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「ラストマイル」を観て

「ラストマイル」という映画を観た。
観てからしばらく経つので、細かい部分は
忘れているし、観た直後のテンションは
だいぶ落ち着いたように思う。

けれど、自分のなかでこの映画は
結構印象深かったので感じたことの
ほんの一部ではあるが、感想を残したい。

登場人物について

この映画のキーパーソンは、満島ひかり演じる「舟渡エレナ」だろう。
最初のシーンから、最後まで、視聴者は舟渡エレナに惹きつけられることになる。

彼女はとても有能なビジネスパーソンだ。
情報の処理能力が高く、自信にあふれていて、
ファッショナブルな外見。とても分かりやすく描かれている。

それでいて、外資系らしくフラットあるいはカジュアルな態度で部下である「梨本孔」とコミュニケーションを取る。

でも、どこか完璧ではない。違和感を感じる。

私はその違和感に引っ掛かりながらも目が離せなかった。

舟渡エレナは、自分の所属する組織のためなら
羊急便に平気な顔をして圧力もかける(ように見える)

そして、自分の評価を落とさないための社内政治もだいぶお手の物だ。

言いたいことも言うし、言い返す。

この手のドラマでよくありがちな正義感振り回す感じの人物では決してない。

亡くなったひとを「可哀想だとは思うけど、よく知らないひとだし」と言うし、100%の善人でもない。

おそらく強かに生きてきたのだろう。
そう、ここは強く、合理的でないと生き残れない。
強者だと思っていた舟渡エレナも、
結果としてそうではなかったのだが。

弱いものは淘汰され、勝ち残った強いものでさえも
システムの歯車に組み込まれていくのだ。

主題歌の「がらくた」


それとは対比して、米津玄師の主題歌「がらくた」がとても優しい曲だった。

例えばあなたがずっと壊れていても
二度と戻りはしなくても
構わないから僕のそばで生きていてよ
どこかで失くしたものを探しに行こう
どこにもなくっても
どこにもなかったねと 笑うふたりはがらくた

米津玄師/がらくた


よく傷ついた分だけ優しくなれる、というが、いちど壊れてしまったら人の心は完全には戻らない。

だからこそ、壊れてがらくたのようになってしまった、あなたでも構わないからぼくのそばで生きていてよ、と願いが込められたこの歌はとても優しい、と思った。

山崎佑と、筧まりかのふたりが、せめてこの曲のように生きることができたらよかったのに、と願わずにはいられなかった。

これはハッピーエンド?バッドエンド?

ラストの終わり方は、限りなくバッドエンドに近いと個人的には思った。

「爆弾処理してめでたし、めでたし🎊」

「羊急便のドライバーさんがんばってる😢」

とかじゃなくて、誰かが心が壊れてしまうほど頑張らなくてもいいような皺寄せがいかない仕組みを構築しないともうだめなんだ、と思った。

実際、日本のロジスティクスは結構限界にきている。

以前この業界と関わりがあったが、配送ドライバーは休憩もまともに取れず、それでも会社は見て見ぬふりだ。
(ドライブレコーダーがついているので、昼休憩を取ってないことはログから把握しているはず)

だからといって、「DAILY FAST」ことデリファスのおそらくモデルとなったAmazonを悪者にすればいいのかというと、話はおそらくそんな単純ではないと思う。

デリファスは分かりやすい悪として描かれているが
それを作り出しているのは私たちの心の欲求や欲望だ。

たしか舟渡エレナは「全部ほしい」といった
類の発言を劇中でしていたが
その「全部ほしい」がこの状況を生み出している。

そして「使っているうちに使われる」。

この言葉の意味することは、おそらく消費者である
私たちも近いうちにわかるだろう。
山崎佑は私の大事なひとの姿だったかもしれないし、筧まりかはわたしだったかもしれないのだ。

そう、これはまさにわたしたちに向けられた言葉だ。

What do you want?
(あなたが欲しいものはなんですか?)






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