進化がMAXに到達したとき
・シナリオの「章」が進んだとき
・トーナメントに優勝したとき
など色々な箇所が考えられると思います。
また、そのときに「時計」「書物」「スタンプ」などのように、演出のモチーフを設定できるものはあるでしょうか。
こういった演出やUIアニメーションは無くてもゲーム自体は成立します。
また、グラフィック素材を用意したり、プログラム実装のコストも掛かることは事実です。
しかし、ゲーム中の重要な演出をリッチに表現することは、ゲームプレイが伝わりやすいものになりますし、品質を確実に一段階上げることの出来るポイントです。
皆さんも一緒に色々とアイデアを考えて、より良いゲーム作りのための鍛錬を積んでいきましょう。
本記事がゲーム制作をする皆さんのインプットに役立てば幸いです。
本連載の趣旨については下記記事をご覧ください。
他の連載記事はハッシュタグ「#ゲームデザインの引き出し」からどうぞ。
(※本記事中のゲーム画像は、「引用」の範囲で必要最低限の範囲で利用させて頂いています)