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#5『スーパーマリオ64』から学ぶゲームデザインの引き出し(2)「繰り返しのチュートリアル」

遊んだゲームから、一つのアイデアに注目してゲームデザインの実例を勉強していく連載記事です。今回は『スーパーマリオ64』の分析をしてみましょう。

ゲームの紹介

『スーパーマリオ64』はNINTENDO64で発売された、3Dのワールドを自由に歩き回るタイプのジャンプアクションゲームです。

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『スーパーマリオ 3Dコレクション』より『スーパーマリオ64』 / Nintendo

それまでの2Dプラットフォーマー(横スクロールジャンプアクション)の「マリオ」シリーズとは異なり、3Dの世界を走り回って冒険するというのは、今でこそ当たり前ですが、当時は画期的でした。

平原から始まり、砦、雪山、水中、洞窟などバリエーションに富んだステージ、各ステージに散りばめられた秀逸なギミックや敵キャラ、数々の隠し要素などの楽しさはさすが「マリオ」という感じです。

マリオ64のアクション

『スーパーマリオ64』は3Dのステージを跳び回るための豊富なアクションも魅力の一つです。

「移動」「ジャンプ」「攻撃」「ものを持つ」などの基本操作の他に、ボタンの組み合わせやタイミングなどで出せる「幅跳び」「ハイジャンプ」「三段跳び」「後方宙返り」「壁キック」など。

他にも、木に掴まっての「上り下り」や木の上での「逆立ち」「背面ジャンプ」などなど、多彩なアクションがあります。

従来のマリオシリーズよりも豊富なアクションは遊びの幅を広げるものの、一方で、なかなか一度では覚えきれないのも事実かと思います。

「立て看板」のチュートリアル

本作では、スタート地点周辺にある「立て看板」を読むことで、基本操作を学ぶためのチュートリアルを読むことができます。

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『スーパーマリオ64』 / Nintendo

最初のフィールドには敵もいないので、プレイヤーはここで自由にアクションを試すことができます。

立て看板という方式は、操作に慣れているプレイヤーは読まずに先に進んでしまえばいいため、強制的に差し込まれるチュートリアルと違って、煩わしくないのも良いポイントかもしれません。

「繰り返しのチュートリアル」

ところが、先に述べたアクションの内いくつかは、少し先のステージにならないと必要ないものもあります。

ということは、例えば「幅跳び」などのアクションが実際に必要になるステージに着くころには、言われたアクションを忘れてしまっているプレイヤーもいるかもしれません。

そうなると適切な遊び方ができないので困ってしまいますね。
使うべきアクションを思い出せないせいで、ステージが理不尽な難易度になってしまったり、時には進行不能になってしまう可能性もあります。


そこで、『スーパーマリオ64』では特別なアクションが必要なステージには、もう一度、同じ内容のチュートリアルの「立て看板」を置いています。
同じ内容の看板が2回も3回も、事あるごとに色々なステージに出てくることがあるんです。

これは、既にそのアクションを知っているプレイヤーにとっては「言われなくても、もう知ってるよ」となる不要な情報ではあります。

しかし、操作を忘れていたプレイヤーにとってはそれを読むことで「あっ、そういえばこういうアクションがあったな」と思い出すことが出来、そのステージを正しく遊べるようになるわけです。


他のゲームでは、操作のチュートリアルは最初の一回のみの提示に留まっているものも多いと思います。

『スーパーマリオ64』では、一度に覚えきれない人がいるのは当然という前提に立って、最初にも説明はするものの、必要なときには何度でも繰り返し説明するというスタンスを取っています。

これは全てのプレイヤーを取りこぼさないという意味で、親切な作りと言えるのではないでしょうか。

人間は忘れたりうっかりしたりするものである(ので、それを想定した作りにしておく)という「フールプルーフ」の概念にも通じるものがありますね。

チュートリアルの提示方法、場所を見直してみよう

皆さんの遊んでいるゲームや、開発しているゲームでは、どのようなチュートリアルの作りになっているでしょうか。

最初に一回提示するだけでしょうか?
ヘルプメニューから読む形式でしょうか?
それとも各ステージごとに表示されますか?

提示の仕方はどうでしょう。
強制的に説明シーンが差し込まれますか?
それはスキップが出来る作りでしょうか?
あるいは、必要な人だけが読めばいい方式でしょうか?

看板に書いてありますか?
街の人が教えてくれますか?
それとも、システムメッセージとして表示されますか?

プレイヤーがチュートリアルの内容を忘れてしまっている場合、進行に困ってしまう場面は無いでしょうか?(特定のアクションが無いと進めないステージなど)
そのとき、もう一度チュートリアルを読めるように誘導できるでしょうか?


皆さんも一緒に、チュートリアルに関するアイデアを考えて勉強してみましょう。


本連載の趣旨については下記記事をご覧ください。

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(※本記事中のゲーム画像は、「引用」の範囲で必要最低限の範囲で利用させて頂いています)