クロスバイクを巡るドラマ① 2Fにある自転車屋
これはもはや自転車通勤しか無い、そう思ったのは朝の渋滞の車中。イラつきをぶつける相手も見付からず、TVキャスターの笑顔で中和する。私の住む県庁所在地は人口40万そこそこだが、空襲を受けておらず道が狭いせいか渋滞が酷い。40年ちかく前の学生時代から運転はしているが、ここまででは無かった。雨の日が特に酷いので我が子を車で送迎する親が珍しく無くなっていることが大きな要因のように思う。この原因追求はまたの機会に。
片道4.5kmに毎朝40~50分かかるストレス、信号が変わって交差するドライバーに睨まれながら鼻先を突っ込む時のストレスに耐え続けた結果、思い立ったのが自転車通勤。計算すれば分かると思うけど、時速5kmの超スローマイカー通勤でSDG'sクソ喰らえってやつ。引越してから運動不足にもなっていたし、オシャレなクロスバイクを買おうと決めた。
地図アプリで検索すると十数か所の自転車ショップと☆が並び、クチコミも目に入って来る。良いと思った人もいれば悪態を付いている人もいるので3点台がほとんどの中、5点の稀有なお店を発見。外観写真やコメントを掘り下げて見てみると、少数のサクラでも無さそうで、本当に良いお店のよう。しかも通勤路沿いにあるのに全く気付かなかったけど、それもそのはず、なんと自転車屋さんが小さなビルの2階にある!
すぐ訪れたかったけど、平日と土曜日の正午から18時の営業なので仕事帰りでは間に合わず、都合の付く土曜の午後を待つしか無かった。それ以来、毎朝お店の前を通って「Kサイクル」の看板を見るたびに不思議と、郷愁と言うか懐かしさのような感覚を覚えた。待ち焦がれた2週目の週末にチャンスが訪れ、ショップへ足を運んだ。小さなビルの1階には昭和レトロなカフェがあるものの定休日。その隣の小さな階段に「ご自由に使用してください」という貼り紙と自転車ポンプが置いてある。この世知辛い世の中で一気にファンになりそうな予感がしつつ、ぎろっと睨みつけるように設置された監視カメラの前を通って重たい鉄板ドアを押し開けた。
所狭しと自転車が並び、縦にも積んであるので正確には分からないが、12~16畳くらいの小さなスペースのお店の奥に、ビックリしたような表情の小柄で若い店主さん。その顔をジーっと観察してから、一言二言話したら、毎朝お店の前を通るたびに感じていた不思議な感覚の答え合わせができた。
<続く>