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「八葉の栞」Tatsuo Shimojimaさん作品を読んで【創作大賞感想】

今回拝読させていただいたのはこちらの作品になります。

「八葉の栞」
雰囲気のあるタイトルです。
栞が八枚ということでいいのでしょうか。
それとも他の意味が……?

あらすじ感想

探偵事務所という言葉が出てきたので、一瞬「ミステリー小説だったかな?」と思ったのですが、ファンタジーなんですね。
「他者から忘れ去られる能力」という不思議な力、とても気になります。
長く生きていると、「私のことは忘れて欲しい」と思うことってありますからね。消えたい時とか、誰かの幸せを祈る時とか。
なんだかとても面白そうなあらすじです。

「八葉の栞」感想文


4月5日

プロローグ

桜舞う川のほとり、美しい春の情景から始まります。
何か深い悲しみを想起させる、懐かしさの気配。
これは、どうつながっていくのでしょうか。

3月25日

第一節

YouTubeで時々見かける、勝ち組のモーニングルーティンのようなスマートな朝です。かっこいい。

第二節

「木のぬくもりと自然光が融合したモダンな空間」
そっかぁ、こうやって書けばいいんだ……。上手いなあ。
マンションの広告みたいに頭の中で映像が浮かびます。
私はインテリアの説明に苦戦することも多いので、勉強になりました。

そしてジョシュ。
いよいよファンタジー要素来ましたね!
これから活躍しそうで楽しみです。

第三節

ネコさま、は人間じゃないから、ふたりには入らないのか……。
ふたりの「り」は「人」だもんね、なるほど。

涼介はかっこいいんですね。やっぱりな~。
だって、勝ち組の朝の人だし。

そして、「はるり」という名前が登場します。
不思議な名前です。
他の登場人物はそれほど珍しい名前ではないのに、はるりだけ特別な印象です。

第四節

わかりやすいくらいロックな身なりをしている男性が登場。
音楽やってる人なのかな?
ネコを可愛がろうとしたり、週に3回も手作りカレーを食べに来ていたり、かすかに頬を染めたり、かわいいな! 

第五節

すごい! ペンを持って文字を書くネコ。
この世界にネコが喋る話はたくさんあれど、文字まで書くのは珍しいのではないでしょうか。ここまでとは予想していなくって感動。
意外と長々書かれているようですが、ネコにもペンだこはできるのでしょうか。

真也の記憶

第六節

一般的な男性の朝(?)ですね。
二日酔いを熱いシャワーで吹き飛ばし、濃いコーヒーで目を覚ます。
健康的ではないけれど、親しみが持てます。

私はレコード時代末期くらいに産まれてきたので、レコードと聞くと懐かしいです。
どうでもいいけど初めて買ったレコードは光GENJIのシングル『STAR LIGHT』です(本当にどうでもいい情報)。

やはり、音楽やってた人なんですね。
「人の夢はどこから生まれて、どこに消えてくんだろうな」
が、ずっしりと心に残りました。
ほんと、確かにそう思うわよねぇ。

第七節

ちょっとちょっと~、セキュリティーの話をしちゃダメだよ~!
これ絶対ヤバいやつでしょ……。

第八節

突然の甘いバラード。
でも、自分が嫌だからと言って店員さんに「好きじゃないな」って言うのはどうなんだろ。そして無言で去るとか。
こういうレコードショップではよくあることなのでしょうか。

第九節

事件だ! 事件が起きましたよ!

3月25日

第十節

この事件の情報まとめがありがたい!
頭の中が整理されるので、読者にめっちゃ優しいと思いました。

第十一節

そう! 私もそれが気になってた!!

真也の記憶(音の栞)

第十二節

私の推しの友達である、ロックンロールを愛する某キャラクターを思い出しました。
「音楽は魂の叫びだ!」みたいなことをよく喚いてる。

第十三節

記憶の消失、謎の女性。
覚えていないことが自分の体験として描かれる不思議。

第十四節

花粉、爆散!!
私は花粉症ではないのですが(北海道ではひどい花粉症の人が少ない気がする。スギが生えてないからかな)、噂に聞くだけでも大変そうで……。
真也さんの涙が印象的でした。かわいそう。


重要なお知らせ

思った以上に読むのが遅くて感想文が全然進まないので、一節ごとの感想はここまでとします。
ここからは章ごとに書き、それから全体的な感想になります。
お楽しみに!


第二章

犯人は予想していましたが、動機については意外でした。
いいやつじゃん、犯人……!
男の友情っていいですね~、実際(リアル世界)のところはわかりませんが、バディものが流行るのもわかります。うんうん。
私も長く親友をしていてくれた人が男性だったのですが、深い絆を感じられて、とても幸せな日々を過ごしました。男の友情はよい。いや、私は一応女だけども。

ハイネケン懐かしいです。ビールは最後まで飲めないこともあるのですが、ハイネケンは飲みやすいですね。

はるりを追いかける涼介。
その中で浮かび上がる、知らなかったはるりの人生。
なんだかいろいろ思いだして切なくなってしまいます。
無駄な無駄じゃない経験をいっぱいしてきてしまったので、すぐ感情移入してしまいがち。

いつも情景が美しい。
特に章や節が切り替わった冒頭部分にある情景描写は、脳裏に鮮やかに浮かびます。
常日頃からの観察力や感受性のたまものだと思います。
本当に素敵。

はるりとの出会いがすごくびっくりでした!
でも、それが理解できる気がするくらい、この世ならざる美しい風景の中で、出会っちゃったんでしょうね……。

プリンは食べられる宝物。
ひとのものを勝手に食べてはいけません。

にゃんこが逆立ちって……凄すぎる!
どういう重心なんだ、体幹鍛えてるのかな?

涼介さんが子どもの頃に襲われた事件の内容がわかる。

龍五郎さんの記憶ヤバすぎん……。
執拗なわりに気が軽いというか、節操ないですね。

涼介と玲於奈さんの関係も、かわいそうというか。
うちの満里奈(『紅茶の時間』)と立場が似てると思いました。
玲於奈さんにも幸せになって欲しいなぁ。

第三章

え??
茉莉花さん??? 突然何を? マジで??
……とびっくり。

二十年以上昔、『ねこ爆弾』という必殺技を使う漫画を描いたことがあるんですよ。すっかり忘れていたんですが、かなり経ってから当時の読者さんが「あれは面白かった!」と言ってくれました。
闘う猫はとても良いですね!
狩りをする生き物ですし。
『ネコ百裂拳』もなかなかのものだと思います。見てみたい。
映画化希望。

はるりの姿がだんだん浮かび上がってきます。
佳乃さん好きです。

オーナーのカルボナーラの試食、私も参加させて下さい。

第四章

ここで、はるり探しに関するこれまでの情報がまとめられます。
本当に読者に優しい。ありがたい。
それにしても、ずいぶんはるりのことがわかってきましたね。

さらに、過去のはるりの環境が明らかになっていきます。

えっ……?
は??
どういうこと???
たぶん作者の目論見通りにおろおろしてしまいました。

第五章

そして全てが明らかに……。

そうかな、まさかね、でも、そうなるかも……。
と思っていた最悪の展開が描かれて、ちょっと情緒がアレなことになりそうでしたが、最後は花びらのように柔らかく、春の日差しのようにあたたかく、ふんわり着地してくれました。
よかった、と思わず声が漏れるくらい。

まとめ

とにかく美しい情景描写です。
物語の中にある空気感が感じられて、没入感が高まります。

ジャンルはファンタジーですが、人捜しが中心にあり、そこに至るまでの謎を解いていくという、ミステリのような感じです。いや、宝探しかな?
伏線回収もしっかりしていて、「ああ!」「なるほどそうか~!」なんてひとりごと言いながら読みました。

ちなみにひとりごとって、脳や心にいいらしいですよ!
コツはポジティブな言葉にすることだそうです。

それはさておき、骨組みのしっかりした作品だなと思いました。
プロットかなりしっかり組んで書いているのではないでしょうか。

長編ですし、「不思議」と「謎」の多い話で、うまくやらないとごちゃごちゃ難解になりそうですが、この作品は読者にわかりやすく整理できていて、スッと入って来ました。

いくつか出てきた不思議な能力の中で、一番印象に残っているのは「ネコがペンで長い文章を書く」ということ!
これはすごい。本当に見たい! 映像化しないかなぁ。
猛然と紙にペンを走らせるネコを想像しています。

それから、魅力的な登場人物。
序盤の隼人は微妙な役どころでしたが、最後の隼人とか、めちゃかわいいじゃないですか。本当に良かった。

個人的にはパンクロックの真也くんが好きです。
やっぱり魂の叫びですよねぇ~。うんうん。
私もロンドンに行こうかな。

よく見ると、隅々までいい人が多い。
玲於奈さんも龍五郎さんも、真の悪人ではないし。
私は結構、玲於奈さん好きですよ。

物語はミステリっぽいけれど、全然殺伐としていない。
そういう意味でもファンタジーなのかもしれません。
そういうほんわかした感じが、重めのストーリーを優しく包んでいます。
ふたりにも、みんなにも、幸せに暮らして欲しいな。

素敵なお話をありがとうございました!


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