読書雑記『茨木のり子集 言の葉』
私が茨木のり子さんの詩を読むのは、彼女の言葉が大好きだからだ。
ときどき思い出す、好きな詩のひとつに「汲む」がある。
自分の弱さを、それでいいのだと肯定してくれる。そして自分が傲慢になりかけていないか、背筋がすっと伸びる気持ちになる。
汲む、という言葉を美しいと感じたのは、この詩からだった。自分の気持ちを、相手の気持ちを、汲むことの優しさ。彼女の言葉は厳しいけれど、慈愛にあふれている。
ちくま文庫の表紙には、「小さな渦巻」という詩の一部が記されている。
「たくさんのすばらしい贈物を
いくたび貰ったことだろう
こうしてある朝 ある夕
私もまた ためらわない
文字達を間断なく さらい
一篇の詩を成す
このはかない作業をけっして。」
『茨木のり子集 言の葉 1』/茨木のり子著 /筑摩書房より
表紙の文だけでもう心が惹かれる。私は茨木さんの詩から、たくさんのすばらしい贈り物をいくたびも貰っていた。朝といわず夕といわず何度も。
この方の言葉は、渇いた心にすっと入りこんでくる。だから繰り返し読みたくなるのだ。
しみじみと、ああ好きだと思う詩がある。幸福をかみしめるように言葉を味わう喜びがあり、その気持ちが私を支えてくれる。
【読んだ本】『茨木のり子集 言の葉』全三巻/茨木のり子著/筑摩書房(ちくま文庫)