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#16『My Child Lebensborn』から学ぶゲームデザインの引き出し(1)「プレイヤーの選択を統計表示」

本記事は遊んだゲームから、一つのアイデアに注目してゲームデザインの実例を勉強していく連載記事です。

ゲーム開発者や、これからゲーム制作を志す方へ向けて、アイデアのインプットのための引き出しとなれば幸いです。

ゲームの紹介

『My Child Lebensborn』(マイ・チャイルド・レーベンスボルン)は、養子の子供を育てていく育成シミュレーションゲームです。
また、一方で「シリアスゲーム」の側面も持っているゲームです。

(※シリアスゲーム = 純粋な娯楽目的でなく、社会問題についての示唆などが含まれているゲーム)

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My Child Lebensborn

起動時に警告がありますが、本作にはいじめや虐待、迫害などの不快な描写が含まれており、正直なところ万人にはオススメしづらいゲームです。

また、戦時のナチスドイツとノルウェー間の民族問題といった、非常にセンシティブと思えるテーマを扱っています。

プレイヤーは養子に引き取った子供を育てていくのですが、毎日頑張って働いても食料も満足に買えず、きれいな服も買ってあげられず、一緒に遊んであげることもままなりません。

そして、子供は出自によるいわれなき迫害や差別を受け、学校でいじめを受けてしまい、親としての立場で出来ることは限られており、子供のことを助けてあげたくても、その問題も満足に解決してあげることができません。

そしてこのゲームの体験は決して架空の話ではなく、戦時後のノルウェーに実際にあった実体験を元にしているものだということです。


テーマ自体が「社会問題」という重いものであり、そのこと自体もゲームデザインとして学ぶ要素ではありますが、本記事ではその点は置いておき、別の「引き出し」について考えてみましょう。

プレイヤーの選択肢を統計表示

本ゲームでは各章のクリア時にプレイヤーの取った選択が、今まで本作をプレイしたプレイヤーの統計データとしてレポート表示されます。

・自分の子供に対し、何をしてあげたのか、してあげなかったのか。
・自分の子供から尋ねられた質問にどう答えたか。
・差別などの問題にどのように向き合ったか。
など。

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章クリア時の統計レポート(My Child Lebensborn)

これは本作がシリアスゲームだからという面もありますが、ゲーム中に登場する選択肢に基本的に「正解」といったものはありません。

例えば、
・子供に辛い真実を正直に話すのか
・それともその話には触れないでおくのが優しさなのか
など、もし自分が親だったとして、簡単には「こっちの選択肢が正解だな」と決めつけられない問題について頭を悩ませることになります。

そして章クリア時の統計データは「正解の答え合わせ」の目的ではなく、他人はどう考えたのか。自分のした選択はどうだったのか。
自分の選択を振り返って考えることが狙いなのでしょう。


このようにプレイヤーの選択を集計する仕組みは、シリアスゲームだけでなく、娯楽性のあるゲームにおいても活かせる仕組みかもしれません。

例えば『ドラゴンクエストV』でビアンカ、フローラどちらを選んだか、のように、重要な選択についてその結果を表示するのは面白いかもしれません。
(もちろん、数字の大小として結果を出すのは野暮であるという考え方もあるでしょう)

ランキング表示やクリア率

例えば、何点取れたかのスコアランキングや、クリアまでのタイムを競うタイムランキングなども、ある意味では「統計表示」の一形態と言えるかもしれません。

ただ、上位のスコアランキングが見れるだけでは自分のプレイの振り返りになりませんし、例えばソーシャルゲームでよく見かける、
「あなたは69235位です」
のような数の多すぎる順位表示では、それが凄いのか凄くないのか全く分からない問題もあります。

これを「あなたは上位から40~50%の間に入っています」のような数字の出し方をすると、実感として少し分かりやすくなるかもしれません。

また、『スーパーマリオメーカー』ではプレイヤーが制作して投稿したステージの「クリア率」が統計データとして表示されます。

クリア率1%なら殆ど誰もクリアできない激ムズステージ。90%なら誰もが殆ど初見でもクリアできるステージ。40~50%くらいなら程よい難易度のステージ、というように遊ぶステージを選ぶときの指標になっています。

TVのクイズ番組で「一般人の正解率は何%」というのをよく見かけますが、それも同じ考え方と言えるでしょう。

考えてみましょう

あなたの遊んでいるゲームや、開発しているゲーム、構想しているゲームで、ユーザーのプレイ記録を取りそれをゲーム中で表示するとしたら、どのような箇所が考えられるでしょうか。

各ステージのスコアでしょうか。実績の達成率でしょうか。隠しアイテムの取得率でしょうか。対戦ゲームであれば使っているキャラや、武器の人気度でしょうか。

また統計データに連動して、ゲームバランス自体が変わるといった仕組みも考えられるかもしれません。(不人気の武器の方が強くなる、など?)

(※一つ注意点ですが、プレイヤーの行動データをサーバで集計したり公開したりする場合には、プライバシーポリシーの制定や、ユーザーからの同意取得などが必要になる場合もあるため、その点は気をつけましょう)


皆さんも一緒に色々とアイデアを考えて、より良いゲーム作りのための鍛錬を積んでいきましょう。

本記事がゲーム制作をする皆さんのインプットに役立てば幸いです。

本連載の趣旨については下記記事をご覧ください。

他の連載記事はハッシュタグ「#ゲームデザインの引き出し」からどうぞ。

(※本記事中のゲーム画像は、「引用」の範囲で必要最低限の範囲で利用させて頂いています)