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明治〜昭和戦後まで 筆文字駅名標フォントを無料公開【商用利用可】

 明治初期の鉄道創業から、大正昭和、そして戦後の昭和35(1960)年、国鉄におけるスミ丸ゴシック制定まで、駅名標や各種看板に第一線で重用された、太字で力強く、ところどころ古風な筆致の筆文字をフォント化しました。
基本となる五十音+変体仮名三種の<無料版>と、字形のバリエーションやオマケを追加した<DX(有料版)>を公開します。
有料版についてはこちら:https://note.com/kan3kur3chann3l/n/n88d605f0a3e6

 明治〜大正〜昭和戦前、昭和中期、そしてその時代の鉄道を愛する方の創作活動のお手伝いに。
 さらに、まだこの趣味に参入していない潜在ファン層の方々へは、簡単に使える魅力的な素材と情報の提供によって、古い時代の鉄道趣味への門戸をより広く開き、敷居を下げることで、参入しやすい環境作りを目指しています。



いろいろ紹介

お前はだれだ

 Noteの投稿はこれが初めてですから、まずは自己紹介や趣味、フォント制作の経緯の説明を簡単に致します。
ンなのいらねぇよという方は、目次から「筆文字駅名標フォントについて」まで飛んでください。この項の内容はフォントの導入や利用法とは直接関係ありませんから、読み飛ばして頂いても問題ありません
 あと、ここに来る方で鉄道趣味者でない方は恐らくいないとは思われますが、本記事は初心者程度以上の鉄道趣味および戦前の世相の知識を持った方の閲覧を第一に想定したものですから、簡単な鉄道用語、鉄道趣味用語、歴史用語等ついては特に解説を致しません。
予め御諒承願います。


自己紹介

 Twitterから飛んできて下さった方には、ご存じの方もいらっしゃるとは思いますが…”鴨”(@Kan3kur3chann3l)というHNで、主にTwitter上で鉄道趣味に関する発信をしております。たまに鉄道以外の乗り物や物流、歴史、文学などの話もしてます。
 鉄道趣味では、明治初期の鉄道創業期から、昭和戦前期、30年代(=1950~60年代)の模型工作や車両、歴史研究を主に好き好んでいます。リアルのイベントにも、サークル「陸Jokies」(おかジョーキーズと読みます…)のメンバーとして参加するなどしています。
 ただ、まだ本格的に趣味を始めてからあまり時間が経っていないのと、遅筆(遅作?)かつ怠け者なおかげで、まだ作品と呼べるクオリティの模型のラインアップは、片手で数え切れるほどしかありません。鴨先生の次回作にご期待ください!


 普段から筆ペンでとりとめもないことを書きつくるのが好きでして(noteやTwitterのアイコンも昔書いたヤツ)、その中でも戦前(正確には戦後も使われますが)の駅名標の、右横書き、旧仮名、そしてなにより力強くぶっといあの書体が大好きで、よく臨書していました。
いつの間にか育ったこの技能を活かした活動をしたい、そしてスミ丸ゴシックの影に隠れがちな筆文字の魅力を伝えたい、という思いから、フォント制作に手を染めました。

普段からこんなの書いて遊んでます
右上のは国際鉄道模型コンベンションの展示です

最近の目立った活動をいくつか…


 明治時代の客車のディテール、車両の標記について調べたり。

 上述の写真もそうですが、いろんなアーカイブをほじくり返して、主に戦前の史料を漁ったり。
 ついでに言いますと、この「国立映画アーカイブ」は日露戦争期から昭和10年代の様々な動画を電子化、YouTubeチャンネルで定期的に公開してくださっています。
18900(後のC51)牽引、オテン28070などの木製大形3AB車で編成された特別急行1列車(後の「富士」)、大正末期の6760形、制式、古典木製客車、上野口でC54が2機同時に動いてる動画など、非常に貴重で魅力的な映像が見られます。皆さんもぜひ!

https://twitter.com/kan3kur3chann3l/status/1766556765628535247


同じくYouTubeをぶーらぶらして海外の古典列車をみつけては共有したりしてます。


筆文字駅名標フォントについて

長くなりました、ようやく本題です。
記事の最後に載せた利用規約に同意いただける方のみご利用いただけます。

ダウンロードはこちら(無料版)

「Fudeekimeihyo」は横書き専用、
「FudeekimeihyoTate」は縦書き専用になっています。
例えば「Fudeekimeihyo」で縦書きすると、カーニングとか字送りという、文字の幅をどれくらい取るか、隣の字との間隔をいくら取るか、などの設定が横書き用のままになっているため、表示が崩れてしまいます。
 もしかしたら一つのフォントに包含出来るのかもしれませんが、Fontforgeとまだ仲良くなれていないので知識が足りず、今回はこの形式と致しました。


2024/10/20/14:36追記
バージョン1.1に更新しました。
修正点
「く」の輪郭を太くしました
「を」の輪郭を太くし、若干大きくしました
その他軽微なカーニング調整

2024/10/22/14:42追記
バージョン1.2に更新しました。
修正点
「う」の輪郭を太くしました
「え」の変体仮名を新たに追加しました
 
(これについては「使用方」にて解説します)

旧版をインストールしている方は、「既にインストールされています。このフォントを置換しますか?」と警告が出ますので、「はい」を押してください。

動作確認できているのは、製作者の環境であるWindows11のみになります。他の環境で導入できない、表示が崩れる、見た目が汚い…などありましたら、作者Twitterにご一報ください。見た目の問題についてはなるべく早く修正します。動作環境についても可能な範囲で対応しますが、技術が拙いので対応しきれない可能性があることをお断りしておきます。無料版で動作に支障のないことを確認してから有料版(近日公開)を購入されることを強くおすすめします。
Macは恐らく非対応です。今後Mac対応版も公開するかもしれません。
2024/11/18追記
macOS14.5にて動作を確認しました。

導入方法

導入はとってもかんたん、ダウンロードしたファイルを開くと下のようなプレビュー画面が表示されます「インストール」をクリックして「インストールしています」という画面が消えたら導入完了です。WordかCドライブ>Windows>Fontsのフォント一覧に「Fudeekimeihyo」「FudeekimeihyoTate」が湧いているはずです。
変体仮名の於、志、津はカタカナに変換することで出せます。
Wordの閲覧モードや印刷プレビューでは、行末に謎のミッシンググリフ(◽︎みたいなの)が表示されますが、PDFに変換すれば消えます。印刷しても消えます。

導入についての案内は以上です。
「フォントだけくれりゃあとは勝手にやるさ」という方は、ここで閉じていただいて問題ありません。(利用規約はよんでね)


活用方

  • 戦前から昭和30年代前半までの駅名標に使えます(そのために作りましたからね)

 先述の如く、国鉄では昭和35(1960)年、国鉄フォントとして名高いあの「スミ丸ゴシック」が制定され、筆文字は姿を消し始めます。
ただし、今でも地方を中心に国鉄様式や古めかしい掲示が残っているように、当時もすぐに消えたというわけではありません。ローカル線や地方私鉄を中心に、経年劣化などで更新されるまでそれなりの量が残存していたはずです。
というか今でも僅かに残ってます。(さすがに戦後製が大半)
 なので「うちのレイアウト/イラスト/漫画の時代設定は1962年だから使えないや…」という事は、東京駅や大阪駅など都市部でもない限りありません。想像以上に幅広い時代に使えます。
 昭和後期、末期の地方私鉄の侘しいプラットフォームに建つ、かすれた筆文字の駅名標、この駅のはひときわ古く旧仮名だ!なんて、いい感じじゃないですかヤダ-


  • 別に駅名標に限らんでもいいじゃない?

 詳しくはまた今度、機会があればご説明しますが、明治から大正前期までは、行先標、サボってやつですね、コレも大体駅名標みたいな字体で平仮名の右横書きでした。
「行とうやき」「行しばん志」(志は変体仮名、無料版でも収録しています)
 といった感じ。平仮名のみの収録なので案内看板などでは使える場面が限られてきますが、「のりば」「ゆき」「おねがひ」なんかに使えるのでは。


・イラストやら

 「イラスト/同人誌/3Dモデルのテクスチャ…に筆文字を使いたいけど、字が下手なのでそれっぽく書けない、明朝体とかじゃ雰囲気出ない」
などの場面でもお役に立てることと思います。


  • とにかく古風でいい感じのフォントが欲しい

 江戸と明治は隔絶されたものではなく、地続きに連綿と変化していったグラデーションです。明治以降の鉄道に限らず、街道沿いの茶屋やお店の屋号に「だんご」「め志」「津たや」「いせや」みたいにあしらえば、あら素敵、江戸の名残色濃い街道の雰囲気です。(津は”つ”の変体仮名、無料版に収録)

と、こんな感じで使う楽しみいっぱい!キミだけの使い方を見つけちゃおう
なお、Wordで編集して印刷する場合は、一度PDFに変換することをお勧めします。docxファイルだとフォント情報が反映されないことがあります。


戦前、筆文字駅名標かきかた指南と考証

戦前の駅名標なんかどうやって書きゃいいのさ?への拙いアンサー
御参考程度に…

 間違いや重要な要素の欠落などが多分に考えられますので、お気づきの方はよろしければ作者Twitterなどにお知らせくださると幸いです。

明治時代


 大前提として、戦前駅名標はほとんどが右横書き歴史的仮名遣いです。
実は例外もわずかにあるのですが、詳しくは後ほど。そして、建植式(ホームの地面から生えてる鳥居型のヤツ)が白地に黒文字、ホーム屋根から吊り下げるやつは大体二回りくらい小さくて、これと柱にかける縦書きホーロー看板のやつは濃紺(規程などではよく群青とも書かれます)地に白文字です。
吊り下げ式で白地に黒文字のは戦後のタイプです(遅くとも昭和25年までに濃紺からこのタイプに変わっているようです)。

 まずはいちばん最初、明治5(1872)年の鉄道創業のころから御説明申します。このころの駅名標は…正確なことがわかりません。何せ規定が残っておらず、写真もほとんどありません。
まぁ待ってください、それでも大まかにはわかります。
 横山松三郎撮影の開業直後の鶴見停車場の写真のトリミングです。
「つ」が変体仮名ですね。現行の書体は「川」を崩したものですが、これは「津」を崩したものです。変体仮名についても後ほどまとめてお話します。
 創業期の駅名標の写真はこれが唯一の現存といわれます。(今後発見される可能性もありますが。)

横山松三郎氏撮影

 詳しい方は、「あれ?大宮の鉄道博物館で150形(1号機関車)の近くに建植されてる新橋のは?」とお思いになるかもしれません。
1号機関車と「最古客車」と一緒に展示されているので紛らわしいですが、あれは恐らく明治39(1906)年の規程(明治三十九年七月廿七日 達一〇四号 駅名標形状寸法様式ノ件附属図)に基づくものです。明治も終わりの頃ですな。

筆者撮影

 鶴見のヤツと比べますと、古いほうは漢字表記がありません。さらにローマ字は”TSURU MI”と分かち書きのようになっています。
 また、新橋の方はローマ字が”SHINBASHI”となっています、戦後の国鉄や現行の表記では”SHIMBASHI”となります。ヘボン式というやつですね。外国人が成丈正確に発音できるように出来てます。
 ではこれは訓令式かというと、そうでもありません。そもそも訓令式の誕生は昭和のお話です。表記は後述の明治31年制定の表記に従ったものと思われます。末尾にピリオドが付くのも共通しています。
このピリオドは、様式が改定された後の大正2年発行の図面でも確認でき、3年発行の規程類抄附録では消えています。
 ローマ字は今に至るまでJYUみたいな表記がまかり通るなど混乱が続いています(訓令式ならZYU、ヘボン式ならJUになる)。
明治時代ともなれば尚更のことでしょう、「当時はこうなんだな」で納得するほかありません。


(以下、2024-10-22-9:56以前にキャプションに記載していた文(取り消し線部)を本文に移動し、追記を載せました)
「づ」、「ず」、「しゃ」行などのローマ字がどのような表記になっていたか気になるとこ
もっと昔の鶴見が”TSU”になってるし、私は勝手にヘボン式に近いスタイルなんじゃないかなと思ってます(根拠なし)
追記:明治31年制定の仮名遣い、ローマ字表(明治三十一年五月六日 鉄工第一〇二四号別表第一号)が国会図書館デジタルコレクションにありました。親切にもご教授下さった方には御礼を申し上げます。
規程はこちら

明治31年の規程より、特徴的なローマ字の綴りを抜粋します

  • 「ず」「づ」はDZU(例:KODZU*なぜか長母音のマクロン(Ō)がないが、理由不明。他の駅名でも不規則にあったりなかったりする)

  • 「え」はYE(例:YEJIRI、UYEDA)

  • 撥音の「ん」は、後に何の音が来てもNとなる(例:SHINBASHI、GOTENBA)

明治39年式は規程に基づく見本の図面が残っていて、国会図書館デジタルコレクションで誰でも見ることができます。

寸法まで細かい規定が残っています。
出典はこちら(国会図書館デジタルコレクションに飛びます) 

大正~昭和戦前期

 明治末期、44(1911)年に前後の駅名とその距離(マイル表記)、停車場の所在地名が追加された模様です。またローマ字表記は、大正5年12月21日の鉄道公報第1312号でヘボン式とほぼ相違ないものに変わります。新橋なら今と同じSHIMBASHIになります。(原典のローマ字表を見ていないので先述のDZUなどがどうなるのかわかりませんが)
参考:https://srad.jp/~yasuoka/journal/531235/

明治44(1911)年制定の様式(この附録の発行は大正2(1913)年)
出典はこちら

変体仮名は明治33(1900)年から学校教育で使われなくなり(これによって「変体仮名」という概念そのものが生まれるわけですが)ますが、同じお上の機関たる鉄道では、その後もズルズル使われています。

仮名の種類については、先述の明治31年の規程によって制限されています。すなわち、

  • 「志」(「し」の変体仮名)は語頭にのみ使用する

  • 「お」は変体仮名の「於」(下の大阪駅のものと同じ

  • 「え」は変体仮名の「江」(下の画像のもの)

です。ただ、私の浅学寡聞ゆえ、「え」の変体仮名が実際に書かれた駅名標の写真などを見たことがありません。どなたか絵葉書などで「江」の書かれたものをお持ちでしたら、ご一報下さると幸いです。

現行字体の「え」は「衣」を崩したもの
この「え」は「江」を崩したもの
筆文字駅名標フォントより抜粋
ビジュアル版日本の技術100年3 造船 鉄道 筑摩書房

「あれ?じゃあ津は?」
 そうなんですよね。そもそも津は、(私が見た中では)明治初期の鶴見駅の物しか現物を確認できません。於と志は明治後半以降のものを二つ以上確認できてます。
 これも「明治31年規程」から経緯を類推できます。
先程から引用してる規程に付随する、明治三十一年五月五日 鉄運丙第564号には、
各駅々名建札字体ノ義 従来区々ニテ万葉仮名ニテ記入セシモノモ有 之種々ニテ普通人ノ誦読(しょうどく)難致モノ(原文ママ)有 之ニ付 各駅名ノ字体及ヒ仮名づかひ方別紙ノ通一定候間 右(「別紙」の仮名遣い及字体)ニ相異リ候分ハ此際悉(ことごとく)皆塗換 夫々(それぞれ)改修御取計(おとりはかり)相成度(なしたく)此段及御照会候也
とあります。
まぁつまり、「駅名標の書き方がバラバラで読みづらいので統一するのでこの通り書き換えてね」的なアレです(ニュアンス違ったらごめん)。
 ここから、「従来区々ニテ〜記入セシ」字体の中に「津」があって、字体統一に際して収録されず、明治31年以降「つ」に書き換えられたものであろうと推察ができます。

まーともかく、本フォントではこれも収録してますので、お好きにお使い下さい。変体仮名かっこいいよねぇ〜
 ちなみに大正時代にも「そ」の変体仮名があったという伝説がありますが、規程上の記録も写真などの直接的証拠も見つかっていないので、少なくとも無料版には収録しません(有料版にはオマケ的要素としていれるかも。決まったら改めてお伝えします。)。


余談:一瞬で潰えた片仮名表音左書き

 時は昭和2年、昭和も始まって間もない頃、省線(鉄道省の路線=国鉄線)の駅名標は全て、大正時代からの数年来の研究の末、ゴシック体、片仮名、左横書き、表音仮名遣いに変更するという決断がなされます。戦前は全部右書きじゃないの??と勘違いされる向きがいまだ根強いですが、実は昔から左書きと右書きは併存してます。

ほとんど残っていない片仮名左書きの駅名標
表音仮名遣いといっても戦後の現代仮名遣いとはいくらか違うようです
字体は視認性を最大限考慮し、800円の懸賞を以って省内で募集し、決定されました。
丸っこくてスミ丸ゴシックにちょっと似てますね
出典はこちら

新様式は昭和2年4月7日に施行され、更新が始まりますが、このころ鉄道大臣が代わって小川平吉が就任します。国粋主義者と評されることもある彼ですが、5月4日に至り急遽改定は中止せられます。
 改定を推進してきたカナモジ会や新聞社は猛反発、帝国議会でも関係する質問が出ましたが、ともかく駅名の左書きは第二次大戦後を待つことになり、片仮名書きは少なくとも国鉄では永久に葬られます。個人的には旧仮名筆文字右書きの時代が長引いてくれてありがたいところ
 今の世にも大正モダンがどうのこうのと明治や昭和も一緒くたにして面白がるたのしい風潮がありますが、実際戦前は、現代人の偏見を通したいわゆる「戦前」とは似ても似つかぬほど進取の気風に富んでいました。(まあ小川大臣みたいのも居んじゃんって話ですが)鉄道省への投書も左書き支持が多かったようで。これらの話も上の画像の出典から読むことができます。
 ちなみに、一部で国粋主義者で右翼の小川大臣が「駅名標のローマ字書きも削除した」という話が流布していますが、これはお粗末で真っ赤なデマです。小川大臣は国粋主義者でしょうけど、戦前の省線の駅名標の写真を見れば、大体どれもローマ字が書いてあるのは一発で分かることです(なんかたまに規程にそぐわない様式が見受けられますが)
 私鉄に目を向けますと、このころの運動の成果か、阪和電鉄(戦時に買収、現阪和線)の駅名標は、平仮名左横書き表音仮名遣いです
長々書きましたがこの様式には本フォントは対応していません
余談おしまい


戦時体制~

 しばらくはこの平仮名、歴史的仮名遣い、右横書き、下に前後駅の記載、欧文はヘボン式、という様式が続きます。前後駅との距離、所在地名については、詳しく分かりませんでしたが震災以降、昭和一桁から10年代くらいの間に無くなっています。
前後駅との距離表示の削除は防諜上の理由とも聞きますが、詳しいことは存じません(見たけど忘れてるかも)。どなたか詳しい方がいらっしゃったら情報提供いただければ助かります。
 昭和13年3月から、欧文表記がヘボン式から訓令式に変わります。
これは駅名標に限らず、鉄道省で使われるローマ字に全面的に訓令式を採用しました。

富士はFUJIからHUZIに(昭和17年撮影)
出典はこちら

戦後

 終戦直後の変更は正確な時期が不明&一気に変わりますので、箇条書きで列挙します。

  • (恐らく進駐直後)ローマ字がヘボン式に戻る

  • 昭和21年?日本語表記も左横書きになる

  • 昭和22年?平仮名表記が現代かなづかいになる

  • (恐らく進駐直後~遅くとも昭和23(1948)年)ローマ字が表記が大きくなり、前後駅名にもローマ字が併記

 駅名標の左書き開始or決定の時期を「昭和20(1945)年10月19日」とする向きが一部にありますが、これは朝日新聞で駅名標が左書きになることが報じられた日であり、決定や開始は別と思われます。


所在地表記も戦後のどっかしらのタイミングで復活してるのでしょうが、ようわからんです。スミ丸ゴシック制定後かも。

多分この様式(主権回復後は英語表記が小さくなってるか?)で、昭和35(1960)年のスミ丸ゴシック制定を迎え、国鉄の駅名標では第一線を退き、徐々に消えゆく存在となります。


この後も更新の遅れた地方や私鉄ではよく見られたはずです。
国鉄では一貫して拗音も大文字でしたが、私鉄では小字を使う例が散見されるので、小字も収録しました。お好みでご使用下さい。

 ちなみに新山口駅にある「おごほり」と書かれた戦前の駅名標のレプリカ。
アレは残念ながら仮名遣いが辞書上の正解から見れば間違ってまして、「小」を「オ」と読むときは仮名遣いは「を」になります。
 表記が現代仮名遣いとかけ離れていれば離れているほど美しいという謎の持論をもつ私に言わせれば、そして鉄道趣味上顧みられることの少ない戦前にスポットを当てたアイテムとして、なんとも惜しいことです。私が建て替えに行きたいくらい。ただ、明治、昭和戦前期の双方で、駅名標の仮名遣いが、規範となる規程からして、辞書を引いて出てくる仮名遣いと食い違っている例が散見されます(直江津を「なをえつ」(正しくは「なほえつ」)、小山を「おやま」(正しくは「をやま」)など)ので、小郡もその例により実際に「おごほり」と書かれていた可能性はあります。

 山口線の他の駅にもレプリカがあるんですが、それらはやたらと変体仮名が多く、国文学を修めた人か相当な好き者でないとすんなり読めないようなシロモノですが、個人的には死ぬほど大好きです。
(山口線は開業時から国鉄線なので、考証としては微妙なところですが、地方だとあんな感じだったんでしょうか。明治時代の私設鉄道だとああいう調子のヤツもあります。関西鉄道とか。)


終わりに&有料版について

 ほとんどが直接関係ない話に終始しましたが、ここの情報を参考に(しなくてもいいです)、ぜひみなさんも戦前駅名標の魅力に取り憑かれてくださいね!
 特に古典界隈は実車を見た指摘厨がみんなこの世にいないので自由に楽しめます。(ただし相当研究されてめちゃくちゃ詳しい方はいます。)
また、先ほども述べましたが、戦前に限らず昭和の地方地鉄や軽便鉄道の装飾にもうってつけです。
是非ご活用ください。

令和6年11月17日追記

有料版を公開しました。価格は1600円です。
販売ページはこちら:https://kamoworks.base.shop/items/94700033

気に入っていただけましたら、サポートもぜひお願い申し上げます。


「筆文字駅名標フォント」利用規約

2024年11月16日23:54改定

  • 現状動作確認が出来ているのは、作者の環境であるWindows11のみです。その他の環境での動作の確約はできません。

  • ()macOSは非対応です。(正確には未確認です) macOS 14.5にて動作確認ができました。Macでもお使いいただけますが、不具合が発生した場合の修正は遅れます(作者がMac環境を持っていない為、知人に確認してもらいながら対応することになります。)。

  • 他の環境で導入できないなどありましたら、作者Twitterにご一報ください。可能な範囲で対応しますが、技術が拙いので対応しきれない可能性があることをお断りしておきます。対応できなかった場合は御返金致します。

  • 有料版購入後の返金は原則お断り致します。無料版で動作に支障のないことを確認してから有料版を購入されることを強くおすすめします。事情のある方は作者までご相談願います。

  • 表示が崩れる、見た目が汚いなどありましたら、作者Twitterか本記事のコメントにてお知らせください。なるべく早く修正致します。

  • 作者を明示しない、自作を騙った二次配布や改変は禁止致します。

  • 作者を明示した上で、無料版を有料版に準じた内容に改変する等、当方の利益を侵害するものでなく、かつ非営利での改変、またそれらの成果物の配布はご自由に行なって頂いて構いません。 問い合わせは義務ではありませんが、当アカウントに一言下さればうれしいです。営利目的の改変、配布は作者にご相談下さい。

  • (2024-10-20-2:46追加)本フォントを使用した模型、映像、イラスト、CG作品などの成果物を公表する際には、キャプションやエンドクレジット等に「筆文字駅名標フォント」の名称と作者「鴨」或いは「@kan3kur3chann3l」を明記して下さい。

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