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作品の完璧なストーリー

いつも思う。
作品を作ったそのとき
作者は何を考えていたのか。

ふつう、店に並んでいる作品は
そういうことを説明しない。

でも、だからこそ
作品にはストーリーが存る、
とも言える。

語弊を生むかもしれないけれど
説明されたものより
説明されないものの方が
ずっと上だし、
ストーリーとしても完璧だ。

説明抜きで心動くのが人間だし
ストーリーは自分で
思い描くこともできる。

だから昔から
ストーリーなしでも完璧な
ぬいぐるみに惹かれてきたし
憧れる。

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これは雨粒のぬいぐるみ
ドロップちゃん(art work:山本ヨーコさん)。

手に取ってみないと
細部はわからない。

正面からはパッチワークも
胸のハートマークも
手のクローバーもよく見えない。

手に取ってみても
ドロップちゃんがどうやって生まれたのか
みる人には全然わからない。

それでも水色に染められた布
古着のパッチワークから
ドロップちゃんに好感を持つし興味がわく。
作った人の想いも知りたくなってしまう。

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ぬいぐるみについていたお手紙からは
人となりや想いが伝わってくる。

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ドロップちゃんは
昔、譲ってもらった作品。
届いたとき期待以上に可愛くて
興奮したことを覚えている。

少し汚れていたので
手洗いして陽に干した。

どうしてこんなに
心動くのだろう。
ふっくら綺麗になったぬいぐるみを
しげしげと眺めた。

ドロップちゃんの
フォルムがまず私は好きなのだろう。
顔つきとか。
水色のところとか。
何といってもユーモラスなところ。

ユーモラスな顔の
とぼけたドロップちゃんを見ると
「世渡りが上手そうだな」と思う。

雨粒だけど
しっかりそこに居てくれる
ドロップちゃん。

ドロップちゃん自体にこれといって
強烈なインパクトがあるわけではないのに
良いなあ、
家に居てくれて本当に嬉しいなあ、
と思えてくる。

じっと見ているうちに
作り手の様子が伝わってくる。

アイディアを考えることとか。
素材を集めることとか。
制作の時間とか。

想像だけれど
やっぱりたしかに伝わってくる。

作品はそれ自体
説明やストーリーを入れ込む
っていうことなのだと思う。

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波長の合うぬいぐるみ
というのがある。

好き嫌いとは別の
もっと感覚的なもの。

ぬいぐるみと自分の感じが
しっくり合うというか
肌に馴染むというか。

私にとってドロップちゃんは
そういうぬいぐるみだ。

自分の家に飾ってあるのではなく
自分の心の中にいる
という感じ。

ドロップちゃんが自分の中にいる
というのは
どうかなあ、と思う。

私は意志の強そうな
可愛いもの
カッコいいものに憧れる。

たとえば hysteric glamourのファックベアとか
奈良美智さんの描く女の子とか。

そういうキャラクターに憧れるので
ドロップちゃんを自分の中に持っているのは
どうかなあ、と思う。

そう思わせることもアートだし
ぬいぐるみ作家・山本ヨーコさんの
技量なのだと思う。



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