見出し画像

#18『My Child Lebensborn』から学ぶゲームデザインの引き出し(3)「パラメータ兼ボタンのUI」

本記事は遊んだゲームから、一つのアイデアに注目してゲームデザインの実例を勉強していく連載記事です。

ゲーム開発者や、これからゲーム制作を志す方へ向けて、アイデアのインプットのための引き出しとなれば幸いです。

前回:#17『My Child Lebensborn』から学ぶゲームデザインの引き出し(2)「時間経過の演出」
前々回:#16『My Child Lebensborn』から学ぶゲームデザインの引き出し(1)「プレイヤーの選択を統計表示」

ゲームの紹介

『My Child Lebensborn』(マイ・チャイルド・レーベンスボルン)は、養子の子供を育てていく育成シミュレーションゲームです。一方で「シリアスゲーム」の側面も持っているゲームです。

(※シリアスゲームとは:純粋な娯楽目的でなく、社会問題についての示唆などが含まれているゲーム)

画像1

My Child Lebensborn

起動時に警告がありますが、本作にはいじめや虐待、迫害などの不快な描写が含まれており、正直なところ万人にはオススメしづらいゲームです。

プレイヤーは、養子に引き取った子供を育てていくのですが、子供は出自によるいわれなき迫害や差別を受けており、その厳しい現実と向き合いながら親としての選択を問われていきます。

本作のUIレイアウト

本ゲームは、子供の毎日のお世話をしながらストーリーを進めていく育成ゲームです。

お世話する内容は大きく分けて3つのカテゴリがあり
・食事をさせる
・お風呂に入れる
・就寝させる
などのコマンドを実行していきます。
(実際には他にも、「調理をする」「洗顔する」「着替え」「服を繕う」「外出する」など色々なコマンドが出てきますが)

このゲームの画面下部のUIを見てみると、お世話の行動をするボタンがあるのですが、このボタンが同時に子供のパラメータ表示も兼ねているところがポイントです。

画像2

それぞれ、
・食事ボタン …… 空腹度
・風呂ボタン …… 清潔度
・睡眠ボタン …… 疲労度
が対応しています。
これは、なかなか合理的で直感的なUIと言えるでしょう。

例えば、空腹度のパラメータが下がっている場合はそのボタンを押せば「食事」の行動が取れますし、清潔度が下がっている場合はそのボタンを押せば「風呂」に入れることができます。

「パラメータ表示」と「行動ボタン」を一つにまとめるのは、UI面積を節約して画面をスッキリ見せることも出来ますし、対応関係が分かりやすくなりますね。

ゲームのパラメータ表示というと、
・画面上部にパラメータ表示
・画面下部に行動コマンド
というUIを考えがちだと思いますが、その場合プレイヤーは画面の上下に視線を行き来させながら、パラメータとボタンの対応関係を覚える必要が出てきてしまいます。

本作のUIはその点を上手く解消していますね。

「パラメータ兼ボタンUI」の他の例

他のゲームではどのような例があるでしょうか。

例えば、必殺技ゲージが満タンになるとそのボタンを押せば必殺技が発動、というのは色々なゲームでよく見かけるUIかと思います。

レベルアップ時にパラメータを手動で振り分けるようなゲームであれば、レベルや経験値のバーの部分をタップして、ポイントの割り振りを行うメニュー画面を開くのもありそうです。

ソーシャルゲームなどで、ゲーム内通貨(いわゆるジュエル、宝晶石など)を購入したい場合は、その通貨の部分をタップして、直接ショップに飛べるような実装も多く見かけます。

RPGで、HP(ライフ)の欄を押すと体力が回復……というのは、パッと例が思いつかないため逆に直感的ではなさそうですが……、ゲームの種類やコンセプトによってはアリかもしれません。

パラメータ兼ボタンを使いにくい部分

一方、パラメータと取るべき行動が一対一に対応しない箇所では、この手法を取ることは難しいかもしれません。

例えば、「Gold」(ゲーム内の無料通貨)の表示があったとして、これはゲーム中の様々な要素に関連しているため、
・アイテムを売る画面を開くのか
・それともアイテムを買う画面を開くのか
・敵を倒してGoldを稼ぐための冒険画面を開くのか
・ミッション依頼を受けるページを出すのか
のように、どのコマンドと対応させればいいのか分かりにくそうです。

パラメータ兼ボタンのUI表示を考えてみよう

あなたの遊んでいるゲームや、開発しているゲーム、構想しているゲームで、パラメータ表示している箇所をリストアップしてみましょう。
その中でボタン機能を持たせることが出来るものはあるでしょうか?

また逆にも考えてみましょう。コマンドボタンとして表示している箇所をリストアップし、そこに何かパラメータ表示を足すことは出来るでしょうか?

例えば、農園系のゲームなら、収穫ボタンに「収穫までの待ち時間」とか、種まきボタンに「撒くことのできる種の数」のような表示があってもいいかもしれません。

よくある「未読数」のバッジ(ボタンの右肩に表示される丸数字)の表現も、広い意味では情報とボタンの統一化と言えるかもしれません。


ゲームに色々な機能を実装していくにつれ、限られた画面の中でどうUIを表示するかは企画者やUIデザイナーの腕の見せどころです。

皆さんも一緒に色々とアイデアを考えて、より良いゲーム作りのための鍛錬を積んでいきましょう。

本記事がゲーム制作をする皆さんのインプットに役立てば幸いです。


本連載の趣旨については下記記事をご覧ください。

他の連載記事はハッシュタグ「#ゲームデザインの引き出し」からどうぞ。

(※本記事中のゲーム画像は、「引用」の範囲で必要最低限の範囲で利用させて頂いています)