コロナ時代のうつ病
昨年の末、薬局に若い留学生カップルが来られました。
彼女さんが体調を崩し、漢方薬で治して欲しいとの事でした。
話を伺うと、日本に留学に来てまもなくコロナが世界中に広がり、ずっと帰国ができず、徐々に気持ちの不安が強くなり、一昨年の末から心療内科に通うようになったそうです。
昨年の春頃は不安も落ち着いて来て、心療内科の薬を止めたものの、夏頃にまた症状が悪化し、心療内科での治療を再開しましたが改善が見られず、最近は希死念慮とペットを傷つけてしまいたい衝動を抑えられなくなり、自分の身体を傷つけて落ち着かせている状況でした。
彼女は色白で小柄な可愛い今時の女の子で、来局した時には弱り切っていました。
話をするのがやっとで、目も開けづらい状態でずっと彼氏さんに寄りかかっていました。食欲がなく、あまりご飯が食べられてないようです。その上睡眠が浅いため目が覚めやすく、手の震えと片頭痛も辛そうでした。また不正出血がずっと止まらないようでした。
他にもイライラと落ち込みが交互にでたり、全身の痛みや、耳鳴り、めまい、蕁麻疹がでたり、呼吸困難になったり、便秘したりで散々でした。
これだけの症状が出ると何処から着手するか迷う気がしますが、漢方医学の急則治其標(急ぐときは激しい症状から治す)の原則に基づき、肝(自律神経系)と脾(消化器系)のバランスを取る事と不正出血を止めることを優先に考えて治療をスタートしました。
そして2回目に来局した時には大分気持ちが落ち着いていて、会話も普通にできるようになっていました。不正出血も止まっていました。私は緩則治其本(緩やかなときは根本を治す)の原則に基づき、健脾益気の漢方をすすめました。胃腸を元気付ける事で消化吸収能力を高め、体力を取り戻す方法です。
それから約1か月後には殆どの症状が改善され、学校にも行けるようになりました。
どう考えてみても難しそうな症状が1ヵ月弱の期間で改善したのは漢方医学の知恵があったからこそだと思います。
漢方医学では人の喜怒哀楽は五臓が主ると言います。よってバランスの取れた五臓があって人間は初めて穏やかになれるのです。
メンタル疾患は治しにくく、再発率が高い病気だと認識されていますが、諦めず漢方の力を借りて見ては如何でしょうか。
どんなに難しい病気でもその根本的な原因を見分け、適切なアプローチをさえして行けば改善するのは難しくありません。
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中医学アドバイザー 井上松春
薬剤師 早川友樹
誠心堂薬局 池袋店
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